バリュー株・グロース株とは?定義や違い、見分け方に代表的な銘柄まで徹底解説
株式投資で利益を得るには、「安く買って高く売る」ことが原則です。配当金や株主優待が目当ての場合はその限りではありませんが、売却益であるキャピタルゲインを得るには、利益を見込める優良株をいかに見つけるかが重要だと言えます。優良な銘柄としてよくあげられるのは、「バリュー株」や「グロース株」です。そこでこの記事では、バリュー株とグロース株について、それぞれの特徴や違いをご紹介していきます。
・目次
バリュー株とは
バリューとは「価値」という意味ですが、株式市場におけるバリュー株は「割安株」とも呼ばれます。どう割安なのか、どのような特徴があるのかご紹介していきます。
バリュー株の定義
バリュー株とは、企業の業績や利益、資産などから考えられる価値よりも株価が低く設定されている銘柄のことです。株価はさまざまな要因で変化するため、たとえ企業の業績が安定していても、株価が低く設定されることもあります。
バリュー株を見つけて投資する手法が、バリュー株投資です。割安で購入した株が値上がりしてキャピタルゲイン(売却益)を得られたり、インカムゲイン(配当益)を期待できたりします。
特徴
バリュー株は、成長期を過ぎてすでに安定した業績を保っている企業が多いです。事業年数が長く売上も安定しているものの、知名度や話題性の低さ、業界全体の成熟など、さまざまな理由から株価が割安に設定されています。
このようなバリュー株は、本来の企業価値が市場で適正に評価されれば値上がりすると予想できます。ただし、それまでには多少の時間がかかると考えられるため、長期保有がおすすめです。バリュー株は、配当や株主優待がある企業も少なくないため、インカムゲインが欲しい人にも向いています。
ただしネガティブな情報があったり、あまりにも成長が遅かったりすると、株価の上昇を見込めないため注意しましょう。
代表的な銘柄
バリュー株に多いのは、銀行、保険、製造業、商社、小売業などです。比較的安定したビジネスを行っており、堅実に利益を上げている企業が多い傾向にあります。
<代表的なバリュー株の企業>
● 三菱UFJフィナンシャル・グループ
● みずほフィナンシャルグループ
● 日本電信電話(NTT)
● ジョンソン&ジョンソン
● 三菱自動車工業
● 三菱商事 など
グロース株とは
対して、グロース株は「成長株」とも呼ばれています。どのような特徴があるのか、代表的な銘柄は何か確認しておきましょう。
グロース株の定義
グロース株は「グロース=成長」という名の通り、今後の成長を期待されている銘柄のことです。グロース株に特化した投資を、一般的に「グロース株投資」と言います。
国内最大の証券取引所である東京証券取引所(東証)では市場区分が変更され、「東証一部」「東証二部」「東証マザーズ」「JASDAQ」という区分がなくなりました。新しい市場区分は、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」です。
グロース株は、この「東証グロース市場」に区分される銘柄というわけではありません。プライム市場やスタンダード市場にもグロース株は存在し、グロース市場にもバリュー株があるので、勘違いしないようにしましょう。
特徴
グロース株の企業は、業績や利益の成長率が高く、経常利益も年々増加している企業です。新しい技術や市場を開拓して拡大している企業や、需要が高いサービスを提供している企業の株式も、グロース株と言われています。
急拡大している企業も多く、短期的な値上がりを期待できるという特徴があります。長期で保有すると、株価が10倍・100倍に上昇する企業も存在するため、そのような銘柄を見つけられれば大きな利益を期待できるかもしれません。
ただし業績が悪化することもあり、値動きは大きい傾向にあります。利益を期待できる代わりにリスクも高めなので、常に情報はチェックしておきましょう。
代表的な銘柄
グロース株に多い業種は、ITやAI関連、エネルギー関連です。新興企業、テック企業、需要の高い商品やサービスを取り扱う企業もグロース株に当てはまることが多いです。
<代表的なグロース株の企業>
● アップル
● マイクロソフト
● アマゾン・ドットコム
● ファーストリテイリング
● マネーフォワード
● メルカリ など
バリュー株とグロース株の違い
バリュー株とグロース株はどちらも優良株式であると言えますが、特徴に大きな違いがあります。メリットやデメリットも異なるので、しっかり理解しておきましょう。
|
バリュー株 |
グロース株 |
特徴 |
企業価値(業績)に対して、株価が割安。 |
今後の成長を期待できる。 |
メリット |
・株価が安定しており、値下がりしにくい。 |
・大きな値上がり益を期待しやすい。 |
デメリット |
・大きな値上がり益は期待できない。 |
・配当や株主優待はあまり期待できない。 |
リスク |
低め |
高め |
株価の動向 |
金利上昇局面に強い |
低金利局面に強い |
バリュー株とグロース株は、メリットやデメリットが大きく異なります。それぞれの詳細を確認すると、違いがよくわかるでしょう。
バリュー株のメリットとデメリット
バリュー株は、もともと業績が安定している企業の銘柄のため、株価の乱高下が少ないです。また成熟した事業基盤を持つことも多く、配当性向も高めの傾向があります。配当性向とは、得た利益のうちどれくらい株主に還元しているかを示す指標です。
株価が安定しており、配当金や株主優待にも期待が持てるため、長期で保有するのにとても向いているといえるでしょう。
一方で、急激な成長を見込めるわけではないので、短期で大きな利益を得ることは難しいです。また、株価が適切に評価されるようになるとは限りません。あまりにも成長が遅かったり、ネガティブな情報が発表されたりすると、株価は低下し続ける可能性もあります。
そのほか、株価が「割安」なのではなく、理由があって安くなっている場合も考えられます。たとえば実は業績が悪化していたり、財務体質に問題があったり、今後の成長が期待できなかったりなどです。
バリュー株を探すときは、何かネガティブな理由があって安くなっているだけの銘柄をつかまないよう、注意しましょう。
グロース株のメリットとデメリット
グロース株の大きなメリットは、やはり大きな値上がり益を期待できることでしょう。成長が著しい企業のため、短期的にも長期的にも利益を期待できます。特に早いうちにグロース株を保有しておけば、後々大きな利益につながるかもしれません。
しかしその一方で、グロース株は評価が高いため株価が割高になりがちです。またバリュー株と比べると値動きが大きく、ハイリスク・ハイリターンの傾向があります。大きな利益を期待できる一方、期待したほどの成長がみられないときは、割高だった株価が大きく値下がりするリスクがあることも覚えておきましょう。
また成長するための投資として設備投資や研究費などに資金を必要とするため、配当や株主優待などはあまり期待できません。
株価の動向の違い
バリュー株は、金利が上昇する局面において強いと言われています。なぜ金利上昇局面でバリュー株が優位なのかというと、理由はいくつかあります。
まず、バリュー株の企業は基盤が安定している企業が多く、「将来の成長」という不確定要素が少ないため、金利が上昇しても影響を受けにくいです。金利上昇時にも安定した利益を出すことで市場から評価を受けるため、株価の上昇を期待できます。
また金利上昇局面では、債券といった比較的リスクが低い資産が人気です。バリュー株もグロース株と比べるとリスクが低いため、金利上昇局面には優勢になる傾向があります。
反面、グロース株は金利上昇局面では株価が低下することも少なくありません。グロース株の企業は積極的に借り入れを行っていることも多く、金利上昇局面では借り入れコストが上昇し、経営状況に影響するためです。
また金利上昇局面では国債など安全資産の金利も上がるため、割高感のあるグロース株への投資魅力が減退します。リスク回避のため、株価が上がると予想されるバリュー株に資金を移動させる投資家も少なくありません。リスク管理の観点からも、金利上昇時はグロース株が敬遠されがちです。
一方で、低金利のときはグロース株が優位と言われています。景気が後退していたり低迷したりする局面でも、グロース株は独自の成長を続けて利益を上げるため、人気が高くなる傾向にあります。
バリュー株・グロース株を見分ける指標
バリュー株やグロース株を見分けるには、PERやPBRといった指標を利用するとよいでしょう。見分け方の基準を以下にまとめました。
指標 |
バリュー株 |
グロース株 |
|
PER |
株価収益率 |
15倍未満 |
15倍以上 |
PBR |
株価純資産倍率 |
1倍未満 |
1倍以上 |
PERやPBRを確認すると、バリュー株やグロース株を見分けるヒントになります。そのほか、バリュー株とグロース株それぞれの見分け方もご紹介していきます。
PER
PERは株価収益率のことで、1株あたりの純利益に対して、株価が何倍になるかを示しています。PERを確認すると、企業が出した利益に対して何倍の株価が付いているかがわかるため、株価が割安かどうか判断できます。簡単に言うと、得た利益に対して株価がどうなのか、ということです。
PER(倍)= 株価 ÷ 1株あたりの純利益(EPS)
PERの基本的な基準は15倍です。15倍未満であれば割安、15倍を超えていたら割高だと判断されます。PERが10~15倍はバリュー株、20倍以上(30~100倍)はグロース株の可能性があります。
グロース株の場合、PERはとても高くなることがあります。参考までに、日本取引所グループが発表している「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」から、PERの平均値をご紹介します。
東証の市場 |
特徴 |
PER |
プライム市場 |
基準が最も厳しい、東証の最上位の市場。 |
16.9 |
スタンダード市場 |
中堅企業が上場しており、市場規模は比較的小さめ。 |
13.2 |
グロース市場 |
新興成長企業が中心の市場。将来的な成長を期待されており、株価は高め。 |
40.3 |
※2025年5月のデータ
上記の数値は市場平均のため、個別の企業を評価するには、業種内での比較が重要です。基準である15倍はあくまでも目安で、業種によって平均値は異なります。バリュー株やグロース株を見極めるときは、競合他社やその会社の過去の数値と比べてみてください。
またグロース市場には、新しい技術やビジネスモデルを採用しているベンチャー企業が多く、業種としてはITやインターネット、バイオテクノロジー関連が多いです。グロース株の特徴と共通していることも多いですが、グロース市場=グロース株というわけではないので注意しましょう。
PBR
PBRは株価純資産倍率で、企業の純資産に対して、どれくらいの株価が付けられているかを見る指標です。PBRからも、株価が割安かどうかを判断できます。こちらは、資産面からみて株価がどうなのかを表しています。
PBR(倍)= 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)
PBRの基準は1倍です。1倍であれば、企業の資産と株価が同じ価値という意味になります。つまり1倍未満であれば割安なのでバリュー株、1倍以上であれば割高なのでグロース株の可能性があります。
日本取引所グループが発表しているPBRも参考までにご紹介しておきます。
この平均値もPERと同様、業種によって数値は異なります。PBRが1倍以上でも、業種や企業によっては割安と見なされるケースもあるため、ほかの指標と合わせて判断しましょう。
バリュー株は配当利回りや財務状況も確認を
バリュー株は配当金を出している企業が多いです。一般的に配当利回りが3~4%以上であれば高配当だと言われているので、バリュー株を探すときの目安にするとよいでしょう。連続して配当金を出しているのかも併せて確認してみてください。
また、バリュー株の企業は本当に経営が安定しているのかも確認しなければなりません。そのためには、財務状況や経営状況、業績を分析して株価の適正価格を評価する、ファンダメンタルズ分析が有効です。
ファンダメンタルズ分析をするには、まずは財務諸表や決算資料などから、売上高や利益率、自己資本比率、キャッシュフローなどを洗い出します。それらの指標から企業の業績を分析し、業界全体やマクロ経済的な要因も加味して、投資する価値があるかを判断します。
ただしファンダメンタルズ分析は知識がなければ少し難しい内容なので、まずは自己資本比率だけでも確認してみるとよいでしょう。
自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本 × 100
自己資本比率は高ければ高いほど、経営が安定していると言えます。業界によって平均値は異なりますが、バリュー株を見分ける場合は40~60%以上あるかを目安にしてみてください。
グロース株は成長率やROEをチェック
グロース株は今後の成長を期待されている企業の銘柄なので、特にROEや成長率を確認するとよいでしょう。
ROEは自己資本利益率のことで、企業の自己資本(投資家から集めたお金)に対してどれだけ利益を上げているかを判断する指標です。経営の効率性を分析できます。
ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
ROEが高いということは、資本を使って効率よく経営できている企業ということです。一般的にROEが10%前後、できれば15%以上であれば、収益や成長を期待できるグロース株の可能性があります。
そのほかグロース株を見分けるには、企業の売り上げや利益も確認しましょう。売上や利益の伸び率をみると、成長率の度合いがわかるのでグロース株かどうかの判断材料になります。
売上高の伸び率(%)=(当期の売上高-前期の売上高) ÷ 前期の売上高
一般的に売上高の伸び率が10~20%を超える企業は成長率が高い=グロース株の可能性があります。
またグロース株は、今後の成長を期待されている企業の銘柄です。そのため、たとえば「新商品の発売」や「新事業」「新しい技術の発表」など、成長を期待できそうなポジティブなニュースを発表した企業に注目してみるのもよいかもしれません。
どっちを選ぶべきか?
バリュー株とグロース株の違いについてご紹介してきましたが、どちらの銘柄を選ぶべきかと悩まれる人もいることでしょう。正解というものはありませんが、選ぶときの参考になる考え方をご紹介していきます。
市場動向を確認する
まずは市場動向を確認してみましょう。特にわかりやすいのは、金利が上昇傾向なのかそうでないのかということです。
金利上昇時であればバリュー株が優勢、低金利であればグロース株が優勢であることはすでにお伝えした通りです。一般的に金利が上がると株価は下がると言われていますが、バリュー株の場合は株価が下がらず、むしろ上がることも期待できます。
一方グロース株の場合、独自の技術やサービスで評価されている企業が多く、市場全体が不調でも、グロース株は上昇しているということも少なくありません。そのため、グロース株は相対的に景気が後退・低迷しているときに有利になる傾向があります。
このように金利や景気の動向によって、バリュー株とグロース株は異なる動きを見せます。近年でいえば、2021年以降はバリュー株優位と言われていますが、その前の2016~2020年頃まではグロース株が優位でした。
今後の動き方は定かではありませんが、金利や景気に左右されるため、市場動向を意識しながら銘柄を選ぶのがおすすめです。
また、日本株と米国株ではバリュー株・グロース株の動向は異なります。2025年現在、日本ではバリュー株が優位の傾向ですが、米国ではグロース株が優位とも言われています。米国株やそのほかの外国株を購入するときは、海外の動向もよく確認しましょう。
投資目的を考える
投資の目的によって購入する銘柄を考えるのも、一つの方法です。
<バリュー株が向いている人>
● インカムゲイン(配当益)が欲しい人
● 株式優待が欲しい人
● 長期で運用したい人
● できるだけリスクを負いたくない人
バリュー株はあまり大きな利益を狙えないものの、定期的なインカムゲインを得たい人には向いています。また株主優待を楽しみたい人にもおすすめです。
できるだけリスクを負わずに、安定的に投資運用したい人は、バリュー株を検討してみてはいかがでしょうか。個人投資家にとっては、バリュー株の方が投資しやすいかもしれません。
ただし、バリュー株で大きな利益を得るのは難しいでしょう。また、配当や株主優待がずっと続く保障はなく、株価が回復しない可能性もあります。比較的安定しているとはいえ、市場の動向は確認しておかなければなりません。
<グロース株が向いている人>
● 大きな利益を得たい人
● 短期でも利益を狙いたい人
グロース株が向いているのは、とにかく大きな利益を得たい人です。グロース株なら短期でも利益を狙えるので、積極的な運用を好む人にはよいでしょう。
グロース株のなかには、ときに価格が10倍以上にも跳ね上がる「テンバガー銘柄」が含まれることもあります。このような銘柄を見つけることができれば、大きな利益を得られるでしょう。
ただし、グロース株はバリュー株と比べるとハイリスク・ハイリターンになりがちです。利益だけに気を取られるのではなく、割高な株価が急落するリスクや、金利上昇時には不利になることなども考慮しなければなりません。
併用するのも効果的
バリュー株とグロース株は異なる特徴を持っているため、どちらも保有することでリスクヘッジになります。リスクヘッジの基本は分散投資で、分散投資の基本は特徴が異なる金融資産に投資することだからです。
金利が上昇しているときはバリュー株で支え、低金利や不景気の局面ではグロース株で利益を狙うというのもひとつの戦略かもしれません。
双方のメリットやデメリットをカバーできるので、併用することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
バリュー株は割安株とも呼ばれ、本来の企業価値より株価が割安だと考えられている銘柄です。将来的に価格が適正に評価されれば、値上がり益を得ることができます。また、バリュー株は配当や株主優待を実施している企業も多いため、インカムゲインを得ながら長期で安定的に運用したい人におすすめです。
グロース株は、今後の成長を期待されている銘柄で、成長株とも言います。こちらは短期でも長期でも大きな利益を期待できる可能性があります。配当や株主優待はあまり期待できませんが、積極的に投資運用したい人には向いているでしょう。
どちらの銘柄が良いということはありませんが、金利や景気の動向、投資の目的などを考慮して銘柄を選ぶことをおすすめします。リスクヘッジとして、双方の株を保有するのも検討してみてはいかがでしょう。