【2028年から変更】遺族年金はいつまで受け取れる?
変更点や受給額のシミュレーションを徹底解説
遺族の生活を支える重要な公的年金制度である「遺族年金制度」が、2025年に改正され2028年4月から施行されます。今回の改正では、遺族年金の受給期間や金額、条件等が大きく見直されることになり、「自分も対象なのでは?」と不安に思う人もいることでしょう。そこで本記事では、改正された遺族年金制度のポイントと、影響を受ける人、受給額のシミュレーションなどをわかりやすく解説していきます。
・目次
<2025年成立・2028年施行>遺族年金はいつまで受け取れる?【結論】
今回の改正ではさまざまな点が改正されましたが、大きく変更されたのは、「遺族厚生年金」です。そのほか、遺族年金を把握する上で重要なポイントを以下にまとめました。
- 遺族基礎年金は原則「子が18歳になる年度末まで」
- 60歳未満で死別した場合の遺族厚生年金は、「原則5年間の有期給付」
- 子の有無や障害、収入などで5年間を超えて継続給付の可能性あり
- 中高齢寡婦加算が段階的に廃止される
遺族基礎年金は基本的に現行通りで、「子が18歳になる年度末まで」支給されます。しかし遺族厚生年金は、60歳未満で死別した場合は「原則5年間の有期給付」に変更されました。※60歳以上で死別した場合は、無期給付されます(諸条件あり)。
ただし、「18歳までの子どもがいる場合」や「所得や障害の状態により配慮が必要な場合」は、5年間を過ぎても継続給付されます。
また、遺族年金とかかわりが深い「中高齢寡婦加算」の制度も、段階的に廃止されることになり、受給額に影響を与えそうです。
今回の改正は段階的に施行されていくため、大きな影響を受けるのは「2028年度に40歳未満の妻」です。2028年度に40歳以上の妻であれば、現行制度が適用されます。
※2028年度に55歳未満の夫も、影響を受ける可能性があります。
<今回の改正で遺族年金の受給期間に影響がない人>
- 2028年度で40歳以上の妻
- 改正前から遺族厚生年金を受け取っている人
- 60歳以上で死別した人
年齢だけでなく18歳までの子どもがいるかどうかなどで、いつまで遺族厚生年金を受け取れるかが異なります。今回の改正でマイナスの影響を受ける可能性が高いのは、子どもがいない20~30代の妻です。ただし、40歳以上の妻であっても受給額が減る可能性があります。
これ以外にもさまざまな改正があり、状況によって受給期間や受給額は大きく異なるため、本記事の内容をよく確認してみてください。
現行制度と改正後の制度の違い
今回大きく改正された「遺族厚生年金」における、現行制度と改正後の大きな違いは以下の通りです。
現行制度では、男女で受給期間に違いがあります。女性であれば、30歳未満で死別した場合は5年間の有期給付ですが、30歳以上であれば無期給付です。しかし男性の場合、55歳以上で死別した場合のみ60歳以降に給付されます。
※いずれも子どもがいない場合。
改正された制度では男女の差はなく、60歳未満で死別した場合は5年間の有期給付、60歳以上の場合は無期給付です。ただし60歳未満の場合でも、18歳までの子どもがいる場合や収入等の配慮が必要な場合は、給付が継続されます。
30歳未満のみ対象だった「5年間の有期給付」が、60歳未満に引き上げられたことで不安に思う人もいることでしょう。しかし有期給付加算や死亡分割により、「年金額が増加する」という良い変更点もあります。
また「遺族基礎年金」の受給期間は現行のまま変更されていません。しかも、より遺された子どもが受給しやすい内容に変更されています。
そのほかにも細かな変更点がたくさんあるので、のちほど詳しく解説していきます。
改正の理由は男女差を解消するため
今回の改正の大きな理由は、遺族厚生年金における男女差を解消するためです。ご紹介した通り、現行制度は男女の差が大きい制度となっています。女性の場合は30歳未満であれば5年の有期給付、30歳以上であれば無期給付を受けられたのに対し、男性の場合は55歳以上の場合のみ、60歳から無期給付を受けられる内容です。
女性の就業率が向上していることを受け、時代に合わせて男女差を解消すべく今回の改正が進められました。改正後は男女ともに同じ内容になっており、また遺族厚生年金を受け取る条件だった「年収850万円未満」も撤廃されたことで、年収に関わらず公平に遺族厚生年金を受け取れるようになります。
女性の場合はマイナスの影響を受ける可能性がありますが、男女差の是正につながる改正だと言えるでしょう。男女ともに今回の改正内容を正しく理解し、備えておくことが大切です。
そもそも遺族年金とは?確認しておきたい基礎知識
そもそも遺族年金とはどのような制度か、よくわからないという人もいるのではないでしょうか。万が一のことがあったときに、何をどれくらい受け取れるのか理解するためにも、基本的な制度の仕組みを理解しておきましょう。
「遺族年金」とは、亡くなった被保険者が生前に加入していた年金制度に基づき、一定の条件を満たす遺族に対して支給される、公的な年金制度です。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
基本的には年金制度と同じです。亡くなった人が個人事業主や自営業だった場合は対象となる遺族に「遺族基礎年金」が、会社員や公務員の場合は「遺族基礎年金」に加えて「遺族厚生年金」が一定の遺族に支給されます。
遺族基礎年金と対象者
遺族基礎年金とは、「国民年金」に加入していた人が亡くなったときに、その人に生計を維持されていた遺族に支払われる年金です。「保険料を一定期間納めていた」といった諸条件がありますが、基本的に自営業や会社員など、国民年金に加入していた被保険者の遺族に支払われます。
<対象となる遺族と優先順位>
- 18歳までの子どもがいる配偶者(ただし、年収850万円未満)
- 18歳までの子ども本人
遺族基礎年金の対象となる遺族は、被保険者に生計を維持されていた「子のいる配偶者」と「子ども本人」です。この場合の「子ども」とは、18歳になった年度の3月31日までにある人や、20歳未満で障害等級1級もしくは2級にある人を指します。
優先順位は「配偶者→子」で、配偶者が遺族基礎年金を受け取っている場合、子どもは受け取れません。子どもがいない配偶者は対象ではないので注意しましょう。
遺族厚生年金とは
遺族厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金の加入者が亡くなったときに遺族に支給される年金です。
※亡くなった方が老齢厚生年金の受給資格を満たしている等の受給要件があります。
<対象となる遺族と優先順位>
- 子のある配偶者
- 子(原則として18歳まで)
- 子のない配偶者
- 父母
- 孫
- 祖父母
子のある配偶者や子の優先順位が高く、該当者がいない場合に上記の順番で受給資格があります。ただし、子がいない配偶者は年齢により受給条件が異なります。父母や祖父母も同様です(現行では55歳以上で死別した場合に限り60歳以上で支給、改正後は60歳以上で無期給付)。
また遺族厚生年金には「妻」のみ受給できる「中高齢寡婦加算」という制度があります。
<中高齢寡婦加算>
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金を受給する妻に加算される制度です。対象となる妻は以下の通りです。
- 夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子どもがいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受給しており、子が18歳になったため遺族基礎年金を受給できなくなった妻
つまり、「子どもがいない」もしくは「子どもが18歳になって遺族基礎年金を受給できなくなった」妻の生活を支えるための加算制度です。これは夫を亡くした妻のみが対象で、妻を亡くした夫は対象ではありません。この中高齢寡婦加算制度も今回の改正により大きく変更されるので、のちほど詳しく解説します。
遺族年金制度の改正ポイントを深掘り解説
続いて、今回の改正で変更になったポイントを詳しく解説していきます。まずは図で改正ポイントを確認しましょう。
<遺族年金の改正ポイント>
※子どもがいる妻の場合を想定した図です。
遺族厚生年金に関する改正が多いですが、そのほか中高齢寡婦加算や遺族基礎年金に関する改正もあります。それぞれの内容を詳しく確認していきましょう。
遺族厚生年金が5年間の有期給付へ変更
遺族厚生年金の受給期間が変更になったのは、すでに詳しくご紹介している通りです。「5年間の有期給付」と聞くと、不安に思う人も多いでしょう。しかしいきなり適用されるわけではありません。2028年度に40歳以上になる妻は現行制度が適用されるため、60歳未満で死別しても無期給付のままです。
今回の改正で対象となる30代の女性は、推計で年間約250人と言われています(20代の場合は既に5年間の有期給付のため)。一方、男性の場合は推計で年間約1万6千人以上が、新たに5年間の有期給付を受けられるようになるようです。
また18歳までの子どもがいる場合は、妻(夫)の年齢に関わらず遺族厚生年金が支給され続けます。有期給付は「子どもが18歳になった年度末」から開始し、それから5年間です。遺族厚生年金の給付期間は年齢だけで決まるわけではないので、ご自身の場合はどうなるのか把握しておきましょう。
有期給付期間の支給額が増額
5年間の有期給付期間に受け取れる遺族厚生年金の額が、今回の改正により1.3倍に増額されます。
(現行)配偶者の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3
(改正後) 上記の約1.3倍
5年間の有期給付期間後も収入等の理由によって継続給付される場合、増額された額が支給されます。
死亡時分割の創設
死亡時分割は新たに設けられた制度で、2028年4月から施行されます。これは、配偶者(夫または妻)が死亡した場合、亡くなった配偶者の婚姻期間中の厚生年金記録を一定の方法で分割し、遺された配偶者が65歳以降に受け取る老齢厚生年金に反映する仕組みです。
死亡時分割の加算により、遺された人の老後の年金額が増額されます。死亡時分割は、離婚時における「離婚分割」と似たようなものと考えるとわかりやすいかもしれません。
遺族厚生年金における年収850万円の収入基準の撤廃
遺族年金を配偶者が受け取る場合、年収850万円未満という収入要件がありました、今回の改正によって「遺族厚生年金」における収入要件は撤廃されました。
遺族厚生年金を受け取る妻や夫の年収が850万円以上であれば受け取れなかったのが、受け取れるようになったということです。
ただしこれは「遺族厚生年金」の場合で、遺族基礎年金については引き続き「配偶者の年収850万円」という条件は継続されます。
※ちなみに配偶者の年収が850万円以上ある場合でも、子ども自身が遺族基礎年金を受け取れるように改正されています。
中高齢寡婦加算の段階的な廃止
中高齢寡婦加算は遺された妻にのみ支給されるため、男女差の解消を目的として段階的に廃止されることになりました。
具体的には2028年4月より、25年にわたって毎年26分の1ずつ削減されていきます。25年後の2053年には完全に廃止されます。ただし一度決定された支給額は変更されることなく、65歳まで受け取れます。
加算が開始する年 | 中高齢寡婦加算の支給額(年額)の概算 ※2026年度の満額である635,500円を基に計算 |
2027年(施行前) | 635,500円(満額) |
2028年度(施行年) | 635,500円-(635,500×1/26)=約61.1万円 ※ |
2038年度(10年後) | 635,500円-(635,500×11/26)=約36.6万円 ※ |
2048年度(20年後) | 635,500円-(635,500×21/26)=約12.2万円 ※ |
2053年度(25年後) | 635,500円-(635,500×26/26)=0 (廃止) |
参考:遺族年金制度の見直しについて
※2026年8月時点における概算値
施行前であれば年額635,500円受け取れますが、2028年度だと約61.1万円、施行から10年後の2038年度だと約36.6万円です。
ただしこの中高齢寡婦加算は遺族厚生年金の有期給付5年間とは別の制度なので、有期給付が終わった後も65歳まで受け取れます。
継続給付(配慮措置)による実質的な保障延長
5年間の有期給付が終わったあとも、状況によっては給付が継続される可能性があります。継続給付の可能性があるのは以下の人です。
- 一定の障害状態にある人
- 収入が一定以下の人
気になるのは「収入が一定以下」の場合ではないでしょうか。目安となる収入額をご紹介しておきます。
<継続給付を受けられる年収の目安(単身の場合)>
- 月額約10万円以下(年収122万円以下) → 全額支給
- 月額10万円~20万円程度 → 収入に応じて年金額が調整される
- 月額20万円~30万円程度 → 全額支給停止になる目安
収入が増えたら即時に給付がストップするわけではなく、受給できる金額が徐々に少なくなるよう設定されています。ただし、支給停止の判断は状況に応じて異なるため、上記の収入額はあくまでも目安として参考にしてください。継続給付の決定は5年間の有期給付が終わったときに行われる予定です。
遺族基礎年金における子の支給条件が拡充
遺族基礎年金は「子どもがいる配偶者」もしくは「子ども」に受給資格があり、優先順位は「配偶者→子」の順番です。配偶者が遺族基礎年金を受け取っている場合、子どもは受け取れません。ただし今回の改正で、母親や父親が受給資格を失った場合でも、子どもが直接遺族基礎年金を受け取れるように変更されました。
たとえば、配偶者が850万円以上の年収があったり再婚したりした場合、遺族基礎年金を受け取れませんでした。しかし今回の改正で、配偶者が受け取れなくても子ども自身が遺族基礎年金を受け取ることが可能になります。
この改正により、子ども自身が遺族基礎年金を受け取れるケースが拡充されることになるでしょう。
遺族基礎年金の子の加算額が拡充
遺族基礎年金の受給額は子どもの数によって異なります。今回の改正で、この子ども一人あたりの加算額が増額されることになりました。
- (現行)令和8年4月
1人目・2人目 → 各243,800円/年
3人目以降 → 各81,300円/年
- (改正後)
1人につき、281,700円/年
1人目や2人目の加算額も増額されますが、特に3人目以降も同じ金額が加算されるため、より手厚い内容に変更されます。
このように、今回の改正は単に「受給期間が5年間になった」というデメリットだけではありません。特に男性にとっては今よりも手厚い保証内容となっており、状況によってはさほど影響がないという人もいるでしょう。
改正で影響を受ける人は?もらえる遺族年金や受給期間をケースごとに解説
今回の改正では、不利になる人が増える印象を持っているかもしれませんが、有利になる人や影響を受けない人もいます。具体的にはどのような人が影響を受けるのか、またもらえる遺族年金や受給期間はどうなるのか、ケースごとにわかりやすく提示していきます。
影響がない人・有利になる人・不利になる人は?
まずは今回の改正で、「影響がない人」「有利になる人」「不利になる人」に分けてご紹介していきます。
<影響がない人>
- 2028年に40歳以上の妻
- 60歳以上の人
- すでに遺族年金を受け取っている人
- 18歳までの子どもがいる人※
※18歳以降は影響あり。
40歳以上の妻の場合、中高齢寡婦加算が逓減されていくため受給額に影響が出る可能性がありますが、少なくとも受給期間に大きな影響はありません。また18歳までの子どもがいる場合も、原則として現行制度のままです。
<有利になる人>
- 2028年に55歳未満の男性
- 高収入の配偶者
男性の場合、55歳未満は遺族厚生年金を一切受け取れなかったのが、今回の改正により5年間の有期給付を受け取れるようになります。
また、850万円以上の年収がある配偶者も遺族厚生年金の受給資格が認められるようになるため、高収入の人も有利になると言えるでしょう。
<不利になる人>
- 2028年時点で40歳未満の女性
今回の改正で不利益を被る可能性が高いのは、2028年時点で40歳未満(特に30代)の女性です。20代の場合はすでに5年間の有期給付のため、実質的な影響を受けるのは30代の女性ということになります。ただし5年間の有期給付の対象になった場合、給付額は増額され、死亡時分割も受け取れるようになります。マイナスの影響だけではないことを覚えておきましょう。
2028年時点で40歳以上の妻が受け取れる遺族年金
基本的に遺族年金は現行制度のままです。60歳未満で夫と死別しても、遺族厚生年金は無期給付されます。ただし、中高齢寡婦加算は影響を受ける可能性があります。
<子どもがいる場合>
遺族基礎年金 | 子どもが18歳になった年度末(3/31)まで受給可能。子どもの加算額が増額される。 |
遺族厚生年金 | 無期給付。 |
中高齢寡婦加算 | 子どもが18歳になった年度末以降、40~65歳まで受給可能。ただし2028年4月以降、段階的に減額された受給額となる。 |
<子どもがいない場合>
遺族基礎年金 | 受給不可。 |
遺族厚生年金 | 無期給付。 |
中高齢寡婦加算 | 40~65歳まで受給可能。ただし2028年4月以降、段階的に減額された受給額となる。 |
2028年時点で40歳未満の妻が受け取れる遺族年金
2028年時点で40歳未満の妻の場合、受給できる遺族年金が状況によって大きく変化します。
<子どもがいる場合>
遺族基礎年金 | 子どもが18歳になった年度末(3/31)まで受給可能。子どもの加算額が増額される。 |
遺族厚生年金 | 子どもが18歳になった年度末から、5年間の有期給付(給付額は従来の約1.3倍に増額)。 |
中高齢寡婦加算 | 子どもが18歳になった年度末以降、40~65歳まで受給可能。ただし2028年4月以降、段階的に減額された受給額となる。 |
継続給付 | 障害がある場合や一定の収入より低い場合は継続給付の可能性あり。 |
死亡時分割 | 原則、婚姻期間中の厚生年金記録の1/2 |
<子どもがいない場合>
遺族基礎年金 | 受給不可。 |
遺族厚生年金 | 5年間の有期給付(給付額は従来の1.3倍に増額)。 |
中高齢寡婦加算 | 40~65歳まで受給可能。ただし2028年4月以降、段階的に減額された受給額となる。 |
継続給付 | 障害がある場合や一定の収入より低い場合は継続給付の可能性あり。 |
死亡時分割 | 原則、婚姻期間中の厚生年金記録の1/2 |
改正の影響が大きいのは、子どもが18歳の年度末を迎えて遺族基礎年金が終了した直後の専業主婦(40歳後半~50代)です。これまでは遺族基礎年金がなくなっても中高齢寡婦加算があったため、大きく収入が減ることはありませんでした。
しかし改正後の遺族厚生年金は原則として5年間の有期給付となり、中高齢寡婦加算の支給額も逓減されていくため、収入が大きく下がる「年金の崖」に直面する恐れがあります。継続給付の可能性もありますが、万が一に対する備えを考えておく必要があるでしょう。
結局いくらもらえる?遺族年金の受給額シミュレーション
万が一の事態に備えるためには、遺族年金がどれくらいもらえるのか目安を知っておく必要があるでしょう。年金額は収入や状況によって異なるため一概には言えませんが、目安をご紹介していきます。
2028年に40歳以上の妻が受け取れる遺族年金額(現行制度の場合)
まずは現行制度が維持される、2028年に40歳以上の妻が受け取れる遺族年金額をシミュレーションしてみましょう。
<夫が自営業の場合>
| 子どもがいる場合 | 子どもがいない場合 |
遺族基礎年金 | 847,300円+ 子の加算額(243,800円/人) =1,091,100円/年 ※2人いる場合→1,334,900円 ※2028年以降は子の加算額が年額281,700円に増額 | なし |
遺族厚生年金 | なし | なし |
中高齢寡婦加算 | ・2028年3月までに死別した場合 635,500円/年 ・2028年4月以降に死別した場合 1年ごとに約24,442円ずつ削減されていく 2028年4月の場合→約61.1万円/年 2038年の場合→約36.6万円/年 | |
※令和8年4月の額を基に算出しているため、すべて概算値です。
<夫が会社員の場合>
| 子どもがいる場合 | 子どもがいない場合 |
遺族基礎年金 | 847,300円+ 子の加算額(243,800円/人) =1,091,100円/年 ※2人の場合→1,334,900円/年 ※2028年以降は子の加算額が年額281,700円に増額 | なし |
遺族厚生年金 | ・平均標準報酬額20万 →約24.7円/年 ・平均標準報酬額30万 →約37万/年 ・平均標準報酬額40万 →約49.3万円/年 ・平均標準報酬額50万 →約61.7万円/年
※すべて加入期間25年(300月)として算出した概算。 | |
中高齢寡婦加算 | ・2028年3月までに死別した場合 635,500円/年 ・2028年4月以降に死別 1年ごとに約24,442円ずつ削減されていく 2028年4月の場合→約61.1万円/年 2038年の場合→約36.6万円/年 | |
【具体例】会社員の夫を亡くした妻(40歳以上)で、子どもが2人いる場合
※夫の平均標準報酬額30万円、25年加入と仮定
・子どもが2人とも18歳以下のとき
(遺族基礎年金)1,334,900円+(遺族厚生年金)約370,000円
=170万4,900円/年(約14.2万円/月)
※補足 2028年4月以降は、子の加算額が増える。
(遺族基礎年金)1,410,700円+(遺族厚生年金)約370,000円
=約178万/年(約14.8万円/月)
・子どもが1人だけ18歳以下のとき
(遺族基礎年金)1,091,100円+(遺族厚生年金)約370,000円
=146万1,100円/年(約12.1万円/月)
※補足 2028年4月以降は、子の加算額が増える。
(遺族基礎年金)1,129,000円+(遺族厚生年金)約370,000円
=149.9万円/年(約12.5万円/月)
・子どもが2人とも18歳以上になり、65歳までの間
※18歳以上になったのが2038年と仮定
(遺族厚生年金)約370,000円+(中高齢寡婦加算)約36.6万円
=約736,000円/年(約6.1万円/月)
・65歳以上 ※専業主婦だったと仮定
(妻自身の老齢基礎年金)約90万円+遺族厚生年金(約37万円)
=約127万円/年(約10.5万円/月)
遺族年金の現行制度は維持されても、「中高齢寡婦加算」の逓減は2028年から始まるため、少なからず影響を受けます。特に子がいない場合や子どもが18歳以上になってから受け取れる金額は十分とは言えないので、何かしらの対策を考えておくことをおすすめします。
2028年に40歳未満の妻や60歳未満の夫が受け取れる遺族年金額(新制度の場合)
続いて、新制度になった場合のシミュレーションをしてみましょう。対象になるのは、2028年時点で40歳未満の妻や60歳未満の夫です。
夫(妻)が自営業の場合、遺族厚生年金は支給されず遺族基礎年金のみのため、現行制度のシミュレーションと同じです。そのため、夫(妻)が会社員だった場合のみご紹介していきます。
<夫(妻)が会社員の場合>
| 子どもがいる場合 | 子どもがいない場合 |
遺族基礎年金 | 847,300円+ 子の加算額(243,800円/人) =1,091,100円/年 ※2人の場合→1,334,900円/年 ※2028年以降は子の加算額が年額281,700円に増額 | なし |
遺族厚生年金 | 子が18歳を迎えた3/31以降、5年間の有期給付。 | 5年間の有期給付。 |
・平均標準報酬額20万 →約24.7万円×1.3倍=約32.1万円/年 ・平均標準報酬額30万 →約37万×1.3倍=約48.1万円/年 ・平均標準報酬額40万 →約49.3万円×1.3倍=約64万円/年 ・平均標準報酬額50万 →約61.7万円×1.3倍=約80.2万円/年
※すべて加入期間25年(300月)として算出した概算。 | ||
中高齢寡婦加算 | ・2028年3月までに死別した場合 635,500円/年 ・2028年4月以降に死別 1年ごとに約24,442円ずつ削減されていく。 2028年4月の場合→約61.1万円/年 2038年の場合→約36.6万円/年 | |
死亡時分割 | 婚姻期間中の厚生年金の報酬比例部分を1/2ずつ分割(予定)。 ※婚姻期間10年と仮定した場合。
平均標準報酬額20万円 →約6.5万円/年 平均標準報酬額30万円 →約9.8万円/年 平均標準報酬額40万円 →13.2万円/年 平均標準報酬額50万円 →16.4万円/年 ※すべて概算値。
| |
【具体例】会社員の夫を亡くした妻(35歳)で、子どもが2人いる場合
※夫の平均標準報酬額30万円、25年加入と仮定。婚姻期間10年の場合。
・子どもが2人とも18歳以下のとき
2028年3月まで=170万4,900円/年(約14.2万円/月)
2028年4月から=約178万/年(約14.8万円/月)
・子どもが1人だけ18歳以下のとき
2028年3月まで=146万1,100円/年(約12.1万円/月)
2028年4月から=149.9万円/年(約12.5万円/月)
※子どもがいる期間は、現行制度と同じ金額。
※2028年4月以降は子の加算額が増える。金額は上記のシミュレーションを参考。
・子どもが2人とも18歳以上になり、5年間の有期給付の間
※18歳以上になったのが2038年と仮定
(遺族厚生年金)約48.1万円+(中高齢寡婦加算)約36.6万円
=約84.7万円/年(約7万円/月)
・5年間の有期給付が終了してから65歳までの間
継続給付あり→ 上記と同様で、約84.7万円/年(約7万円/月)
継続給付なし→ 中高齢寡婦加算のみ → 約36.6万円/年(約3万円/月)
・65歳以上 ※専業主婦だったと仮定
(妻自身の老齢基礎年金)約90万円+(死亡時分割)約9.8万円
=約99.8万円/年(約8.3万円/月)
ご紹介したシミュレーションはあくまでも一例で、すべて概算値です。遺族年金や中高齢寡婦加算、死亡時加算は収入や死別した年、婚姻期間などによって大きく異なります。今回の改正によって遺族年金の計算はより複雑になったと言えるでしょう。
しかし総じて言えるのは、遺族厚生年金の5年間の有期給付が終わると遺族年金収入は大きく落ち込みます。遺された妻や夫の収入が月額約10万円以下であれば継続給付の可能性はありますが、確実に給付を受けられるかはわかりません。万が一の事態に備えて、できるだけ備えをしておくことをおすすめします。
遺族年金だけでは不安な場合の対策法を紹介
遺族年金の収入だけでは不安がある人も少なくないでしょう。たとえ現行制度であっても、中高齢寡婦加算が減額されることで収入は少なくなる見込みです。万が一の事態に備えるには、遺族年金以外の対策を考えておくとよいでしょう。
保険に加入してリスクに備える
保険はまさに万が一の事態に備えるためのものです。遺族年金に加えていくらあれば不安が少なくなるか、不足分を補える保険内容にしましょう。たとえば以下のような保険を利用できます。
終身保険 | 一生涯の死亡保障がある。亡くなったときにまとまった額が手元に残る。解約返戻金を受け取ることも可能。 |
定期保険
| 一定期間の死亡に備えられる掛け捨て型の保険。解約返戻金がない分、掛金が割安という特徴がある。 |
収入保障保険 | 死亡保証が一定期間続く保証。死亡時から保険期間満了時まで毎月一定のお金を受け取ることが可能。遺族年金で不足する分を毎月補填できる。 |
個人年金保険
| 基本的に老後の年金を準備するための保険だが、年金受け取り前に被保険者が亡くなった場合、払い込んだ保険料に相当する額の死亡給付金を受け取れる。 |
保険について詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。
【保険の種類と特徴を徹底解説】目的別の選び方や注意点も紹介
新NISAなどで早期の資産形成に努める
新NISAやiDeCoなど国が用意した制度を利用して、資産形成をしておくのもおすすめです。株式や投資信託などの投資は必ずしも利益を得られるわけではありませんが、リスクを抑えて長期的に運用することで、貯蓄よりも資産を増やせる可能性があります。
資産運用に関しては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
資産運用とは?投資・NISA・保険・不動産など基本知識を初心者にもわかりやすく解説
自分で経済力をつけておく
今回、遺族年金が改正された理由の一つに、女性の就業率の向上があります。厚生労働省の調査によると、40~59歳の女性の就業率は2040年には80%台後半と推定されており、男性の就業率と遜色がないと言えます。また特に40歳未満における男女間での賃金格差も縮小傾向が見られます。
つまり今回の改正は、「妻が夫に養われている状態」から、「妻も経済力を備えている状態」に移行したことを前提に行われています。完全に移行するための経過措置はありますが、男女問わず自分で経済力をつけるという意識をしておく方がよいかもしれません。
子育てや介護など、なかなか思うように経済力をつけることが難しい人も少なくないでしょうが、保険や投資なども利用して、できるだけ備えをしておくことをおすすめします。
遺族年金に関してよくあるQ&A
最後に、遺族年金に関するよくある質問をご紹介します。
遺族年金と死亡保険金は両方もらえますか?
遺族年金は公的な年金制度に基づく給付で、死亡保険金は民間の生命保険から支払われるものなので、両方もらうことが可能です。
この2つを併用することで、遺族の生活保障をより充実させることができます。
遺族年金受給中に配偶者が死亡した時はどうなりますか?
遺族年金は「亡くなった被保険者によって生計を維持されていた遺族」に対して支給される公的年金です。そのため、遺族自身が死亡した場合、その人に対する遺族年金の支給は停止され、相続として次の人に受け継がれることはありません。
ただし、配偶者の死亡時に18歳未満の子(もしくは障害等級1・2級の20歳未満の子)がいる場合は、子に受給権が発生する場合があります。
遺族年金に税金はかかりますか?
基本的に、遺族年金には税金が発生しません。遺族年金は、遺された家族の生活をサポートするためのものなので、非課税とされています。収入が遺族年金だけであれば、確定申告をする必要もありません。
遺族年金は再婚したらどうなりますか?
遺族年金は再婚するともらえなくなります。事実婚といった内縁関係であったとしても、受給権を失うので注意しましょう。再婚をした場合は、年金事務所に「遺族年金失権届」を提出しなければなりません。手続きを忘れた場合、返還を求められることもあります。
ただし今回の改正で、妻(夫)が再婚しても、妻(夫)に代わって子ども(18歳未満)が遺族基礎年金の受取人になることが可能になりました。
遺族年金は働いていてももらえますか?
遺族年金は働いていても受給できます。ただし、遺族基礎年金に関しては「年収850万円未満」でなければ受給権がありません。遺族厚生年金にも「年収850万円未満」の条件がありましたが、今回の改正で撤廃されました。
収入が多いことが理由で遺族年金が減額されることはありません。ただし、今回の改正で「継続給付」の対象となった場合、収入が多いと継続給付の対象にはならないので注意しましょう。
遺族厚生年金と老齢厚生年金は両方もらえますか?
年金は「1人1年金」が原則なので、両方受け取ることはできません。平成19年3月まではどちらかを選択することができましたが、平成19年4月以降は基本的に自身が納めてきた「老齢厚生年金」が優先されます。ただし老齢厚生年金より遺族厚生年金の受給額が多い場合、差額分は上乗せして支払われます。
※支給事由が同じ場合(「遺族基礎年金」&「遺族厚生年金」、「老齢基礎年金」&「老齢厚生年金」、「障害基礎年金」&「障害厚生年金」)は1つの年金と見なされるため、あわせて受け取れます。
引用:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
ただし特例として、支給事由が異なる「老齢基礎年金」と「遺族厚生年金」は両方受け取ることが可能です。遺族年金を受け取る配偶者が専業主婦だった場合、老齢厚生年金はないので、そのまま遺族厚生年金を受け取れます。
まとめ
遺族年金制度が改正され、2028年4月以降は60歳未満であれば受給期間が原則5年間となります。また中高齢寡婦加算も段階的に廃止されることになったため、女性は受給額が減額されることが予想されます。
子の加算額がアップしたり死亡時分割が創設されたりなどプラスの改正もあり、また男性にとってはより平等な内容に改正されましたが、特に現在30代の女性にとっては不利になる可能性があるため、備えが必要です。
保険や資産形成、経済力の強化など、万が一の事態に備えて、準備を早めに進めておくことが安心につながります。万が一の際の受給額を大まかに把握し、不足額をどのように補完するか、これを機に夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。
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展示会開催について
伊藤久実
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。
大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。
