賃貸と持ち家はどっちがお得?
メリット・デメリットやシミュレーションを徹底比較

住まいを選ぶ際「賃貸と持ち家のどっちを選ぶべきか」と迷う人は多いでしょう。

賃貸と持ち家では1,300万円以上の差が生じる場合があるとも言われていますが、コストだけではなく、それぞれの特徴やリスクをきちんと理解し、自分のライフスタイルに合った住まいを選ぶことが大切です。

この記事では、賃貸と持ち家それぞれのメリットやデメリット、生涯コスト比較のシミュレーションを徹底解説しますので、ぜひ参考にしてください。

・目次


賃貸と持ち家で1,300万円の差が出るって本当?

賃貸とは、オーナーに家賃を支払って借りている住宅のことをいいます。また、持ち家とは自分で所有している家のことをいいます。

「賃貸と持ち家の生涯コストを比較すると、賃貸の方が約1,300万円高くなる」と言われることがあります。

これは、「長期に渡って家賃を支払う場合、持ち家よりも賃貸の方が高くなる傾向がある」ということを表しています。

総務省統計局の「令和5年 住宅・土地統計調査」によると、2023年の持ち家比率は約60.9%、賃貸比率は約39.1%となっており、実際に持ち家を選ぶ人が多くなっています。

ただし、このシミュレーションは住む期間や家賃、金利などの条件などで変わるため、必ずしも家賃のコストが高くなるとは限りません。

持ち家と賃貸のどちらがお得かということは、様々な条件によって変わりますので、自分に合わせた条件でシミュレーションし、検討することが大切です。

持ち家と賃貸のシミュレーションについては、後述しますので参考にしてください。


賃貸と持ち家のメリット・デメリットを徹底比較


賃貸と持ち家にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、しっかりと理解した上で自分に合った住まいを選ぶことが大切です。

ここでは、賃貸と持ち家のそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。

賃貸の5つのメリット

賃貸のメリットは、大きく分けて5つあります。

1.初期費用が安い

賃貸では、持ち家に比べて初期費用を大幅に抑えられることがメリットです。

賃貸の一般的な初期費用は以下のようになっています。

項目

費用相場

敷金礼金

0~2か月分ほど

前家賃

1~3か月分ほど

仲介手数料

0.5~1か月分ほど

火災保険料

1~2万円ほど


一方、持ち家の場合は頭金(物件価格の1~2割ほど)や登記費用、住宅ローン手数料などが必要で、初期費用は数百万円にのぼります。

賃貸は初期費用が低くまとまった費用がなくても住み始められるため、貯金が少ない人や若い人に向いています。

また、近年は敷金礼金ゼロの物件も増えているため、初期費用をさらに軽減できるケースも多くなっています。

2.住み替えが簡単である

賃貸の大きなメリットとして、住み替えしやすい点も挙げられます。

賃貸は2年更新が多いため、転勤や結婚、出産などのライフスタイルの変化に合わせて気軽に引っ越せます。

職場の近くや子育てに適したエリアに短期間で移れるのも、賃貸ならではのメリットです。

また、収入が減った際は家賃が低い物件に引っ越すなど、その時々の収入状況に合わせて柔軟に対応できるというメリットもあります。

3.メンテナンスの手間やコストが少ない

賃貸マンションでは、メンテナンスのコストや手間がほとんど不要です。

例えば、エアコンや給湯器などの設備の故障や、外壁やエレベーターなどの共用部分の修繕は、基本的に大家や管理会社が負担します。

借りる側(借主)は家賃と管理費を支払うだけで、突発的な大きな出費を気にする必要がありません。

一方、持ち家では屋根や外壁の修繕(10年ごとに100万円以上かかるケースが多い)や、設備の交換などの費用がかかるため、そのための計画的な貯蓄も必要です。

賃貸の場合は、これらの金銭的な負担や手間が不要なことも、大きな魅力といえます。

4.固定資産税がかからない

賃貸は固定資産税や都市計画税がかからないことも大きなメリットです。これらの税金は、通常は物件の所有者が支払います。

持ち家の場合は、物件価格や地域によりますが、年間10万円~30万円ほどの固定資産税が発生します。

例えば、固定資産税が年間15万円の場合は、35年分で約525万円という大きな負担になります。

継続してかかるコストを抑えたい人にとって、賃貸で住むことは大きなメリットと言えます。

5.災害時に柔軟に対応できる

賃貸では、災害に柔軟に対応できるというメリットもあります。

持ち家であれば、地震や洪水・土砂災害などが発生した場合でもローン返済が残っていることが多いため、そのまま住み続けることが前提となります。また、住み続けるために修繕や建て替えが必要な場合もあります。

しかし賃貸であれば、被災した地域から離れた場所にすぐに転居することが可能です。

また、建物の損壊に対しても、所有者である大家が責任を負うため、自分自身で大きな修復費用を負担するリスクも少なくなります。

災害が比較的多いといわれる日本において、柔軟に住まいを選択できることは大きな利点と言えます。

賃貸の5つのデメリット

賃貸は初期費用が安く住み替えしやすい等多くのメリットがありますが、デメリットもあります。

ここでは、賃貸のデメリットについて詳しく解説します。

1.家賃が掛け捨てで資産にならない

賃貸の最大のデメリットは、支払った家賃が資産として残らずに「掛け捨て」になる点です。

例えば、月10万円(共益費込み)の家賃を35年支払うと、支払家賃の総額は約4,200万円にのぼります。しかし、この支出は消費されるだけで資産形成にはつながりません。

また、賃貸では長生きすればするほど家賃を支払う期間が長くなるため、支払い家賃総額が想定外に多くなることがあります。

一方、持ち家は毎月ローンを支払いますが、完済後は不動産が資産として残り、売却すればまとまった資金を得られます。また、賃貸に出して定期的な賃貸収入を得ることも可能です。

賃貸では、家賃が掛け捨てであること、家賃を支払う期間が不透明なことがデメリットと言えます。

2.家賃や管理費が値上げされるリスクがある

賃貸では、市場の家賃動向や物件の修繕費の上昇、また大家の判断などで家賃が大きく値上げされることがあります。このような場合は、住み続けるのが難しくなることがあります。

契約は通常2年ごとに更新されるため、2年ごとに家賃が値上げされるリスクがあります。また、値上げを拒否すると退去を求められる場合があるため注意が必要です。

また、家賃同様、管理費が値上げされるリスクもあります。

例えば、分譲マンションの一室を借りる場合、管理費はマンションの管理組合が決めます。管理費は共用部分の光熱費やエレベーターの保守費用などが含まれており、それらが値上げされると管理費が上がる可能性があります。

一棟丸ごと賃貸用に建てられた「賃貸専用マンション」の場合は、管理会社や貸主が自由に管理費を設定できます。

例えば、マンションの老朽化や大規模な修繕がある場合、大家が修繕費を補うために家賃や管理費を値上げするケースもあります。

このように、賃貸では家賃や管理費が値上げされるリスクがあります。

契約書における「値上げの条件」を確認し、過去に家賃や管理費の値上げがあったかどうかを不動産会社に確認するようにしましょう。

3.契約を更新できない可能性がある

賃貸における大きなリスクは、契約を更新できない可能性があることです。

通常の賃貸契約(普通借家契約)では借主が保護される傾向があります。

しかし、定期借家契約の場合や、「大家自身が住む」「建物の老朽化や建て替えの必要性がある」「借主の重大な契約違反がある」等の正当事由があると判断された場合は、貸主が更新を拒否できる場合があります。

もしも更新できない場合、退去のための引っ越し費用が発生します。また、新たな物件を探す手間や敷金・礼金などの初期費用が発生することもあります。

また、高齢になると大家の審査に通らず、新たな契約が難しくなる場合があります。

法律上は、基本的には高齢を理由に更新拒否することはできません。

しかし、家賃滞納の懸念がある場合や、保障会社の利用を求められて審査に通らない場合、保証人を立てられない場合などは新たな賃貸契約を結べなかったり、更新ができなかったりすることもあります。

賃貸契約を結ぶ場合は「普通借家契約」であること、「更新条件や特約に、高齢に関する条項がないこと」をチェックすることが大切です。

4.病気になって家賃が支払えなくなる可能性がある

賃貸では、病気や失業で収入が減り、その結果家賃が支払えなくなるリスクがあります。

特に、病気で働けなくなると滞納リスクが高まるため、退去を余儀なくされることがあります。

病気等による収入減を不安に感じる人は、収入保障保険などを検討するようにしましょう。

一方、持ち家はローン完済後ならば住居費が不要なため、収入が減っても安心して住み続けられます。

また、ローン返済中であっても、住宅ローン契約時に「がんなどの指定された病気になった場合、住宅ローン残債がゼロになる」という特約付きの団信に加入しておけば、特定の病気になった際に返済が免除されて残債がゼロになるというメリットがあります。

将来の健康に不安を感じる人は、特約をつけた団信に加入するようにしましょう。

5.カスタマイズが制限される

賃貸マンションでは、部屋のリフォームやカスタマイズが大きく制限されます。

壁紙の変更や間取りの改装、設備の交換などは基本的に不可となっています。また、許可を取れば行える場合であっても、退去するときには原状回復が条件となっています。

また、ペットを飼ったりすることも契約で禁止されていることが多く、自由度が低いことがデメリットです。

一方、持ち家ならばリフォームやインテリアを自由に変えられるため、自分の好みに合わせた住まいづくりができます。

このように、賃貸は持ち家に比べて自由度が低いことがデメリットといえます。

持ち家の5つのメリット

持ち家には賃貸にはない魅力があり、長期にわたって安心できる住まいを求める人に適しています。

ここでは、持ち家の5つのメリットを詳しく解説します。

1.住宅ローン控除を受けられる

持ち家の大きなメリットとして「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」を受けられる点です。

これは一定の条件を満たす住宅ローンを組んだ場合に、年末時点のローン残高に応じた金額を所得税や住民税から控除できる制度です。控除期間は最大13年です。

持ち家の場合、住宅ローン控除をうまく活用することで、持ち家の実質の購入費用を低くできることがメリットと言えます。

2.資産として残る

資産として不動産が残るということも、持ち家の大きなメリットです。住宅ローンを完済すれば、マンションや一戸建てや自分の所有物となるため、売却したり、賃貸で利益を得たりすることが可能です。

また、住宅ローンの返済途中であっても売却額が住宅ローンの残債額を上回れば負債は残らず、利益を得られるというメリットもあります。

賃貸では家賃がすべて掛け捨てのため資産になりませんが、持ち家は将来的には自分の資産になります。

また、子どもへの相続や資産運用にも活用できるため、長期的な視点における経済的なメリットが大きいと言えます。

3.老後の居住費が抑えられる

持ち家は、住宅ローンを定年までに完済すれば、それ以降は家賃ゼロで住み続けられます。

かかるコストも固定資産税のみで済むため、年金生活における金銭的な負担を抑えられるというメリットがあります。

また、持ち家は、老後に安心して住める場所を確保できるという利点もあります。高齢になると、さまざまな理由で契約を断られることもありますが、持ち家であれば終の棲家として安心して住める場所を確保できます。

4.自由にカスタマイズできる

持ち家では、住まいを自由にカスタマイズできることも大きなメリットです。壁紙の変更や間取りのリフォーム、キッチンやバスルームの設備交換など、自由に改装できます。

また、ペットの飼育や庭の整備も自由に行えるため、自分の理想のライフスタイルを追求できます。

また、年数が経った持ち家を、リフォームをすることで資産価値を高めることもできます。

5.安心感を得られる

持ち家は、住宅ローンの返済期間中であっても所有権があるため、安心して住めるというメリットがあります。

持ち家では、契約更新の拒否や家賃値上げのリスクがなく、大家の都合で退去を求められることもないため、安心して住み続けられます。

また、高齢になると賃貸契約の更新が難しくなるケースもありますが、持ち家であればそのようなリスクもありません。

家族で長期的な基盤を築きたい人や、転居の可能性がない人に持ち家には適しています。

持ち家の5つのデメリット

持ち家は資産形成や老後の住まい確保等のメリットがありますが、いくつかデメリットもあります。

ここでは、持ち家の具体的なデメリットについて詳しく解説します。

1.初期費用が高い

例として、3,500万円の持ち家を購入する場合、以下のようにまとまった初期費用が必要です。

  • 頭金(物件価格の10~20%ほど)
  • 諸費用(物件価格の4~8%ほど)

例えば、3,500万円の物件を購入する場合、総額で約500万円~1,000万円ほど必要です。

賃貸の場合は、初期費用は家賃の約4~6ヶ月分ほど(家賃が10万円の場合は、約40万円~60万円)で住むため、初期費用は賃貸のほうがはるかに少なく抑えられます。

貯金が少ない人や、初期費用を抑えてその分を投資などに回したい人にとって、初期費用が高いことはデメリットと言えます。

2.メンテナンス費用がかかる

持ち家では、建物や設備のメンテナンスや交換費用はすべて自己負担になることもデメリットです。

例えば、マンションであれば毎月の管理費や修繕積立金が必要ですし、一戸建てなら外壁塗装や屋根の修理(10年~15年ごとに100万円~200万円)が必要です。

賃貸の場合は、これらのコストはすべて大家が負担するため、借主は毎月の家賃と管理費のみで住みます。

定期的に必要となるメンテナンスや設備交換の出費を避けたい場合は、持ち家のコストは大きなデメリットと言えます。

3.住宅ローンの金利変動リスクがある

一般的に、持ち家を購入する場合は住宅ローンを利用します。

住宅ローンを組む際は「変動金利」と「固定金利」を選べますが、変動金利を選んだ場合、金利が上昇すると毎月の返済額も上がるため注意が必要です。

例えば、3,000万円を35年返済で借りた場合、金利が0.5%から1.5 %に上がると、月々の返済額が約78,000円から約91,000円に増えてしまいます。

返済総額は約3,270万円から約3,860万円と大幅に上昇します。

賃貸ではこのような金利上昇リスクがないため、「将来金利が上がるのではないか」と不安な人は、賃貸もしくは固定金利の住宅ローンを検討することが大切です。

4.不動産価格の下落リスクがある

持ち家は資産として残るというメリットがありますが、将来不動産価格が下落するというリスクがあります。

例えば、購入時に3,500万円だった物件が、経済状況やエリアの人気低下、築年数の増加等で価格が下落し、売却時には2,000万円を下回ることも起こりえます。

特に、地方や郊外の物件は需要が減ると価格が落ちやすいため、注意が必要です。

物件の資産価値や売却益を期待する場合は、価格下落リスクがあることをよく理解し、物件の立地や市場動向、価格が下がりにくい物件の種類などを把握して購入するようにしましょう。

5.政治的な決定が不動産価格に影響を与える可能性がある

日本では、外国人が不動産を購入することに関する明確な規制がほとんどありません。そのため、近年は富裕層による投資目的の不動産購入が増加しており、都心部のマンションが高騰する一因となっています。

「2025年版 土地白書」によると、海外投資家の不動産購入額は以下のようになっており、2023年から2024年にかけて約63%も増加しています。

年度

海外投資家の不動産購入額

2023年度

5,758億円

2024年度

9,397億円


不動産を購入している国としては、米国やシンガポール、英国、フランス、香港などが挙げられます。

一方、他国では、安全保障や国益の保護という観点から、以下のように外国人の不動産購入に一定の規制を設けている例が多くあります。

国名

規制の内容

オーストラリア

外国人が既存住宅を購入することは2025年4月から2027年まで禁止。新規物件に限定されており、外国投資審査委員会の承認が必要。

カナダ

一部の州は、外国人購入者に対して追加の不動産取得税を課している。

ニュージーランド

外国人が中古住宅を購入することを禁止している。

シンガポール

外国人が不動産を購入する場合、通常の印紙税に加えて60%の追加印紙税が課される。


日本は現在このような規制がないため、外国人が自由に不動産を購入できる状況です。

しかし、近年は、特に都心部の不動産の高騰により「日本人がマンションを買えない」というケースが増加し、問題視されています。

今後、日本政府が何らかの規制を設けた場合は、外国からの投資目的の不動産購入が減り、それに伴って高騰した不動産価格が下落する可能性が高くなっています。

今後も不動産が同じ価値を維持できるかは不透明なため、投資目的ではなく、無理なく返済が続けられるような物件を選ぶことが大切です。


賃貸と持ち家どちらがお得?生涯コストをシミュレーションで徹底比較

持ち家と賃貸ではどっちがお得なのでしょうか。ここでは、30歳から80歳まで50年持ち家に住む場合と、持ち家で65歳に住宅ローンを完済する場合についてシミュレーションを行います。

持ち家にかかる生涯コスト

持ち家に住む場合は、初期費用に加えて住宅ローンの返済や固定資産税の支払い、定期的なメンテナンスコストなどが必要です。

4,500万円の新築一戸建て(長期優良・低炭素住宅)を購入する際の条件を以下とします。

  • 物件価格は4,500万円
  • 頭金は500万円
  • 借入金額は4,000万円(全期間固定金利1.9%・返済期間35年・元利均等返済)
  • 諸費用は180万円(物件価格の4%と仮定)
  • 火災保険は3万円/年
  • 固定資産税は15万円/年
  • 50年間の修繕費用 400万円
  • 住宅ローン控除 ―約450万円

新築一戸建てを購入する際のシミュレーションは、以下のとおりです。

項目

費用(50年間)

頭金

500万円

諸費用(物件価格の4%と仮定)

180万円

総返済額

約5,480万円

火災保険料

年3万円・50年間で150万円

固定資産税

年15万円・50年間で750万円

都市計画税

年3万円・50年間で150万円

リフォームやメンテナンス費用(50年間)

500万円

住宅ローン控除   

―約450万円

50年間の合計コスト

約7,260万円


このように、持ち家では約7,260万円が必要となります。

賃貸にかかる生涯コスト

次に、賃貸にかかる生涯コストをシミュレーションしましょう。

条件は、以下のとおりです。

  • 家賃 13万円/月(1~20年目・共益費含む)
  • 家賃 11万円/月(21~35年目・共益費含む)
  • 家賃 9万円/月(36年目~50年目・共益費含む)
  • 2年ごとの更新料(約250万円)
  • 敷金・礼金・仲介手数料(家賃3か月分×3回)約99万円
  • 引っ越し代 約40万円(3回分)

項目

費用(50年間)

家賃(0~20年目)

約3,120万円

家賃(21~35年目)

約1,980万円

家賃(36~50年目)

約1,620万円

更新料の総額

約250万円

敷金・礼金・仲介手数料(3回分)

約99万円

引っ越し代(3回分)

約40万円

賃貸の生涯コスト

約7,100万円


上記の条件の場合、賃貸と持ち家のコストはほぼ同じになります。

ただし、持ち家は資産となるため、持ち家の方がトータルで考えるとお得です。

家賃が以下のようにもう少し高い場合は、賃貸の生涯コストは約8,400万円になります。

  • 家賃 15万円/月(1~20年目・共益費含む)
  • 家賃 13万円/月(21~35年目・共益費含む)
  • 家賃 11万円/月(36年目~50年目・共益費含む)

このように、賃貸の生涯コストは毎月の家賃額によって大きく変わりますので、自分が希望する間取りや地域の平均賃料を元にしてシミュレーションすると良いでしょう。


賃貸に向いている人の特徴は?

賃貸は、柔軟に住まいを選びたいという人に適しています。ここでは、賃貸に向いている人の特徴について詳しく解説します。

将来住み替えの可能性がある人

賃貸は、将来住み替えの可能性がある人に最適です。転勤や留学・結婚・出産など、ライフスタイルの変化に伴って住む場所が変わる可能性がある場合、賃貸であれば契約期間(通常2年)が終了すれば気軽に引っ越しができます。

住む場所や期間が不確定な若年層や、キャリアに合わせて柔軟に住まいを変えたい人は賃貸に向いていると言えます。

家のメンテナンス費用を抑えたい人

賃貸は、家のメンテナンス費用を抑えたい人にも適しています。

賃貸マンションでは、エアコンや給湯器などの設備の故障や共用部分の修繕に関しては、大家や管理会社が負担するため、借主が突発的な費用を負担する必要はありません。

持ち家(マンション)の場合は、毎月修繕積立金が必要で、将来的には金額が上がる可能性もあります。

また、持ち家(一戸建て)では、外壁塗装などの費用がかかります。外壁塗装をする際は、業者に依頼して足場を作って作業をしてもらうため、何日もかかるケースが多くなっています。

このようなメンテナンスの手間やコストを避けたい人は、賃貸が向いていると言えます。

住宅ローンを利用したくない人

住宅ローンを利用したくないにとっても、賃貸は向いています。

住宅ローンは長期に渡ってお金を借りることになるため、多くの返済利息を支払うことになります。

また、住宅ローンには審査があり、勤続年数や年収、他の借入金の有無などさまざまな角度から審査が行われるため、それを負担に感じる人もいます。

貯金が少ない人や借金を嫌う人、初期費用を教育や投資に回したい人、住宅ローンの審査を受けたくない人などは、賃貸に向いているといえます。


持ち家に向いている人の特徴

持ち家は、長期に渡って安心できる住まいを確保したい人や資産形成を重視する人に適しています。

ここでは、持ち家に向いている人の特徴を詳しく解説します。

安定した収入があり住宅ローンを組める人

持ち家は、安定した収入があり、住宅ローンを組める人に最適です。

特に会社員や公務員などは信頼性が高い職業と判断されるためローン審査に通りやすいという特徴があります。

ただし、転職してすぐのタイミングだと「勤続年数が短い」ということで審査落ちしてしまうことがあるため、注意が必要です。

収入の変動が少ない人や、長期に渡って問題なく返済できるという人は、賃貸ではなく持ち家にすることで大きなメリットを得られます。

老後の住まいに関する不安を軽減したい人

老後の住まいへの不安を軽減したい人にも、持ち家は最適です。

賃貸であれば、生きている限り家賃の支払いが続くため、老後の生活に不安を覚える人も多くいます。

一方、持ち家はローンを返済すると自分の所有物となるため、老後の家賃は不要になります。

老後に安心して住める家を確保したい人は、持ち家が向いていると言えます。

資産として不動産を残したい人

資産として不動産を残したい人にも、持ち家は最適です。

ローン完済後のマンションや一戸建ては自分の資産となるため、売却すればまとまった現金を得られます。また、賃貸に出せば毎月安定した収入を得られますし、子どもに財産として相続することも可能です。

地方の物件は不動産価格の下落リスクが高まりますが、都心部のマンションなどは、数十年経っても価値があまり下がらないケースが多くなっています。

「アットホーム株式会社」の「2025年5月 首都圏における中古マンションの価格動向」によると、2017年1月の価格を「100」とした場合、2025年5月の中古マンション価格は以下のようになっています。

地域

価格指数

東京23区

186.7

横浜市・川崎市

130.6

さいたま市

139.1

千葉県西部

135.7

都下

130.0

神奈川県 他

143.6

埼玉県 他

136.4

千葉県 他

136.6


このように、マンションは価値が下がりづらく、特に近年は価格が上昇しているケースが多くなっています。

今後はこれほど価格が上昇するかは不透明ですが、マンションは比較的資産価値を維持しやすい不動産と言えるでしょう。


賃貸と持ち家のどっちにすべき?よくある質問

賃貸と持ち家のどっちを選ぶかということは、多くの人が悩む問題です。ここでは、よくある質問を紹介します。

賃貸と持ち家で迷った場合の選び方を教えてください

賃貸と持ち家で迷った場合は、まず「どれくらいの期間同じ場所に住むつもりか」を考えましょう。

5年以内に引っ越す可能性がある場合は、賃貸のほうが柔軟に対応できます。一方で、10年以上住む可能性がある場合は、資産形成につながる持ち家の方が有利になる可能性があります。

また、老後の住環境を安定させたい場合は持ち家がおすすめです。一方で、仕事や生活スタイルの変化に柔軟に対応したい場合は賃貸が向いていると言えます。

将来の資金計画やライフプランをよく考えて検討するようにしましょう。

賃貸は老後の住まいが借りにくくなるのは本当ですか?

高齢者になると「収入が年金のみである」「孤独死リスクある」等の理由で、賃貸物件の入居審査に通りにくくなるケースがあります。

特に、高齢の単身高齢者の場合は、保証人の有無や健康状態が審査のポイントになることも多く、大家が敬遠する可能性があります。

老後も賃貸を前提とするのであれば、高齢者向けの賃貸住宅や見守りサービス月の物件など、さまざまな選択肢を検討するようにしましょう。

賃貸契約では貸主と借主どちらが強いのですか?

日本の賃貸契約では、法律上は「借りる側の権利」が比較的強く保護されています。例えば、大家が一方的に契約を打ち切ることは原則としてできず、正当な理由がなければ退去を求めることはできないこととなっています。

しかし、契約の審査では大家側の裁量が大きく、借りる側は「選ばれる立場」であるとも言えます。

契約後は借りる側が強いものの、借りる前は貸す側が強いちおう実情があることを理解しておきましょう。


まとめ

賃貸と持ち家にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあります。どちらが正解というわけではなく、自分や家族のライフスタイルや将来の設計、経済状態などに応じて適切な選択をすることが大切です。

長期的な視点を持ちつつ、自分にとって納得できる住まいの形を見つけるようにしましょう。


伊藤久実 

伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。
大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。