サラリーマンや個人事業主の効果的な節税対策とは?
注意点やポイントも徹底解説
手取りを少しでも増やすために、節税対策をして税金を減らしたいと考えるサラリーマンや個人事業主の方も多いのではないでしょうか。節税対策の種類はさまざまですが、自分に合った正しい方法で節税に取り組むことで、合法的に税負担を減らすことが可能です。
この記事では、節税の仕組みやサラリーマン・個人事業主が実践できる節税対策方法、注意点や気を付けるべきポイントまで詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
・目次
節税とは
節税とは、法律の範囲内で、合法的に税負担を減らすことを言います。
節税は、違法な行為である「脱税」とは違い、国や自治体が認めている制度を利用して税金を減らすため、安心して取り組めることが特徴です。
特に、サラリーマンや個人事業主にはさまざまな控除や優遇制度が多く用意されています。
それらをうまく活用して節税対策をすることで税金を減らし、手取りを増やすことが可能です。
節税の仕組み
節税対策は、以下の3つの仕組みを活用して行います。
●所得控除
●税額控除
●非課税制度
「所得控除」とは、課税対象となる「課税所得金額」を減らす仕組みです。
「税額控除」は、計算された税金そのものの金額を減らす仕組みです。
また、NISAのように、本来徴収されるべき税金が非課税になる制度もあります。
このような制度を組み合わせることで、効率よく税金を減らすことが可能となります。
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世帯年収 |
公立 |
私立 |
2025年3月まで |
910万円以上 |
なし |
なし |
910万円未満 |
11万8,800円まで |
11万8,800円まで |
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590万円未満 |
39万6,000円まで |
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2025年4月から |
制限なし |
11万8,800円まで |
39万6,000円まで |
2026年4月から |
45万7,000円まで |
サラリーマンや個人向け節税対策8選
サラリーマンや個人が簡単に取り組める、主な節税対策は8種類あります。
それぞれ詳しく解説します。
ふるさと納税で節税する
ふるさと納税とは、誰でも簡単にできる節税対策の一つです。
自分が応援したい自治体に寄付することで、所得税や住民税の控除が受けられ、お礼品を受け取ることができます。
ふるさと納税の控除額は、無制限に利用できるわけではなく、年収や家族構成に応じた上限が決められています。
寄付の上限内であれば、寄付額のほとんどが翌年の住民税から差し引かれるため、ふるさと納税は、翌年度の住民税を前払いするようなかたちになります。
また、通常の納税と違い、ふるさと納税を通じて寄付をすると、寄付した自治体から地域の特産品や返礼品が届くことも大きなメリットです。
ふるさと納税の2つの手続き方法
ふるさと納税の手続きには「確定申告」と「ワンストップ特例制度」があります。
一般的には、ふるさと納税で寄付した額を「寄付金控除」として確定申告することで、控除を受けられます。
一方で、確定申告なしでふるさと納税をしたい場合は、「ワンストップ特例制度」が便利です。
ワンストップ特例制度とは、以下の条件を満たす場合、確定申告が不要になる制度です。
●年収が2,000万円より少ない
●1年間の寄付先が5自治体以内である
ワンストップ特例制度では、申請書を自治体に送付するだけで良いため、手続きをとても簡単に終わらせることができます。
ふるさと納税については、以下の記事も参考にしてください。
iDeCo(個人型確定拠出年金)で節税する
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、老後資金を自分で準備するための「私的年金制度」で、節税対策として多くの人が活用しています。
iDeCoを節税対策として利用できる大きな理由は、手厚い税制優遇制の仕組みが設けられているからです。
iDeCoでは、自分で老後資金を積み立てながら、以下のような3種類の優遇を受けられます。
●掛金の全額所得控除
●運用益が非課税
●積立金は退職所得控除、もしくは公的年金等控除の対象になる
掛金の全額所得控除
iDeCoが節税対策になる理由は「掛金が全額所得控除の対象となる」という点です。
毎月の掛金がそのまま所得控除されるため、iDeCoを始めたその年からすぐに所得税や住民税を減らせます。
例えば、課税所得金額が400万円で、1年間のiDeCoの拠出額が12万円の場合、以下のように1年間で3万6,000円を節税できます。
課税所得金額 |
400万円の場合 |
388万円の場合 |
所得税 |
37万2,500円 |
34万8,500円 |
住民税 |
40万円 |
38万8,000円 |
所得税・住民税の合計 |
77万2,500円 |
73万6,500円 |
※住民税は10%として計算
運用益が非課税
iDeCoでは、運用益が非課税になるため、大きな節税効果があります。一般的には、株式や投資信託で運用した際の運用益や配当、分配金等には20.315%の税金がかかります。
しかし、iDeCoであれば運用益はすべて非課税のため、効率的に資産を増やすことが可能です。
例えば、100万円の運用益が出た場合、通常では税金が引かれた場合の手取りは約80万円になりますが、iDeCoであれば100万円をそのまま受け取れます。
配当や分配金もそのまま再投資できるため、長期運用することで非課税メリットを最大限活用しながら、老後資金の形成を目指せます。
積立金は退職所得控除もしくは公的年金等控除の対象
iDeCoで積立・運用した資金は、一時金受け取りの場合は「退職所得控除」、分割して年金として受け取る場合は「公的年金等控除」を受けられるため、税金を減らせます。
このように、iDeCoには3つの税制優遇があり、「掛金の所得控除」は初年度から活用できるため、すぐに節税したいという人に適しています。
NISA(少額投資非課税制度)で節税する
NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益が非課税になる制度です。
本来であれば20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で運用した場合、非課税になるため、より効率的に資産を増やせます。
例えば、100万円の利益が出た場合、NISA口座で運用していれば、約20万円を節税できる計算です。
2024年から始まった新NISAでは、以下のように非課税投資枠が大幅に拡大され、より多くの節税メリットを得られるようになりました。
新NISA |
成長投資枠 |
つみたて投資枠 |
非課税運用期間 |
無期限 |
無期限 |
非課税投資枠 |
年240万円 |
年120万円 |
非課税保有限度額(総額) |
生涯投資枠が1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) |
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買える商品 |
個別株・投資信託・REIT・ETFなど |
指定された投信とETF |
成長投資枠とつみたて投資枠は併用が可能で、18歳から新NISAで投資できます。
ただし、NISAはiDeCoのように、投資した金額を所得控除できる仕組みはありません。
新NISAでは、将来受け取る利益が非課税で、より多くの利益を受け取れるというメリットはありますが、iDeCoのように「毎年所得税と住民税が減らせる」という効果はないことを覚えておきましょう。
NISAとiDeCoの違いについては、以下の記事も参考にしてください。
生命保険料控除で節税する
生命保険料控除とは、支払った生命保険料の一部が所得控除できる制度で、効果的な節税対策方法のひとつです。
「所定の計算式によって計算した控除額」を会社での年末調整や確定申告で申請することで、課税所得額を減らし、その結果所得税と住民税も減らせます。
生命保険料控除には「一般生命保険料控除」と「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類があり、新制度(2012年1月1日以降の契約)では、各控除の上限は所得税がそれぞれ4万円、住民税が2.8万円となっています。
それぞれの控除が適用される保険の種類は、以下のとおりです。
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対象となる保険 |
一般生命保険料控除 |
定期保険・終身保険・学資保険・収入保障保険など |
介護医療保険料控除 |
医療保険・がん保険・介護保険・収納不能保険など |
個人年金保険料控除 |
個人年金保険など |
年間の保険料と控除額の関係は、以下のとおりです。(「一般生命保険料控除」と「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」のそれぞれで計算します。)
所得税の控除額 |
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年間の保険料等 |
控除額 |
2万円以下 |
払込保険料等の全額 |
2万円超4万円以下 |
払込保険料等×1/2+10万円 |
4万円超8万円以下 |
払込保険料等×1/4+2万円 |
8万円超 |
一律4万円 |
住民税の控除額 |
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1万2,000円以下 |
払込保険料等の全額 |
1万2,000円超3万2,000円以下 |
払込保険料等×1/2+6,000円 |
3万2,000円超5万6,000円以下 |
払込保険料等×1/4+1万4,000円 |
5万6,000円超 |
一律2万8,000円 |
保険に加入している場合、11月前後に保険会社から「生命保険料控除証明書」が送られてきます。
ここに記載されている「年間の払込保険料」を上記の計算式に当てはめて控除額を計算しましょう。
生命保険料控除を申告する際は、控除証明書を添付する必要がありますので、失くさないように保管してください。
地震保険料控除で節税する
地震保険料控除とは、地震保険に加入している場合に利用できる所得控除のひとつです。支払った地震保険料に応じて所得税や住民税を軽減できます。
また、経過措置として、以下の条件を満たす旧長期損害保険料も控除の対象となります。
●2006年12月31日までに契約を締結していること
(保険期間または共済期間の始期日が2007年1月1日以降のものは除く)
●満期返戻金などがあり、保険期間または共済期間が10年以上の契約であること
●2007年1月1日以降に、その損害保険契約等の変更をしていないもの
所得税における地震保険料控除額は、以下のとおりです。
区分 |
年間の支払保険料 |
控除額 |
① 地震保険料 |
50,000円以下 |
年間支払保険料の全額 |
50,000円超 |
一律50,000円 |
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② 旧長期損害保険料 |
10,000円以下 |
年間支払保険料の全額 |
10,000円超20,000円以下 |
年間支払保険料×1/2+5,000円 |
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20,000円超 |
一律15,000円 |
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① ②両方がある場合 |
①+②の控除額の合計が50,000円以下 |
① +②の合計額 |
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①+②の控除額の合計額が50,000円超 |
一律50,000円 |
その年に支払った地震保険料の合計が50,000円以下の場合は、支払った保険料の全額が控除されるため、大きな節税効果があります。
また、住民税における地震保険料控除額は以下のとおりです。
区分 |
年間の支払保険料 |
控除額 |
① 地震保険料 |
50,000円以下 |
年間支払保険料×1/2 |
50,000円超 |
一律25,000円 |
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② 旧長期損害保険料 |
5,000円以下 |
年間支払保険料の全額 |
5,000円超15,000円以下 |
年間支払保険料×1/2+2,500円 |
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15,000円超 |
一律10,000円 |
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① ②両方がある場合 |
①+②の控除額の合計が25,000円以下 |
① と②の合計額 |
①+②の控除の合計額が25,000円超 |
一律25,000円 |
日本は地震リスクが高い国であり、火災保険に付帯して地震保険を加入するケースも増えていますが、節税できることが見落とされている場合もあるようです。
保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」を年末調整や確定申告の際に提出することで、手軽に節税効果を得られます。
医療費控除で節税する
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた時に受けられる所得控除制度です。
家計に大きな負担になりやすい医療費を所得控除できることで、所得税や住民税を効果的に減らせます。
所得控除の対象となる医療費は、本人だけでなく、生計を一にする家族分も合算できることが大きな特徴です。
医療費控除額の計算方法は、以下のとおりです。
●「1年間に支払った医療費の合計額」―「保険金などで補填された金額」―10万円(または所得が200万円の場合は所得の5%)
例えば、年間の医療費の合計が30万かかり、保険金などで5万円補填された場合は、実質の医療費は25万円となります。
所得が200万円以上の人は、ここから10万円を引いた残りの額、つまり15万円を医療費控除として申請でき、その結果所得税や住民税を減らせます。
医療費控除を受けるには確定申告が必要ですが、「医療費控除の明細書」を作成・提出するだけなので、手続きとしては比較的簡単です。
「医療費控除の明細書」は、受診後受け取る医療費明細をもとに作成するため、1年間なくさずに保管するようにしましょう。
セルフメディケーション税制で節税する
セルフメディケーション税制とは、特定の市販薬(対象の医薬品)を購入した際に、所得控除を受けられる仕組みです。
この制度の対象となるのは「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる薬で、もともと医師の処方が必要だった薬が、市販薬として販売されているものをいいます。
対象の医薬品は、「セルフメディケーション税制対象」のマークや記載があるため、購入時に確認しやすくなっています。
控除を受けられる額は、年間で購入した対象医薬品の合計額が12,000円を超えた額について、最大88,000円までが所得控除の対象となります。
例えば、年間で対象医薬品を50,000円購入した場合「50,000円―12,000円=38,000円」となり、38,000円が所得控除の対象となります。
ただし、セルフメディケーション税制を利用するには「予防接種を受けていること」「がん検診を受けていること」等、健康管理に取り組んでいることが条件となっています。
セルフメディケーション税制は、医療費控除との併用はできないため、所得控除額が大きいほうを選ぶようにしましょう。
住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)
住宅ローン減税(正式名称は、住宅借入金等特別控除)は、マイホームの購入や新築、リフォームなどで住宅ローンを組んだ場合に、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。
毎年の住宅ローン残高に応じて税金が還付される仕組みで、家計への節税効果が非常に大きいことが特徴です。
具体的には、住宅ローンの年末残高の0.7%が所得税から控除されます。所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税から一部が控除される仕組みになっているため、所得税だけでなく住民税の節税にもつながります。
例えば、年末の住宅ローン残高が3,000万円の場合、0.7%は21万円です。この21万円が、所得税額から税額控除され、確定申告や年末調整で還付されます。
対象となるのは自己居住用の住宅であり、床面積やローンの借入期間、所得の上限などの条件が定められています。
特に、2024年1月以降に新築確認を受ける場合、省エネ基準を満たしていないと住宅ローン減税の対象外になるので注意が必要です。
入居した初年度は必ず確定申告を行う必要がありますが、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。
住宅ローンは、13年(中古住宅は10年)という長期間にわたって税負担を軽減できる仕組みで非常に大きな節税効果がありますので、上手に活用するようにしましょう。
サラリーマンが節税する際の注意点
サラリーマンの場合、節税の多くは年末調整で完結できます。
しかし、医療費控除やふるさと納税(寄付金控除)など、確定申告が必須のものもあるため、忘れずに申告をすることが重要です。
確定申告の期間は、例年2月15日~3月15日頃となっており、この期間に前年度1年間分の控除を申告します。
ここまでで紹介した8つの節税対策について、年末調整で行う控除と、確定申告が必要な控除に分類すると、以下のようになります。
年末調整で行う |
確定申告で行う |
小規模企業共済等掛金控除(iDeCo) |
寄付金控除(ふるさと納税) |
生命保険料控除 |
医療費控除 |
地震保険料控除 |
セルフメディケーション税制 |
住宅ローン控除 |
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しっかりと節税するためにも、確定申告を忘れずに行うようにしましょう。
ただし、ふるさと納税では、ワンストップ特例制度を利用する場合は、確定申告は不要です。
個人事業主向け節税対策6選
個人事業主は、サラリーマンとは違って自分で確定申告を行い、税金を計算・納付する必要があります。そのため、正しい節税対策を知っておくことは、手取り収入を増やし、事業を安定させるためにとても重要です。
個人事業主の節税の基本は、「経費の適切な計上」です。事業に必要な支出を経費に計上し、所得(利益)を減らすことで、所得税や住民税の負担を軽減します。
個人事業主であっても、上記で解説した「サラリーマンや個人向けの節税対策」を活用できますが、個人事業主ならではの節税対策もありますので、詳しく紹介します。
経費を適切に計上する
個人事業主の効果的な節税対策としては、事業にかかった費用を「経費」として計上できることが挙げられます。
経費にできる主な支出には、以下のようなものがあります。
経費の種類 |
具体例 |
事務用品費 |
パソコン・プリンター・文房具など |
交通費 |
電車・バス・タクシー・ガソリン代など |
家賃・光熱費 |
自宅兼事務所の場合は按分計算で計上 |
接待交際費 |
取引先との会食など |
通信費 |
電話やインターネット料金 |
確定申告で適切に計上できるように、領収書やレシートは必ず保存しておくようにしましょう。
青色申告特別控除で節税する
個人事業主は毎年「確定申告」で1年間の所得や経費を申告しますが、その申告方法として「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
青色申告は、税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、認められた人だけが利用できる申告方法です。また、青色申告の条件として、「複式簿記での記帳」が必要です。
青色申告すると、以下のようなメリットがあります。
●最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
●赤字の繰越控除(最長3年)ができる
●家族への給与を「専従者給与」として計上できる
●30万円未満の備品購入費は、少額減価償却資産として一括計上できる
青色申告の申請をし、複式簿記で記帳して電子申告をした場合、65万円の青色申告特別控除を受けられます。
一方で、青色申告の申請をしていない人は「白色申告」で確定申告することになり、控除額は10万円になります。
白色申告は青色申告と比べて55万円も控除額が減り、節税効果が大きく下がってしまうため注意が必要です。
また、白色申告では赤字の繰越や、家族への給与を経費として計上することもできなくなります。
個人事業主として事業をする際は、青色申告を行い、65万円の控除や赤字の繰越等を最大限活用するようにしましょう。
事業専従者へ給与を支給することで節税する
青色申告で確定申告をすると、事業を手伝っている家族(配偶者や親、子供)への給与を経費として計上することが可能です。
給与を支給することで経費を増やして利益を減らせるため、効果的な節税対策といえます。
ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。
また、以下のような専従者の条件を満たしていることが必要です。
●15歳以上であること
●生計を同じくしていること
●年間を通じて6か月以上、もっぱら事業に従事していること
(学生や他に正社員として働いている家族は、原則「専従者」になれない)
また、支払う給与額は「その家族の働きに見合った金額」が原則です。
明らかに高額すぎる給与は、節税目的とみなされて否認される恐れがありますので注意しましょう。
このように、「事業専従者へ給与」を活用することで所得を分散でき、その結果所得税や住民税を軽減できます。
小規模企業共済で節税する
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模法人の役員が「廃業」や「退職」したときの資金を準備するための共済制度です。
この共済制度は、掛金が全額所得控除できるため、効果的な節税対策法のひとつとなっています。
小規模企業共済の主な特徴やメリットは、以下のとおりです。
●掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除できる
●月額1,000円~7万円の範囲で自由に掛金設定・増減が可能
●事業を辞めた際に「共済金」として受け取れる
●共済金は「退職所得控除」または「公的年金等控除」などの税制優遇を受けられる
この共済制度を活用することで、節税しながら将来の退職金を自分で積み立てられます。
また、一定条件で積み立てているお金を貸し付けてもらうことも可能なため、もしもの際の資金繰り対策としても活用できます。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)で節税する
個人事業主の節税対策の一つとして、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)への加入があります。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)とは、取引先の倒産による連鎖倒産リスクから、中小企業を守るための共済制度です。
主な特徴やメリットは以下のとおりです。
●掛金は全額経費に計上できる
●月額5,000円~20万円(年間最大240万円)まで自由に掛金が設定できる
●万が一、主要取引先が倒産した場合は、共済から無担保・無保証人で即時貸付が受けられる
●任意解約可能で、掛金総額の80%~100%が返戻金として戻る
掛金が全額経費にできるため節税効果が大きく、もしもの時の資金繰り対策としても活用できるため、上手に活用したい制度といえます。
経費の前払いで節税する
個人事業主の節税対策のひとつとして「経費の前払い」があります。翌年以降にかかる予定の経費を年内に支払うことで、今年の経費として計上し、課税所得を減らす方法です。
所得税や住民税は、その年の所得に応じて決まります。そのため、経費の前払いで所得が圧縮することで、所得税や住民税を減らして節税できます。
前払いする経費の例としては、以下が挙げられます。
●事務所の家賃
●リース代
●保守契約
●広告料
●通信費
ただし、前払いしすぎると翌年の経費が減ってしまい、翌年の税負担が重くなる可能性もあります。
所得が大きくなった年に経費の前払いを取り入れるなど、柔軟に活用するようにしましょう。
法人設立で節税する
個人事業主としての所得が増えてくると、法人化(法人成り)することが、効果的な節税対策になる場合もあります。
法人成りする最大のメリットは、「税率の違い」です。個人事業主の場合、個人と同じような「累進課税」が適用されるため、最高税率は45%になります。
一方で、法人の場合は利益に対して、約23%の法人税(中小企業はさらに低い税率)が適用されるため、一定以上の利益が出る場合は、法人化したほうが税負担を抑えられます。
また法人では、自分や家族が役員報酬として給与を受け取ると「給与所得控除」が適用できます。
加えて、給与を法人の経費としても計上できるため、個人・法人ともに節税が可能です。
このように、法人になると計上できる経費の幅も広がるため、さまざまな方法で節税できるようになります。
ただし、法人化には設立費用や社会保険加入義務、事務負担の増加といったデメリットもあるため、年間の利益や事業規模を見極めて、法人化を検討するようにしましょう。
個人事業主が節税する際の注意点
個人事業主はさまざまな節税対策を行うことができますが、正しい知識のもとで節税しないと、税務署から指摘されるリスクがあります。
節税はあくまでも合法的に税金を減らす手段ですが、行き過ぎると「脱税」と見なされることもあるため、注意が必要です。
特に、プライベートな支出を無理に経費にすると、税務署に否認される恐れがあるため注意が必要です。
また、家や事務所の光熱費などの「家事按分」の経費もよく指摘される項目です。
合理的な基準で按分し、領収書や契約書を証拠としてしっかり保管するようにしましょう。
まとめ
サラリーマンや個人事業主は、さまざまな節税対策をうまく活用することで、所得税や住民税を減らし、手取りを増やすことが可能です。
ふるさと納税やiDeCo、生命保険料控除など、正しく使えば税負担を大きく軽減できる制度があるため、自分に合った方法を選び効果的に節税を行いましょう。
個人事業主は、経費計上や青色申告の特典、小規模企業共済などを活用できるため、サラリーマンよりも、節税の幅がさらに広がります。
節税は、今の生活の安定や将来の資産形成にもつながる、大切な対策です。今後のライフプランを見据えながら、無理のない節税対策を取り入れていきましょう。
伊藤久実
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。
大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。