インフレ・円安時代に備える資産防衛術|組み込むべき資産や節税対策も解説
資産形成は始めていても、資産防衛について意識している人はあまり多くはないかもしれません。しかし、世界情勢や経済の変化が著しい近年では、資産を形成するだけでなく防衛していくことも重要です。そこでこの記事では、なぜ防衛が重要なのか、どのように対策していけばいいのかなど具体的に解説していきます。
・目次
なぜ今、資産防衛が必要なのか
日本では貯蓄を重要視する割合が高く、資産形成についても他国と比べると消極的と言われています。しかし近年では、政府が制定したNISAやiDeCoを通じて、徐々に資産形成の意識が高まり、実際に投資を始めた人も多いでしょう。ただし、資産とは作るだけではなく「守る」ことも意識しなければなりません。
資産形成だけでは不十分な理由
資産形成とは、資産を「増やす」ことです。子供の教育や老後などのために、資産形成が重要だということは言うまでもありません。かつて高金利だった時代は貯蓄だけでも資産を増やせましたが、低金利が長く続く今では難しいです。代わりに、株式や投資信託などで、資産形成を実践されている方も多いでしょう。
しかし資産は、漫然と保有しているだけでは価値が下がることもあります。たとえばインフレです。どんどん物価が上がり、同じ金額でも買えるものが減ったと実感している人も少なくないのではないでしょうか。
またリスクが高い資産形成には、損失のリスクもあります。NISAに挑戦して利益が出たものの、アメリカによる相互関税の発動により、損失になってしまったという人もいるかもしれません。つまり、資産はただ「増やす」という意識だけでは不十分だといえます。
資産を「守る」意識が必要
そこで重要になるのは、資産を「守る」という意識です。資産を増やすだけに注力していると、思わぬリスクに対応できず、資産が減ったり価値が減ったりなどの事態に遭遇する可能性があります。
普段から資産を守ることを意識していることでさまざまなリスクに対応でき、被害を抑えることにつながります。逆に意識していなければ、知らずに損失を被ることもあるでしょう。
単に投資における損益だけでなく、日常生活において知らずに追っているリスクもあります。まずは、私たちが知っておきたいリスクとはどのようなものなのか、どう対応すればよいのかなどをご紹介していきます。
押さえておくべき現代のリスク
資産防衛のためには、どのようなリスクがあるのかをまず把握しておきましょう。現代にはさまざまなリスクがありますが、まずは必ず知っておきたい、基本的なリスクをご紹介していきます。
インフレリスク
インフレとは物価が持続的に上昇して、お金の価値が減ることです。例えば、1,000円で買えた商品が1,100円出さなければ買えなくなったとすると、10%のインフレが起きていることになります。
昔と今では、同じお金の額でも購入できる商品やサービスが減ったということです。これをインフレリスクと言います。つまり資産をただ保有しているだけでは、実質的な価値が減る恐れがあるということです。
インフレが起こる要因は、大きく分けて2つあります。好景気による消費増大で、消費者の需要が供給を上回ることで価格が上昇するケースと、生産コストの上昇により価格が押し上げられるケースです。
好景気に伴い発生するインフレであれば、問題なく対応できるかもしれません。しかし経済が停滞しているにも関わらずインフレが進行する「スタグフレーション」の場合は、よりリスクが大きくなります。近年の日本におけるインフレは、スタグフレーションの様相が強いため、備えが必要というわけです。
インフレの反対であるデフレ期間が長く続いていた日本では、インフレリスクについてはあまり触れられてこなかったかもしれません。しかし近年の動向を見ると、インフレリスクは決して他人事ではないことがわかるでしょう。
円安・円高の為替変動
資産形成の際に、外貨の商品を選ぶこともあるでしょう。その場合は、特に為替変動リスクを考慮しなければなりません。為替変動リスクとは、円と外貨の為替変動によって発生する損失のことです。為替変動は損失だけではなく、利益が発生することも当然あるので、円安・円高でどのような影響を受けるのかご紹介していきます。
<前提条件>
1ドル100円のときに、100ドル購入。
●円安に動いた場合
たとえば1ドル100円から110円になったとします。この場合、ドルの価値が上がり円の価値が下がっているので、ドル高・円安の状態です。
購入時の価値:100円×100ドル=10,000円
円安時の価値:110円×100ドル=11,000円
購入時よりも円安時の方が高くなります。つまり、購入したときよりも円安になったときに外貨を売れば、「為替差益」が発生するというわけです。
●円高に動いた場合
反対に、1ドル90円と円高に動いた場合は以下のようになります。
購入時の価値:100円×100ドル=10,000円
円高時の価値:90円×100ドル=9,000円
このように、購入したときよりもドルの価値が下がった(円の価値が上がった)ときに売却すると、損失が発生するというわけです。
外貨の金融商品に投資する場合は、円安・円高の影響も考慮して取引するようにしましょう。
世界情勢の変化
インフレや為替変動は、世界情勢や経済市場に大きく影響を受けます。情勢が悪化すると経済は大きく動くため、対策が必要です。たとえばリーマンショックや、新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵攻など、経済に大きな影響をもたらした情勢に覚えがあることでしょう。
2025年に発生した、アメリカによる「相互関税」もその一つです。アメリカが日本や中国、EUなどの貿易相手国に対して一方的に関税率を引き上げ、世界経済が混乱し株価も全世界的に急落しました。結果的にインフレ圧力が高まり、投資環境にも大きな影響を与えています。今後もまだ影響は続くことでしょう。
過剰な対応はかえって損失を招く恐れもありますが、このような情勢が起こった場合はどのように対応をすべきか知っておくことは大切です。事前に予測するのは難しい側面もありますが、できるだけリスクが低くなるよう備えておきましょう。
税金や法改正による負担増
インフレや為替変動のような、資産の価値が減るリスクだけでなく、税金や法改正による負担アップで実際に手元に残るお金が少なくなるリスクも見逃せません。具体的にはどれくらい負担が増えているのでしょうか。
消費税や社会保険料のアップ
代表的な税金である「消費税」。誰もが等しく支払わなければならないものですが、この消費税も徐々に引き上げられています。
1989年に消費税が始めて導入されたときは「3%」でした。それが1997年には「5%」、2014年には「8%」、2019年には「標準税率10%(軽減税率8%)」に引きあがっています。
また社会保険料の負担も年々上昇しています。内閣府が発表した従業員負担分の社会保険料率は、1984には8.27%だったのに対し、2014年では14.92%にもなっています。少し前のデータではありますが、この調査以降も社会保険料は上がり続けており、たとえ給料が増えても手取りはあまり増えていない状況です。
贈与税や相続税に関する法改正について
贈与税や相続税の税法が改正され、2024年1月1日に施行されました。基本的に贈与税と相続税を一体化させていくことを目指したもので、単純に増税されたというわけではありません。しかし、制度を知らなければ負担が増えてしまう危険もあるので注意が必要です。大きく変更があったポイントについて、簡単にご紹介します。
<改正ポイント>
●暦年贈与に関するルールが変更
贈与する金額が年間110万円までなら非課税になる、いわゆる暦年贈与ですが、今までは相続前「3年」分は相続財産として加算されていました。しかし今回の改正で、相続前「7年」分を加算することになりました(延長された4年間に贈与されたうち、総額100万円は控除されます)。つまり、相続税対策として暦年贈与していたにも関わらず、結局相続財産として加算されてしまい、相続税が発生する可能性があるということです。
※相続開始日が2027年(令和9年)1月2日以降の場合に適用
●相続時精算課税制度の変更
暦年贈与のルールが厳しくなった反面、相続時精算課税制度の使い勝手はよくなりました。今までは、相続時精算課税制度を選んだ場合、暦年贈与のような控除額(110万円)はありませんでしたが、新たに基礎控除(110万円)が創設されました。
相続時精算課税制度を選んだ場合、基礎控除額内であれば、贈与を受けても申告する必要がなくなり、また相続時の財産にも加算されません。つまり、暦年贈与であれば7年前までさかのぼって相続財産に加算されますが、相続時精算課税制度を選べば、相続財産に加算されないということです。
制度が改正されたことを知らずに暦年贈与を行っていた場合、相続の際に不利益を被ることもあります。このように、法制度の改正によって影響が出ることもあるので、定期的に情報をチェックしておきましょう。
資産防衛方法
ではどうすれば資産を守れるのか、基本的な対処方法をお伝えしていきます。さまざまなリスクがあるため、ひとつの方法が正解というわけではありませんが、資産防衛の基礎知識として参考にしてみてください。
基本は分散投資
資産を守るうえで重要なのが、分散投資です。「卵を一つのカゴに盛るな」という言葉をご存じでしょうか?一つのカゴに卵をすべて入れていた場合、カゴを落としてしまえば卵はすべて割れてしまいますが、複数のカゴに入れておけば助かる卵があります。このように資産も、複数の投資先に分散させるべきという考えです。
分散投資をしておくと何か一つの投資先に問題があっても、ほかでカバーできます。多少損失が発生しても、被害を抑えることができるでしょう。それであれば、投資ではなく預金しておけばよい、と思うかもしれませんが、それはそれでリスクが伴います。
預金だのみは危険
投資と違って、元本が保障されている預金であれば安心だと考えている人も少なくないかもしれません。実際に日本における預金率は高く、リスクを冒して投資するよりも安全だという意見は根強いでしょう。
しかし預金にもリスクが存在します。それがインフレです。たとえお金が減ることはなくても、お金の価値が目減りしてしまえば、実質損失が発生するということです。前述した通り、特にこれからはインフレリスクを考慮しなければなりません。
預金が悪いわけではありませんが、預金だけだとバランスが悪いと言えます。分散投資先の一つとして組み込むのがおすすめです。
ポートフォリオの重要性
金融市場におけるポートフォリオとは、保有している金融商品の内容や配分を示したものです。つまりポートフォリオとは、資産の設計図のような役割を果たします。どのような金融商品にどれくらいの割合で投資するか、ポートフォリオを意識することで、自然と分散投資の習慣をつけられます。
どのようにポートフォリオを組めばいいのか、詳しくは後程ご紹介します。そちらもぜひ参考にしてみてください。
節税対策をする
適切な節税対策を行えば、納める税金を抑えられ、手元に残るお金が多くなります。知らなければ損をすることもあるので、利用できる制度は積極的に活用しましょう。
NISA
株式や投資信託などの投資で得た利益には、通常20.315%の税金が発生しますが、NISA口座を利用すると非課税です。つまり10万円の利益が出た場合、普通口座なら20,315円の税金が発生しますが、NISA口座であれば10万円全額が手元に残ります。
国が定めた制度で大幅に節税できる方法なので、資産形成を行うならNISAを活用するのがおすすめです。18歳以上なら誰でも利用できます。
2024年1月からは制度が拡充され、新NISAが始まりました。年間120万円までの「つみたて投資枠」と、年間240万円までの「成長投資枠」があり、合わせて1,800万円まで投資が可能です。
iDeCo
iDeCoは私的年金制度で、積み立てで掛金を拠出して金融資産に投資し、運用します。引き出せるのは60歳以降で、年金のように段階的に受け取ったり一時金として一度に受け取ったりできます。受け取るときには各種控除を受けられ、また毎年発生する拠出金は所得控除の対象となるため、所得税や住民税を節税できます。
こちらも節税効果が高い制度なので、特に年金に不安がある人は利用してみてはいかがでしょうか。
各種控除の利用
税金は所得に応じて発生するので、所得額を減らせれば節税が可能です。所得額を減らせる所得控除は、年末調整で手軽に行えるものから確定申告が必要なものまであります。
<年末調整で申請可能>
●扶養控除
控除対象となる扶養親族(配偶者、子、親など)がいる場合。控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無などによって異なる。
●生命保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合。
●地震保険料控除
地震保険料や旧長期損害保険料などを支払った場合。
●住宅ローン控除(2年目~)
住宅購入やリフォームなどで住宅ローンを組んだ場合。ただし、初年度は確定申告が必要。
そのほか、iDeCoの掛金も年末調整で所得控除可能です。小規模企業共済等掛金控除となります。
<確定申告が必要>
●医療費控除
世帯で年間10万円以上の医療費を払った場合。ただし、保険金などで補填された分を除く。
●セルフメディケーション税制
対象の医薬品(スイッチOTC医薬品)を、1万2,000円以上購入した場合。ただし、健康診断や予防接種を受けている等の条件あり。
●住宅ローン控除(初年度のみ)
初年度のみ確定申告が必須。
そのほか、ふるさと納税を利用した場合、確定申告が必要になることもあります。
個人事業主ができる対策
個人事業主であれば、以下のような節税対策が可能です。
●適切な経費申告
かかった経費を漏れなく適切に申告。
●青色申告
青色申告特別控除(最大65万円)を受けられる。ただし、複式簿記による帳簿が必要。そのほか、事業専従者として家族を雇用でき、給与を経費にできる。
●小規模企業共済
個人事業主や小規模法人の役員が、廃業や退職をしたときに支払う資金の共済制度。掛金を全額所得控除できる。
●法人設立
個人事業主としての所得が大きくなった場合、法人化したほうが節税できる可能性がある。
相続対策
相続財産は、ある一定以上の金額までは税金がかかりません。基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。
<法定相続人が配偶者と子供2人の場合>
基礎控除額=3,000万円+1,800万円(600万円×3人)=4,800万円
基礎控除額を超えなければ相続税は発生しませんが、これ以上の金額になる場合は、事前の対策をおすすめします。
●相続時精算課税制度や暦年贈与の利用
前述した通り、相続時精算課税制度には年間110万円までの控除額があるので、相続税の節税に利用できます。またなるべく早い段階から暦年贈与を利用して、相続財産を減らしておくのも有効です。
ちなみに、暦年贈与の7年加算は「相続人」が対象なので、相続人ではない「孫」は対象になりません。そのため、孫への暦年贈与も相続対策になるでしょう。
●生命保険の非課税枠を利用する
生命保険の保険料は相続税の課税対象ではありますが、相続人1人につき500万円までの非課税枠があります。つまり、前述した相続税の基礎控除額にプラスして控除額を増やせるので、節税効果が高いです。
また生命保険の保険金は、遺産分割協議の対象にはならないため、財産を残したい人に間違いなく渡せるというメリットもあります。
●法定相続人の数を増やす
たとえば孫と養子縁組をすると、子供の数が増えるので法定相続人の数を増やせます。法定相続人が増えると、相続税の基礎控除額も増えるので、節税が可能です。
ただし孫が法定相続人になった場合、暦年贈与の7年加算ルールの対象になるので、この制度を利用する場合は注意してください。
そのほか、配偶者は1.6億円以下であれば相続税がかからないといった控除もあります。相続税が発生しそうな場合は、早めに対策を取りましょう。
節税対策については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
情報収集を怠らない
資産を防衛するには、情報はとても大切です。経済や世界情勢に関するものはもちろん、法制度の改正なども、資産状況に大きく影響します。
特に古い知識のまま対策したり、偏った知識で判断したりしないよう、注意が必要です。各種メディアや本から知識を吸収する、セミナーに参加するなどして、積極的に情報をブラッシュアップしていきましょう。
また、専門家に相談するのも有効です。自分で判断するのが難しい場合でも、客観的に的確なアドバイスを得られます。
資産防衛に強い資産とは?
資産防衛に強いと言われている資産は、主に「実物資産」と呼ばれているものです。株式や債券のようなペーパー資産ではなく、現物そのものに価値があると認められているものです。もちろん分散が基本なので、どれか一つが良いというわけではありません。ご自身の資産状況や興味などによって、選んでみてはいかがでしょうか。
金
金は「有事の金」や「無国籍通貨」などと言われるほど、安全資産として有名です。実物資産である金には古い歴史があり、通貨として利用されてきたこともあります。どの国でも一定の価値が認められ、供給量も限られていることから、希少性が高くインフレにも強いです。
特に世界情勢が不安定なときほど、金の需要は高まります。たとえば世界情勢の悪化により株価が下落しそうな場合、リスクの高い株式を売って安全性の高い金を買い求める人が増えるからです。資産防衛には分散投資が基本ですから、株式と逆相関の関係にある金を保有するとリスク回避になるでしょう。
金に投資するには、現物である金地金を購入するほか、純金積み立てや金ETFなどの方法があります。
不動産
不動産も、インフレに強い資産の一つと言われています。インフレが進むと物価が上昇するため、不動産の価値や家賃も上がる傾向にあるからです。
実物資産であるため、大幅な下落もしにくく価値が担保されやすいという特徴もあります。ただし、不動産投資には多額の初期費用が必要です。管理費や維持費も発生するので、長期的な視野を持って投資しなければなりません。
不動産の現物を保有するのが難しい場合は、不動産を対象とした投資信託である「REIT」を選ぶという方法もあります。
宝石・アート
宝石やアート、時計などは、趣味を兼ねた投資として扱うこともあります。特に限定商品や希少性のあるアート作品、宝石などは価値が下落しにくい実物資産のため、インフレに強いと言えるでしょう。
ただし、宝石やアートは価値を正しく見極めるのが難しい側面もあります。趣味を兼ねて楽しみながら資産形成する場合はさほど気になりませんが、投資手段とする場合は価値の見極めが重要です。
コモディティ投資
上記でご紹介してきた資産の特徴は、「実物」であることです。このように、実物資産への投資のことをコモディティ投資といいます。コモディティ投資にはほかにもさまざまな種類があります。
<主なコモディティの種類>
- 貴金属:金、銀、プラチナなど
- 天然資源:天然ガス、原油など
- 農作物・穀物:大豆、トウモロコシ、小麦、コーヒーなど
コモディティ資産のメリットは、実物資産であるがゆえの安定性です。インフレ対策になり、資産防衛に適しています。金利や配当などはなく、投資先も限定されますが、分散投資の対象として有効だと言えるでしょう。
コモディティに投資する方法は、主に以下の通りです。
- 現物取引:金のインゴット、不動産、貴金属など
- 投資信託やETF:コモディティを対象とした投資信託。ETFとは、上場している投資信託のこと。
- 先物取引:特定の商品を、あらかじめ決められた価格と期日で売買すること。レバレッジをかけられる。
- CFD取引:実際の商品を手にすることなく売買し、価格の差額で取引すること。FXもCED取引のひとつ。
投資といえば株式や投資信託がメインという人も多いでしょうが、資産防衛のためにはこのようなコモディティ投資も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
インフレ対策としての株式
インフレ対策として実物資産は有効ですが、優良企業の株式もまた効果的です。特に物価上昇を製品価格に転嫁し、収益を増やせる企業はインフレに強いと言われています。たとえば、生活必需品や高いブランド力を持つ企業、基礎的なインフラを提供する公益企業などです。
そのほか、インフレに強い株式の特徴をご紹介します。
- 資源関連銘柄:石油、石炭、鉱業など。資源価格の上昇に伴い、株価も上がる傾向にあります。
- 高配当銘柄:インフレ時には、配当金が増加する傾向にあります。
- 輸出関連銘柄:海外市場での需要が高まる場合、インフレ時に業績が上がる可能性があります。ただし、インフレだからと言って海外需要が高まるとは限らないため、注意が必要です。
資産防衛のためには、リスクに強い資産を選ぶことも大切ですが、やはり重要なのは分散させることです。どのように資産を組めばいいのか、ポートフォリオについて詳しくご紹介していきます。
分散投資のためのポートフォリオ
前述したように、ポートフォリオとは金融資産の組み合わせです。資産防衛のために重要な分散投資を行うには、どのようにポートフォリオを組めばいいのでしょうか。最適な割合は状況や年齢などによっても異なりますが、参考となる考えをご紹介していきます。
ポートフォリオの例
資産防衛には、特徴が異なる資産に分散して投資することが基本です。投資目標やリスク許容度によって理想的な配分は異なりますが、資産防衛を考えたときに、たとえば以下のような配分が考えられます。
- 株式:40%(国内株式20%・外国株式20%)
- 債券:20%(日本国債10%・外国国債10%)
- 不動産:10%
- 金:10%
- 預貯金:20%
上記のような資産配分は、正確には「アセット(資産)・アロケーション」と呼びます。それぞれの資産の、具体的な金融商品にまで細分化したものがポートフォリオです。
まずは資産全体の特徴を考えてアセット・アロケーションを組み、それぞれの株式や債券の特徴も考慮しながら、より詳細にポートフォリオを組むとよいでしょう。
ポートフォリオはご自身の考えや状況に合わせて作成するべきなので、参考となる組み方をご紹介していきます。
安全資産とリスク資産の割合を考える
ポートフォリオ(アセット・アロケーション)を組む場合、まずは現金に代表される安全資産と株式のようなリスク資産の割合を考えるとよいでしょう。
安全資産:預貯金、国債、金など
リスク資産:株式、社債、不動産、暗号資産など
参考になるのが、株式等リスク資産の割合を「100-年齢」にする方法です。たとえば30歳であれば、リスク資産の割合は「70%」になります。リスク資産の中でも、株式だけでなく社債や不動産などに分散するとさらに安心です。
そのほか、以下のような考え方もあります。
●生活防衛資金を預貯金で保有し、そのほかを投資に回す
生活防衛資金の目安は、半年~1年分程度です。そのほかの余剰資金を、株式や債券、金など特徴の異なる金融商品に投資します。
●安全資産とリスク資産を「50%対50%」にする
年齢や資産額に関係なく、半分ずつ保有する考え方です。深く考えるのが苦手な人に向いており、例としてあげたポートフォリオはこの考えを元にしています。
分散投資で重要なのは、特徴の異なる資産を組み合わせることです。安全資産の中でも、預貯金と金は違う特徴を持っていますし、株式と不動産もまた違います。複数の資産を組み合わせることで、さまざまなリスクに対応できるようになります。
外貨で通貨リスクを分散
外貨もまた、通貨リスクを分散できる資産です。為替リスクがあるため危険なのでは?と感じる人もいるかもしれませんが、資産を円だけで保有している場合、円の価値が下がれば資産も減ってしまいます。特定の通貨の価値変動リスクを抑えるには、ドルやユーロなど複数の外貨を持つのが効果的です。
また外貨投資とは、外貨預金だけではなく外貨建債券や外国株式なども含まれます。日本国内の株式や債券とは違う特徴があるため、リスク分散に有効です。また、金利が比較的高い傾向にあるため、効率的に資産を増やしたり為替差益を得られたりする可能性もあります。
ただし前述したように為替差損のリスクがあり、商品によっては為替手数料や管理費用などのコストが高いものもあるので、注意は必要です。
定期的なリバランスが重要
ポートフォリオは、一度決めたらそれで良いというわけではありません。常に市場の動向は変化します。それに伴い、定期的なリバランス(再調整)はとても重要です。
リバランスは、半年や1年に一度のように定期的に行う方法と、資産配分の状況を注視して行うほうほうがあります。たとえば、株式の比率が多くなりすぎた場合に調整したり、経済状況に合わせてコモディティ資産を増やしたりなどです。
自分のルールを決めて、定期的に見直すようにしましょう。
年齢に応じた見直しも
資産配分は、年齢に応じて見直しも必要です。若いうちはたとえ多少リスクが高くてもリカバリーする時間がありますが、老後はあまり余裕がありません。リスクが高い資産を多く持っているのは危険です。現金を含む、安全資産の割合を増やしていくとよいでしょう。
そのほか、結婚や出産、家の購入などのライフイベント時には大きな支出があります。そのときには、できるだけ流動性が高い資産を保有していると安心です。年齢やライフイベントに合わせて、資産の組み合わせを柔軟に見直していきましょう。
まとめ
インフレや円安、目まぐるしく変化する世界情勢に加え、税金・法制度の改正など、近年では多様なリスクが存在します。そのようなリスクに対応するには、資産を形成するだけでなく防衛する意識が必要です。
まずは資産状況を把握し、できるだけ分散投資を心掛けましょう。資産防衛には、株式だけでなく実物資産もおすすめです。あなたにあったポートフォリオを検討し、定期的に見直すことを習慣にしてみてください。
そのほか、節税の知識も役に立ちます。常に情報をアップデートし、資産防衛に役立ててくださいね。