PER・PBR・ROEの違いとは? 投資初心者でもわかる企業評価の基本指標

投資を行う際、良い銘柄を探すためには企業の業績や将来性を判断しなければなりません。そのときによく使われる指標が「PER」や「PBR」、そして「ROE」です。株価とともにこれらの指標を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。これらの指標はどのような意味があるのか、判断の目安となる数値や指標の使い方など、投資をする上で必ず知っておきたい基礎知識を、わかりやすく解説していきます。

・目次


PERとは

PERとは「Price Earnings Ratio」を省略したもので、株価収益率のことです。株価収益率とは、株式が1株当たりの純利益(EPS)の何倍で取引されているかを表しています。計算式は以下の通りです。

PER = 株価 ÷ 1株当たりの当期純利益(EPS)

※1株当たりの当期純利益(EPS) = 当期純利益 ÷ 発行済株式総数

たとえば、株価が4,500円でEPSが300円の場合、PERは15倍になります。

株価収益率から何がわかる?

PERは、企業が得た純利益に対して、株価がどれくらいの割合で設定されているのかがわかります。つまり、企業の利益に対して割安なのか、割高なのかを判断する指標です。株価は、今後の成長が期待されると高くなるため、将来的な成長性を判断するときにも役に立ちます。

つまりPERは企業の収益力や、企業の将来性や利益に市場がどれくらい期待を寄せているかがわかる指標と言えます。

判断の目安

PERの数値が高いほど割高、低いほど割安だと言われています。成長が期待される企業のPERは高くなりがちです。

判断基準は、一般的に15倍と言われています。PERが15倍以上だと割高、15倍未満だと割安の株式ということです。

しかしこの基準は業種によって異なります。特定の株式が割高(成長を期待できる)か、割安かを判断するには、同じ業種の平均PERや、その会社の過去のPERと比べなければなりません。

市場・業種ごとの目安

参考までに、東証の市場・業種ごとのPER平均値をご紹介しておきます。

<市場別・業種別PER>

 

プライム市場

スタンダード市場

グロース市場

全体平均

16.9

13.2

40.3

建設業

15.4

12.2

22.4

食料品

19.1

17.0

医薬品

20.5

13.9

情報・通信業

24.9

18.2

57.8

小売業

22.0

18.7

31.8

銀行業

13.5

60.2

不動産業

13.4

12.5

18.3

サービス業

18.5

15.4

25.7

※2025年5月のデータ

 ●   プライム市場
 東証最上位の市場。厳しい審査をクリアしており、信用力や流動性が高く、
 安定的な企業が上場している。

 ●  スタンダード市場
 中堅企業が上場している市場で、比較的規模が小さめ。
 プライム市場と比べると信用力や流動性がやや劣り、株価の変動も大きい。

 ●  グロース市場
 新興成長企業を中心に上場している市場で、将来的な成長への期待から
 株価は高め。ハイリスク・ハイリターンの傾向がある。

PERを見るときの注意点

PERの判断基準は基本的に15倍と言われていますが、上記でご紹介した通り、実際の数値は市場区分や業種によって大きく異なります。

たとえば情報・通信業のPERは他業種と比べると高めです。反対にPERが低めの業種もあるので、数値の判断をするには、同規模の同業他社やその企業の過去の数値などと比べましょう。

また、PERだけで企業分析ができるわけではありません。次にご紹介するPBRやROEなど、ほかの指標も確認しながら判断することが大切です。

たとえば純利益がマイナスの場合、計算上、PERもマイナスになります(実際にはPERは「算出不能」もしくは「非表示」になることが多いです)。PERが平均より低いと割安ではありますが、純利益がマイナスの場合は割安という判断にはなりません。ただし、純利益がマイナスになった理由が資本投資や広告宣伝費だった場合など、経営に問題があるわけではない場合は、この限りではありません。

このように、PERの数値だけでは判断できないことも多いので、複数の指標を見て判断しましょう。


PBRとは

PBRとは、株価が1株当たりの純資産の何倍かを表す指標で、「Price Book-value Ratio」=株価純資産倍率のことです。

PBR = 株価 ÷ 1株当たりの純資産(BPS)

※1株当たりの純資産(BPS) = 純資産(総資産-負債) ÷ 発行済株式総数

たとえば、株価が5,000円でBPSが4,000円の場合、PBRは1.25倍です。

1株当たりの資産価値がわかる

PBRはPERと同様、株価が割安か割高かを判断する指標です。PERは企業が1年間で得た利益に対する株価の倍率であるのに対し、PBRは純資産、つまり会社の資産価値に対して、株価が何倍なのかがわかります。

純資産は短期間では変動しにくい数値のため、PBRは企業の安定性を判断することが可能です。数値が高いほど、会社の安定性が高いと言われています。

また純資産は、仮に会社が解散した場合に株主に分配されるため、「解散資産」とも呼ばれます。一株あたりの純資産は、解散時に得られる一株当たりの金額です。

判断の目安

PBRの基本的な判断目安は「1倍」です。PBRが1倍以上だと割高、1倍未満だと割安だと判断される傾向にあります。

●  PBRが1倍 → 企業が解散したときの価値と、現在の株価が同等。
●  PBRが1倍未満 → 企業が解散したときの価値よりも、株価が割安。
●  PBRが1倍超 → 企業が解散したときの価値よりも、株価が割高。

たとえば、BPSが4,000円で株価が3,000円だとすると、PBRは0.75倍です。仮にこの企業が解散した場合、3,000円の株価が4,000円になるので、割安だと判断できます。

PBRが1倍超になるということは、市場が資産以上の価値を認めていることになり、今後の成長を期待できます。ただしPERと同様、業種によって平均PBRは異なるので、注意が必要です。

市場・業種ごとの目安

日本取引所グループが発表している、市場、業種ごとのPBRも参考までにご紹介しておきます。

<市場別・業種別PBR>

 

プライム市場

スタンダード市場

グロース市場

全体平均

1.2

0.8

3.2

建設業

1.2

0.7

2.2

食料品

1.2

1.2

4.3

医薬品

1.3

0.8

5.5

情報・通信業

2.4

1.7

3.8

小売業

1.9

1.3

2.8

銀行業

0.5

0.4

不動産業

1.6

0.9

2.7

サービス業

1.9

1.2

2.6

※2025年5月のデータ

PBRを見るときの注意点

上記からわかるように、PBRの数値もPERと同様、業種によって異なります。単純に1倍を判断基準にするのではなく、同規模の同業他社やその企業の過去の数値と比べてみてください。

特に、今後の成長が期待される企業は株価が割高で、PBRも高くなる傾向にあります。しかし金融業などの成熟した安定企業は資産と株価が見合う傾向が強く、PBRは相対的に低くなりがちです。

また、PBRが1倍未満の銘柄は割安だと言われることから、お買い得なのでは?と判断する人もいるかもしれません。確かにPBRが1倍未満の銘柄を割安で購入し、のちに株価が上がれば利益を得られます。しかしそのまま株価が上がらない可能性もあるため、安易に判断するのは危険です。

PBRはあくまでも一つの指標なので、ほかの指標や企業の資産状況なども鑑みて投資の判断をしましょう。


ROEとは

ROEとは自己資本利益率のことで、「Return on Equity」の略です。自己資本とは返済が不要な資本のことを指し、株主から出資してもらったお金も含むことから、ROEは株主資本利益率とも呼ばれます。

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

たとえば、当期純利益が1億円で自己資本が10億円だった場合、ROEは10%になります。

企業の経営効率がわかる

ROEは、自己資本を利用して、どれだけ効率的に経営を行っているかがわかる指標です。ROEが高いほど、自己資本を上手に活用しながら、利益を上げていると言えます。

たとえば、自己資本が同じという条件で、ROEが10%の会社と2%の会社を比べてみましょう。

A社:自己資本10億、当期純利益1億 → ROE10%
B社:自己資本10億、当期純利益2,000万円 → ROE2%

上記を見ると、ROEが高いA社の方が同じ自己資金で多くの利益を上げていることがわかります。

またROEと似た指標に、「ROA」があります。こちらは、「Return on Asset」の略で、総資産利益率です。

ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

ROAは、総資産に対する利益の割合です。総資産には、自己資産だけでなく、固定資産や流動資産、金融業者などに返済義務のあるお金(負債)なども含まれます。

ROAは、全ての資産を使って、どれだけ効率的に利益を上げているのかを表しています。ROEだけでなく、ROAも併せて確認することで、より正確に経営状態を把握できるでしょう。

判断の目安

一般的に、ROEは10%以上であれば、投資価値のある優良企業だと判断されることが多いです。ただし、業種によって平均値は異なります。

業種

ROE

合計

9.88

建設業

10.46

製造業

8.73

情報通信業

11.84

運輸業、郵便業

11.70

卸売業

9.93

小売業

10.49

不動産業、物品賃貸業

10.52

学術研究、専門・技術サービス業

7.90

宿泊業、飲食サービス業

22.00

生活慣例サービス業、娯楽業

8.02

サービス業(他に分類されないもの)

10.39

※令和5年度のデータ

出典:中小企業実態基本調査 令和6年速報(令和5年度決算実績) 速報 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

上記のデータは中小企業のものなので、企業規模によりまた数値は変わると考えられます。同業種、同規模の競合他社やその企業の過去のデータを比べると、より正確に経営状態を把握できるでしょう。

また、ROAは5%以上が目安と言われています。ただし、たとえROEやROAの数値が平均値以上でも、数字に偏りがある場合は注意が必要です。

ROEが高く、ROAが低い場合

自己資本に対しては利益率が高いのに、他人資本、つまり返済義務のある資金に対しては利益率が低いということは、大きな返済リスクを背負っている可能性があります。

もちろん、新規事業のために借り入れが増えたタイミングなどはROAが低くなることが考えられるので、一概に問題があるとは言えません。しかし将来的に問題なく返済できる負債なのか、倒産リスクはないのかなど、経営状態を詳しく確認すると安心です。

ROEが低く、ROAが高い

株主から調達した資金を、上手に活用できていない恐れがあります。自己資本が大きすぎて非効率的になっているということです。保守的な大企業に、このような傾向が見られることがあります。

このように、ROEやROAは単体で見るのではなく、合わせて確認したり、ほかの指標も確認したりすると、より正確に経営状態を把握できます。

PBRやPERとの関係

ROEが現在の「自己資産の稼ぐ力」を表しているとしたら、PBRは「資産に対する市場の評価」を表していると言えます。つまり稼ぐ力が強い=ROEが高くなると、市場評価であるPBRも高くなる傾向になります。

また、PBRとROE、PERの関係を表すものとして、有名な理論式もご紹介しておきます。3つの指標の関係性を簡易的に理解するのに役立ちます。

PBR ≒ ROE × PER

どうしてこのような式になるのかというと、PBRは「稼ぐ力」に「将来への期待値(=PER)」が掛け合わされているからです。現在の稼ぐ力は強くても、将来的な期待が低ければ、株価はなかなか上がりません。稼ぐ力が強いうえ、将来的な成長も見込まれるなら、当然株価は上がるでしょう。

<PBR、ROE、PERの関係の例>

ROE

PER

PBR(ROE×PER)

15%の場合

 15

 10

 5

 2.25

 1.5

 0.75

10%の場合

 15

 10

 5

 1.5

 1

 0.5

5%の場合

 15

 10

 5

 0.75

 0.5

 0.25

このように、ROEが高いほどPBRも高くなる傾向がわかります。しかしPERに関しては、ROEが高くても高くなるとは限りません。PERにはさまざまなリスク要因も含まれているため、業績が良くても何らかの理由で将来への期待値が上がらないこともあります。

このように、PERやPBR、ROEはそれぞれ影響しあっており、複数の指標を確認することで、より正確に企業の状況を理解できます。

また数値だけでなく、その数値がどのような意味を持つのかも併せて確認することで、より理解が深まるでしょう。


PERとPBRの活用方法

複数の指標やそれに付随した詳細を確認するほうがより正確に企業を理解できるとはいえ、すべての企業について調べるのはとても大変です。

そこでまずはPERやPBRを確認して、めぼしい企業を探してみてはいかがでしょうか。

【具体例で確認】PERとPBRを計算

PERやPBRを算出するには、「株価・当期純利益・発行済株式総数・純資産」が必要です。架空の企業のデータを例にして計算してみましょう。

【A社】
・株価:2,000円
・発行済株式総数:10万株
・当期純利益:1,000万円
・純資産:1億円

EPS=1,000万円÷10万株=100円

BPS=1億円÷10万株=1000円

PER=2,000÷100=20(倍)

PBR=2,000÷1,000=2(倍)

【B社】
・株価:3,000円
・発行済株式総数:50万株
・当期純利益:1億円
・純資産:12億円

EPS=1億円÷50万株=200円

BPS=12億円÷50万株=2,400円

PER=3,000÷200=15(倍)

PBR=3,000÷2,400=1.25(倍)

【C社】
・株価:1,000円
・発行済株式総数:40万株
・当期純利益:2,000万円
・純資産:4.8億円

EPS=2,000万円÷40万株=50円

BPS=4.8億円÷40万株=1,200円

PER=1,000÷50=20(倍)

PBR=1,000÷1,200=約0.83(倍)

バリュー株(割安株)やグロース株(成長株)を探すには

優良な銘柄としてよく言われるのが、「バリュー株=割安株」と「グロース株=成長株」です。

バリュー株とは、安定的な業績や企業規模の割に、株価が安く設定されている銘柄のことです。割安株とも呼ばれるこの銘柄は、株価が安定しており値下がりしにくく、配当益や株主優待が付いていることが多いなどのメリットがあります。市場からの評価が回復すれば、値上がり益も期待できるでしょう。

ただし、あまり大きな値上がり益は期待できません。また株価が回復するとは限らないため、いかに割安株を見極めるかが重要です。

株価が割安かどうかを見極めるには、PERやPBRの数値が役に立ちます。割安株の目安は以下の通りです。

<バリュー株(割安株)の目安>
PER=15倍未満
PBR=1倍未満

たとえば先ほどの例でいえば、「B社」はバリュー株の可能性があるかもしれません。PBRが1倍以上でPERが15倍ではありますが、それほど高い数値ではないので、調べてみる価値がありそうです。

ただし、これらの数値はあくまでも目安です。前述したように、PERやPBRは業界や企業規模によって平均値が異なるので、ライバル企業やその会社の過去の数値と比べてどうなのかという点を確認してみましょう。

また、単純に業績悪化などの理由で株価が下がっているような銘柄をつかまないためにも、財務状況や配当利回りなども確認して判断してみてください。

グロース株(成長株)は、今後の成長が見込まれるため株価が割高になりがちです。しかし早いうちにグロース株を手にできれば、大きな値上がり益を期待できます。

<グロース株(成長株)の目安>
PER=15倍以上
PBR=1倍以上

先ほどの例でいえば、「A社」の数値がグロース株に近いといえるでしょう。ただしこちらも、ライバル企業や過去の数値などと比べてどうなのか、必ず確認が必要です。

また、グロース株の場合はROEも判断材料の一つになります。ROEが10%以上、できれば15%以上あるとグロース株の可能性があるかもしれません。そのほか、成長率なども考慮して判断するとよいでしょう。

バリュー株とグロース株についてもっと詳しく知りたい場合は、以下の記事も確認してみてください。

「バリュー株・グロース株とは?定義や違い、見分け方に代表的な銘柄まで徹底解説」

活用するときの注意点

PERやPBR、ROEといった指標はとても役に立ちますが、万能ではありません。活用するときは以下の点にも注意してみてください。

複数の指標を活用する

何度か触れているように、企業の経営状況を判断するには複数の指標を確認しましょう。一つひとつの指標は、ある側面を表しているものなので、複数確認することで、全体像を把握できます。

たとえばPERが良くてもPBRが低ければ、「稼ぐ力が強くて成長が期待されているはずなのに、なぜ株価が割安なのだろう?」という疑問が生まれるかと思います。理由を探せば、そればポジティブな理由なのかネガティブな理由なのかがわかるはずです。

このとき、PERしか確認せず、ネガティブな理由があった場合、大きな損失を被る可能性もあるでしょう。

企業の経営状況を判断するときは、必ず複数の指標をみるようにしましょう。

指標以外の情報も確認する

データから割り出す指標は客観性に優れており、事実を数値に置き換えるため状況の把握や評価に役立ちます。しかし、数値に現れない部分もあります。

たとえば、新しい技術の開発や新事業の展開などポジティブなニュースがあれば、まだ数値として実績が現れていなくても、その企業の成長を見込めるかもしれません。

また社会情勢や経済情勢が企業に与える影響も大きいです。指標だけではなく、こうした情報にも注意を払っておくとよいでしょう。


まとめ

PERやPBR、ROEといった指標は、株価が割安なのか割高なのか、また企業の安定性や収益力、将来への期待値などを知るのにとても役立ちます。

いずれも判断基準の目安となる数値はありますが、業界や企業規模などによって平均値は異なるため、同規模の同業他社や、その企業の過去の数値などと比べてみるのが重要です。

また、どの指標も万能ではありません。投資する銘柄を探すときや企業の経営状況を知りたいときは、複数の指標や経営方針、企業動向なども確認し、判断しましょう。