【2026年】相続対策20選|初心者でも失敗しない方法と具体例・注意点をわかりやすく解説

相続対策は「まだ先の話」と思われがちですが、実際には早めに準備しておくことで大きな差が生まれる分野です。

相続対策を行うことは、相続税の負担を軽減するだけでなく、家族間のトラブルを防ぎ、円滑に資産を引き継ぐためにも重要といえます。

この記事では、相続の基本知識から生前贈与・不動産・生命保険などを活用する相続対策の具体的な方法、注意点、よくある失敗例までわかりやすく解説します。

これから相続対策を始めたい方や、すでに検討している方にも役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

・目次


相続税の基本知識

相続税とは、一定以上の財産を相続した際に課せられる税金のことをいいます。

相続税には基礎控除額があり、この金額を超えなければ相続税は発生しません。

相続税の基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。

  • 相続税の基礎控除額 = 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば、相続人が「妻と子ども2人」の合計3人の場合は、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となり、相続財産が4,800万円を超えなければ相続税はかかりません。

また、相続税率は累進課税となっており、法定相続分に応ずる取得金額に応じて税率や控除額が変化することが特徴となっています。

相続税の具体的な計算方法

相続税を計算する方法は少し複雑なため、仕組みをよく理解しておくことが大切です。

相続税のポイントとしては、遺産総額から控除を引いた残りの遺産総額に対して税率を掛けるのではなく、それぞれが法定相続分を相続したと仮定し、各人の相続額に対して税率を掛けて計算するという点です。

たとえば、子ども2人(長男・長女)がいる4人家族で父親が亡くなったとします。法定相続人は妻と子ども2人の計3人となるため、相続税の基礎控除額は「4,800万円」です。

遺産総額が1億だった場合、課税遺産総額は「1億-4,800万円=5,200万円」です。

この5,200万円を法定相続分で分けると以下のようになります。

  • 妻 → 法定相続分1/2 → 5,200万円×1/2=2,600万円
  • 長男 → 法定相続分1/4 → 5,200万円×1/4=1,300万円
  • 長女 → 法定相続分1/4 → 5,200万円×1/4=1,300万円

各人が相続した金額に対して、以下の税率をかけて相続税を算出します。

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

0

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

参考:No.4155 相続税の税率|国税庁

各人の相続税額は以下の通りです。

  • 妻 → 2,600万円×15%=390万円-50万円(控除額)=340万円
  • 長男 → 1,300万円×15%=195万円―50万円(控除額)=145万円
  • 長女 → 1,300万円×15%=195万円―50万円(控除額)=145万円

このように、支払う相続税の総額は630万円となります。(ただし、実際の相続税額は、配偶者の税額軽減や各種特例の適用により大きく変わるため、上記はあくまで基本的な計算例です。)

相続対策が必要な人の特徴

相続対策が必要な人の主な特徴は、以下のとおりです。

  • 財産が基礎控除を超えそうな人
  • 不動産を多く保有している人
  • 現金が少なく、かつ資産が不動産に偏っている人
  • 家族関係が複雑な人(再婚・不仲など)
  • 子どもがいない人
  • 相続人が少ない人
  • 事業をしている人・会社を経営している人
  • 認知症などの将来の判断力低下が心配な人
  • 特定の人に財産を多く残したい人

相続に対する悩みや希望は様々ですが、数ある相続対策の中から自分に合った方法を選択することで、希望通りの相続を実現することが可能になります。

まずは自分の財産が基礎控除を超えるかどうかを確認してみると良いでしょう。

それでは、それぞれの相続対策を詳しく解説します。


生前贈与を活用する相続対策6選

相続財産を減らすためには、生前に贈与する方法があります。

相続が発生する前に「生前贈与」として財産を渡すことで、課税対象となる相続財産を減らしていくことが可能です。

しかし高額な財産を一度に贈与すると贈与税が発生するため、税負担を抑えながら贈与することが大切です。

生前贈与を使う相続対策として、以下の7種類が挙げられます。

  1. 毎年110万円以下を暦年贈与する
  2. 年間110万円を超える贈与をあえて行う
  3. 相続時精算課税制度を利用する
  4. 住宅取得等資金贈与の特例を利用する
  5. 結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用する
  6. おしどり贈与の特例を利用する

それぞれ詳しく解説します。

生前贈与活用の相続対策①毎年110万円以下を暦年贈与する

生前贈与の中でも、将来の相続税負担を軽減するための有効な手段として広く利用されているのが「暦年贈与」です。

暦年贈与とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間(暦年)ごとに、一定額まで財産を贈与できる制度です。

具体的には、1年間に受け取った贈与の合計が、基礎控除額である110万円以下であれば、贈与税がかかりません。

この制度の最大の特徴は、贈与税の計算が「贈与者(あげる人)」ではなく、「受贈者(もらう人)」を基準に行われる点です。

1年間に受け取る金額が110万円以下であれば、贈与税はかからず税務署への申告も原則として不要となります。

一方、110万円以上の贈与を受けた場合、もらった人が税務署に申告する必要があります。

ただし、近年制度改正があり、相続が発生した時点からさかのぼって7年間のうちに行われた贈与は、相続財産とみなされることとなったため注意が必要です。

経過措置として、令和12年末までは令和6年1月1日以降の贈与が対象となります。また、追加された4年分に贈与されたうち、総額100万円までは控除され、相続財産には加算されないことも覚えておきましょう。

制度の仕組みと具体例

「贈与の年間110万円の基礎控除」は、「財産を受け取る人(受贈者)」ごとに設定されています。

例えば、父親が2人の子どもにそれぞれ毎年100万円ずつを贈与した場合、どちらの子どもにも贈与税はかかりません。

これを10年間続ければ、合計2,000万円の財産を無税で次世代に移転することができます。

節税効果とメリット

「年間110万円以下を贈与する」という方法の最大のメリットは、特別な手続きや申告が不要で、誰でも簡単に始められる点です。

長期間にわたってコツコツと贈与を続けることで、将来の相続財産を確実に減らすことができ、結果として相続税の負担を大幅に減らせます。

また、贈与する相手は親族に限らず「孫や子の配偶者」など、誰でも選べるため柔軟な財産移転が可能になります。

注意点や失敗例

毎年同じ時期に同じ金額を贈与し続けると、最初からまとまった金額を分割して贈与しただけ(定期金給付契約)とみなされて、全額に対して贈与税が課される恐れがあります。

これを防ぐためには、毎年贈与契約書を作成し、銀行振り込みなど記録が残る方法で贈与することが重要です。

また、贈与中に相続が発生した場合、相続が発生した時点からさかのぼって7年間のうちに行われた贈与は相続財産とみなされてしまうため注意が必要です。

向いている人

「年間110万円以下の贈与」という方法が向いている人は、以下のとおりです。

  • 比較的若い世代の人
  • 時間をかけて少しずつ財産を移転したい人
  • 複数の子どもや孫に平等に財産を分け与えたい人

暦年贈与は早めに始めることが重要なため、計画的に進めるようにしましょう。

生前贈与活用の相続対策②年間110万円を超える贈与を行う

生前贈与の方法として、「あえて110万円の基礎控除額を超える贈与を行い、少額の贈与税を納めながら財産を効率的に移転する」という方法もあります。

以下は、18歳以上の者が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産にかかる贈与税の計算に使用する「特例税率」です。

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1,000万円以下

30%

90万円

1,500万円以下

40%

190万円

3,000万円以下

45%

265万円

4,500万円以下

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

出典:特例税率(国税庁)

一方、兄弟間や夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年の場合は、以下の「一般税率」を使用します。

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

300万円以下

15%

10万円

400万円以下

20%

25万円

600万円以下

30%

65万円

1,000万円以下

40%

125万円

1,500万円以下

45%

175万円

3,000万円以下

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

税率を比較するとわかるように、直系尊属から18歳以上の子どもに贈与するケースでは、税率が低く抑えられていることがわかります。

制度の仕組みと具体例

例えば、父親が18歳以上の子どもに毎年310万円を贈与した場合を考えてみましょう。

310万円から基礎控除額の110万円を差し引いた残額である「200万円」に対して贈与税がかかります。

課税対象額が200万円の場合、税率は10%となるため、贈与税は20万円です。このケースでは、310万円贈与され、20万円の税金を支払うため、手元に残る額は290万円となります。

この場合、実質的な税負担は約6.4%となるため、比較的低い税率で効率よく財産の移転が可能となります。

節税効果とメリット

相続財産が多く、将来の相続税率が30%や40%など非常に高くなることが想定される場合は、生前に低い税率で贈与税を支払ってでも財産を減らしておいた方が、トータルでの税負担を軽くできるというメリットがあります。

年間310万円を贈与した場合、年間110万円以下の贈与よりもスピーディに多額の財産を移転できるため、相続財産が多く、かつ相続までの期間が比較的短いと予想される場合に有効な手段となります。

注意点

毎年効率よく財産移転ができる方法ですが、もしも相続が発生した場合は、相続発生から7年間さかのぼって相続税が加算されてしまう点に注意が必要です(経過措置あり)。

また、贈与税の税率は相続税率よりも高くなっているため、場合によっては相続税よりも高い税金を支払うことになりかねません。

現在の財産状況から将来の相続税率を正確にシミュレーションし、それよりも低い税率に収まる範囲で贈与額を決めることが大切です。

また、毎年贈与税の申告と納税をする必要があります。手間がかかりますが、確実に行うようにしましょう。

向いている人

生前贈与の方法として、「あえて基礎控除額の110万円を超えた額を贈与する」という方法が向いている人は、以下のとおりです。

  • 数億円規模の多額の財産を保有している人
  • 将来の相続税率が高くなることが予想される資産家
  • 高齢などの理由で長期間の暦年贈与を行う時間的な余裕がない人

相続が発生すると予想されるまでの年数や、年間110万円以下の暦年贈与を行う場合などを考慮してシミュレーションし、最も良いと思われる方法を選ぶようにしましょう。

生前贈与活用の相続対策③相続時精算課税制度を利用する

相続時精算課税制度とは、「贈与時は税金をかけず、最終的に相続時にまとめて精算する制度」です。

60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に、一度に多額の贈与をしても、贈与税をかけずに先送りできます。

ただし、その代わりに将来の相続時に、その贈与分の財産も含めて相続税を計算されます。

いったん相続時精算課税制度を選択すると、相続が発生するまで、累計2,500万円までの贈与分は将来に先送りできるため、財産を受け取ったタイミングで贈与税を支払う必要がないことがメリットです。

ただし、贈与者が亡くなって相続が発生した際には、それまで贈与された財産は相続時に相続財産として加算され、基礎控除額を超えている分について相続税が課税されます。

何かとお金が必要な現役世代が親世代から贈与を受けて使えるお金が増えることは、大きなメリットといえます。

以前は、相続時精算課税制度を選択すると、年間110万円の贈与の基礎控除枠は使えなくなるというルールでした。

しかし制度が改正され、令和6年からは相続時精算課税制度に年間110万円までの基礎控除が加えられました。つまり相続時精算課税制度を利用した場合であっても、年間110万円分の贈与は非課税となります。

制度の仕組みと具体例

相続時精算課税制度を利用する場合の例は、以下の図のとおりです。

相続時精算課税制度を利用すると、相続が発生するまで累計2,500万円まで非課税で贈与を受けられます。

相続が発生するまでの期間、年間110万円の贈与基礎控除額も適用できます。

そのため、1年で500万円贈与を受けた場合、控除を適用した後の実質的な贈与額は390万円となります。

将来相続が発生した際は、390万円×3=1,170万円が相続課税財産に加えられます。

相続時精算課税制度を利用したい場合は、初めて贈与を受けた年の翌年3月15日までに、税務署に届け出ましょう。

節税効果とメリット

この生前贈与方法のメリットは、一度に多額の財産を贈与税なしで次世代に渡せることです。

例えば、収益を生むアパートなどを早期に贈与すれば、その後の家賃収入は子どものものになり、親の財産が増えることを防げます。

また、将来相続が発生した際は「贈与時の評価額で相続税が計算される」ため、将来値上がりが期待できる不動産や株式などを贈与することで、大きな節税効果を得られます。

注意点や失敗例

相続時精算課税制度の注意点としては、相続時の財産の評価は、贈与を受けた段階の価値で行われるということです。

例えば、3,000万円の価値がある不動産を贈与されたが、相続時には、その不動産の価値が2,000万円に下がってしまっている場合を考えてみましょう。

このようなケースでは、相続のタイミングでの価値は「2,000万円」であるにも関わらず、贈与時の「3,000万円」という評価額で相続税が計算されることになるため、かえって税負担が増える「逆転現象」が起こるリスクもあります。

向いている人

相続時精算課税制度が向いている人は、以下のとおりです。

  • 将来値上がりしそうな財産(自社株や都市部のマンション・開発予定地の土地など)を持っている人
  • 賃貸不動産などの収益物件を早めに子どもに引き継がせたい人
  • 親が亡くなる前に子に財産を渡し、活用してもらいたい人

大きな資産を持っている人だけでなく「そもそも相続税がかからないくらいの財産しかないが、自分の死後ではなく今贈与して使ってもらいたい」と考える人にも適している制度といえます。

生前贈与活用の相続対策④住宅取得等資金贈与の特例を利用する(令和8年12月31日まで)

生前贈与の手段の一つである「住宅取得等資金贈与の特例」とは、父母や祖父母などの直系尊属から、マイホームの新築や取得・増改築などの資金を贈与された場合、一定の金額まで贈与税が非課税になる制度です。

非課税となる限度額は、取得する住宅が「省エネ等住宅」の場合は1,000万円、それ以外の一般住宅の場合は500万円となっています。

今まで説明してきたような「暦年贈与の基礎控除110万円」や「相続時精算課税制度」と併用することも可能です。

この住宅取得等資金贈与の非課税特例は、令和8年12月31日までの贈与が対象ですが、場合によっては延長されることもあります。

節税効果とメリット

「住宅取得等資金贈与の特例」のメリットは、以下の通りです。

  • 非課税で確実に財産を移転できる
  • 土地の先行取得資金も対象である

この「住宅取得等資金贈与の特例」のメリットは、子どもや孫が家を建てるという資金需要のタイミングに合わせて、まとまった金額を非課税で確実に渡せることです。

親の財産を大きく減らせるため、将来の相続税対策として非常に有効となります。

また、暦年贈与の場合、相続が発生すると「暦年贈与を7年間さかのぼって相続財産とする」というように、贈与した分も最終的に相続財産と見なされるケースがあります。

一方、この「住宅取得等資金贈与の特例」で贈与した資金に関しては、さかのぼっての相続財産に加えられる「持ち戻し(相続財産への加算)」の原則対象外です。

そのため、確実に非課税で財産を移転できるということが大きなメリットです。

この住宅取得等資金贈与の非課税特例は、令和8年12月31日までの贈与が対象で、暦年贈与や相続時精算課税制度とも併用できます。

ただし贈与を受けた翌年の3月15日までに引渡し等を済ませる必要があるので、注意してください。

注意点や失敗例

この特例では、受贈者(財産を受け取る側)に以下のように厳しい要件が定められているため、注意が必要です。

  • 直系尊属(父母や祖父母)からの贈与に限る
  • 受贈者は18歳以上
  • 受贈者の合計所得金額が2,000万円以下
  • 自分が住むための住宅であること
  • 床面積が原則50平米以上
  • 贈与された資金は住宅取得に全額使うこと
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し居住すること
  • 確定申告をすること

この特例を使う場合は、必ず税務署への申告手続きが必要です。申告を忘れると特例が適用されず、多額の贈与税が課されてしまうため注意しましょう。

向いている人

住宅取得等資金贈与の特例の利用が向いている人は、以下のとおりです。

  • 子や孫がマイホームの購入や建築を検討している人
  • 将来の相続財産を確実に減らしたい人

この制度の期限は令和8年12月31日までですが、延長される可能性があるため、こまめに情報を確認するようにしてください。

生前贈与活用の相続対策⑤結婚・子育て資金の一括贈与の特例を利用する(令和9年3月31日まで)

この「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」では、父母や祖父母などの直系尊属から18歳以上50歳未満の子や孫へ、結婚や子育てのための資金を一括して贈与した場合、受贈者(贈与によって財産を受け取る人)1人につき最大1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。

この制度は、令和9年3月31日までの間に贈与された分までが適用されます。

この制度を利用する場合は、金融機関で専用の口座を開設しなければならず、目的以外には使用することができません。

また、受贈者が50歳に達したり贈与者が亡くなったりした時点で余っている預金は、贈与税や相続税の対象になります。

節税効果とメリット

若い世代にとって経済的負担の大きい結婚や出産・子育てのタイミングで、親や祖父母から無税で手厚い金銭的サポートを受けられることがメリットです。

贈与する側にとっても、まとまった財産を早期に移転できるため、相続税の軽減につながります。

領収書の提出が義務付けられているため、目的外の浪費を防ぐことができる点も安心です。

注意点

この制度では、信託受益権や金銭を取得した日の属する年の前年分の合計所得金額が、1,000万円を超える場合、この非課税制度の適用を受けることができません。

また、受贈者が50歳になった時点で、使いきれていない資金があった場合、その残額に贈与税がかかります。

加えて、贈与者が亡くなった時点で口座に残高がある場合は、その残額は相続財産に加算されて相続税の対象となります。

結婚に必要な資金の非課税枠は300万円までと決められていますが、指輪の購入や家具家電の購入など対象にならない費用もあるので注意しましょう。

これと似た制度として「教育資金の一括贈与の特例」がありましたが、期限が延長されず、令和8年3月31日で終了しています。

この制度もいつまで利用できるかわからないため、情報をこまめに確認するようにしましょう。

向いている人

この制度が向いている人は、以下のとおりです。

  • 将来相続税がかかる可能性が高い人
  • 子や孫の経済的な不安を取り除いてあげたい人
  • まとまった資金を一度に渡したい人
  • 若い世代に早めに資産を移したい人

相続対策をしつつ、若い世代のライフイベントを支援したい人に、この制度は向いているといえます。

生前贈与活用の相続対策⑥おしどり贈与の特例を利用する

生前贈与における「おしどり贈与の特例」とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産(マイホーム)や、それを取得するための資金を贈与した場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円までの贈与税が非課税になる制度です。

節税効果とメリット

例えば、夫名義の自宅の土地や建物の持ち分(2,000万円相当)を妻に贈与しても、贈与税はかかりません。

この「おしどり贈与の特例」のメリットは、長年連れ添った配偶者に対して、住み慣れた自宅を無税で確実に残してあげられることです。

また、この特例を使って贈与された財産は、相続開始前一定期間の持ち戻し(生前贈与分が相続財産に加算されること)の対象外です。

そのため、相続直前の贈与であっても確実に財産を移転でき、相続財産を減らすことができます。

注意点

この特例を使うと、「贈与の基礎控除の110万円」と「特例控除の2,000万円」を合わせた2,100万円までは贈与税はかかりません。

ただし、不動産の名義変更に伴う登録免許税や不動産取得税が数十万円単位で発生するため注意が必要です。

一方、相続で取得した場合は、不動産取得税はかからず、登録免許税も特別に安くなるため、「相続まで待った方が費用が安かった」という失敗談も少なくありません。

相続まで待つか、特例を使うかは慎重に検討して決めるようにしましょう。

また、同じ配偶者からの贈与については、この特例は一度しか使えないことも覚えておきましょう。

向いている人

おしどり贈与の特例が向いている人は、以下のとおりです。

  • 自分の死後、配偶者が自宅を追い出されるのを防ぎたい人
  • 配偶者が相続争いに巻き込まれないようにしたい人
  • 配偶者に確実に住まいを確保してあげたい人

配偶者に安心を与えたいという人は、前向きに検討すると良いでしょう。

暦年贈与の場合、相続開始時から3~7年前の贈与分は相続財産に加算されるとお伝えしましたが、これは「推定相続人」の場合です。推定相続人とは、法定相続人になると推定される人のことなので、基本的に孫は対象ではありません。

被相続人の子どもが健在であれば孫は法定相続人ではないため、相続開始3~7年前に110万円の暦年贈与を行っていたとしても、相続財産の対象にはならないということです。

ただし、「遺言書で相続人に指定されている」「相続財産として保険金を受け取った」「祖父母の養子になっており法定相続人である」などの場合は、暦年贈与分も相続財産になります。

孫以外でも、ひ孫や子どもの配偶者、任意の第三者などに対して贈与する場合も同じです。多くの人に財産を分けたい場合は検討してみてはいかがでしょうか。


不動産で相続税を下げられる基本的な仕組み

不動産を活用した相続対策もよく利用されており、主なメリットは以下のとおりです。

  • 現金を不動産にすることで、相続税評価額を下げられる
  • 賃貸物件にすると評価額をさらに下げられる

現金を不動産に置き換えることで得られる節税効果

現金を不動産に置き換えて節税することは、よく用いられる方法です。

たとえば現金で1億円持っていた場合、相続税評価額はそのままの1億円です。

しかし、土地の相続税評価額は、一般的に公示地価の約80%程度で算出される路線価を基準に評価されるため、実勢価格よりも低くなる傾向があります。

例えば、1億円で購入した土地の相続税評価額は約8,000万円となります。

また、建物は固定資産税評価額で評価され、一般的に建築費の50~70%程度になることが多いとされています。

このように、現金を土地や建物に置き換えることで、相続財産の評価額を大きく下げることができます。加えて、賃貸物件の場合はさらに、評価額を下げることが可能です。

このように、さまざまな方法で不動産を活用することで、相続税の負担を軽減できます。

ここでは、不動産を活用した相続対策について、主なものを解説します。


不動産を活用する相続対策5選

不動産を活用する相続対策としては、以下の5つがあります。

  1. 小規模宅地等の特例を利用する
  2. 配偶者居住権を利用する
  3. ワンルームマンションを購入する
  4. 賃貸不動産を1棟建築・購入する
  5. 地積規模の大きな宅地で評価を減らす

不動産活用の相続対策①小規模宅地等の特例を利用する

小規模宅地等の特例とは、亡くなった人(被相続人)が自宅や事業、貸付事業に使っていた土地を相続する際、一定の要件を満たせばその土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。

例えば、特例を利用すると住んでいた宅地の場合は330平方メートルまでの部分について、80%減額されるため、大幅な節税になります。

ただし特例が適用されるのは土地だけで、家屋は対象にならないため注意が必要です。

例えば、330平方メートル以内で評価額が1億円の土地の場合(330平方メートル以内)、 1億円-(1億円×80%)=2,000万円の評価額となり、相続税の負担軽減が期待できます。

ただし、自宅の宅地と事業用の宅地では以下のように減額率は異なります。

土地の種類

限度面積

減額割合

 住んでいた土地

 330平方メートル

 80%

 事業をしていた土地

 400平方メートル

 80%

 貸していた土地

 200平方メートル

 50%

特例を利用するにはさまざまな条件があるので、事前によく確認しましょう。

節税効果やメリット

この「小規模宅地等の特例」の最大のポイントは、評価額の減額割合が80%(賃貸事業用は50%)ととても大きいことです。

都市部など地価が高い地域に自宅がある場合、土地の評価額だけで基礎控除額を超えてしまうケースが少なくありません。

しかし、この特例を適用できれば相続税をゼロにしたり、あるいは大幅に抑えたりすることが可能です。

配偶者は要件が大幅に緩和されており、適用されやすくなっています。一方、子どもが相続する場合は「同居していること」や「持ち家がないこと(家なき子特例)」などの要件を満たす必要があります。

注意点

小規模宅地等の特例を受けるためには、相続税の申告期限(相続開始から10カ月以内)までに遺産分割が完了している必要があります。

もし相続人同士で揉めるなどして遺産分割協議がまとまらない場合、期限までに特例を適用した申告ができないため、いったんは高い税金を納めなければならなくなります。

(ただし、申請をすることで後日取り戻すことは可能です)

また、適用要件が複雑なため、「自己判断で適用できると思い込んでいたが、実際には要件を満たしていなかった」というケースも多いため、慎重に判断することが大切です。

特例の対象になるのは、主に以下の人です。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人と同居していた親族

被相続人が所有しているものの住んではいない不動産に、生計を一にする親族が住んでおり、その親族が相続する場合も特例の対象となります。

例えば親が所有する不動産(自宅以外)に、仕送りを受けている子どもが住んでおり、そのまま相続するケースなどが挙げられます。

また、小規模宅地等の特例を適用した結果、相続税がゼロになる場合であっても必ず相続税申告書の提出が必要です。

申告を忘れると特例が認められず、本来の評価額で計算された多額の相続税とペナルティ(無申告加算税など)が課される場合があります。

また、二世帯住宅の場合、建物の登記が「区分所有登記」になっていると、親と同居しているとみなされずに特例が使えません。

生前に「共有登記」にしておくなどの対策を行っておくようにしましょう。

不動産活用の相続対策②配偶者居住権を利用する

配偶者居住権とは、令和2年4月1日より施行された、比較的新しい制度です。

夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に亡くなるまで一定の期間住み続けられます。

配偶者居住権が成立するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者であること
  • 配偶者が、亡くなった人が所有していた建物に、亡くなったときに居住していたこと
  • 遺産分割・遺贈・死因贈与・家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと

この制度では、自宅の評価額を「居住権」と「所有権」に分割できることがポイントです。

例えば、夫が亡くなり、自宅(評価額3,000万円と預貯金3,000万円)を妻と子ども1人で分ける場合、従来は妻が自宅を相続すると、預貯金をもらえなくなる可能性がありました。

しかし、自宅の権利を「配偶者居住権(例:1,500万円)」と「負担付所有権(例:1,500万円)に分け、

  • 妻:居住権と預貯金1,500万円
  • 子ども:所有権と預貯金1,500万円

という形で分けることで、妻は住まいと生活費の両方を確保できます。

節税効果とメリット

配偶者居住権を設定して、自宅の評価額を「居住権」と「所有権」に分けることで、将来の二次相続(将来、妻が亡くなった際の相続)における節税効果も期待できます。

夫が亡くなった際に配偶者居住権を設定し、「負担付所有権」として低い評価額で自宅を相続させておけば、二次相続時には課税負担を抑えつつ財産を子どもに移転できます。

注意点

配偶者居住権はあくまで「住む権利」のため、配偶者が自由に自宅を売却したり、無断で他人に貸し出したりすることはできません。

また、将来配偶者が老人ホームに入居するための資金が必要になったとしても、自宅を売却して費用を捻出することが難しくなります。

加えて、建物の固定資産税などの負担割合について、所有者である子どもとの間でトラブルになるケースもあるため、よく話し合って決めることが大切です。

不動産活用の相続対策③ワンルームマンションを購入する

現金や預貯金をワンルームマンションなどの不動産に変えることで、相続税評価額を引き下げる対策です。

また、不動産を購入するだけでなく、その部屋をさらに貸し出すことで、より相続税の節税が可能になります。

例えば、2,000万円の投資用ワンルームマンションを購入し、他人に貸し出した場合の評価方法は、以下のとおりです。

  • 建物の評価額は、固定資産税評価額(時価の約7割前後)となる
  • 貸家建付地や貸家としての評価減が適用され、さらに評価額が下がる

「不動産を購入する」「購入した不動産を貸す」という2つのことをした結果、相続税評価額が現金の3分の1〜4分の1程度になるケースもあります(条件による)。

節税効果とメリット

不動産を利用すると、以下のような大きなダブルの節税効果が得られます。

  • 現金を不動産に換えることによる「評価額の圧縮効果」
  • 他人に貸し出すことによる「貸家・貸家建付地としての評価減」

さらに、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)を適用できれば、土地の評価額をさらに最大50%減らせるため、節税効果はより一層高まります。

また、購入資金を銀行からの借入金でまかなった場合、借入金の残高は-の財産として相続財産から差し引けるため、さらに節税につながるというメリットもあります。

デメリットや注意点

相続対策として不動産を購入した場合、不動産投資としての以下のようなリスクやデメリットがあります。

  • 空室リスク
  • 管理費などの費用がかかる
  • 金融機関への返済が負担になる
  • 不動産はすぐに現金化できない
  • 修繕費が高騰する
  • 将来の資産価値が下がるリスク

例えば、空室が続けば家賃収入が入らないだけではなく、管理費や修繕積立金・固定資産税などの持ち出し費用が発生し、かえって資産を減らしてしまう「負の財産」になってしまう可能性があります。

加えて、家賃収入がないと貯蓄などを切り崩してローンを返済する必要があるため、一気にキャッシュフローが悪化してしまうというデメリットもあります。

さらに、建物の老朽化に伴う修繕リスクや、将来の資産価値が下落するリスクも考慮する必要があるため、相続税対策としての不動産購入は慎重に検討するようにしましょう。

不動産活用の相続対策④賃貸不動産を1棟建築・購入する

不動産活用の相続対策の選択肢として、「所有している遊休地に賃貸アパートやマンションを1棟まるごと建築する」もしくは「現金や借入金で1棟丸ごと購入する」という方法があります。

例えば、更地(評価額5,000万円)を所有しており、そこに1億円の借入金で賃貸アパートを建築したとします。

建物(建築費1億円)の評価額は、固定資産税評価額(約6,000万円~7,000万円)となり、さらに貸家としての評価減(約3割減)が適用されるため、約4,500万円~5,000万円になります。

更地は「貸家建付地」となり評価額が約2割下がるため、4,000万円ほどの評価になります。

このように、土地と建物の評価額が合計1億5,000万円だったところ、評価額を約8,500万円~9,000万円まで圧縮することが可能です。

加えて、借入金1億円は-の財産として全額控除できるため、全体の相続財産評価額を大幅に引き下げることが可能となっています。

節税効果とメリット

この相続対策では、以下の3つのメリットがあります。

  • 土地の評価を減らせる
  • 建物の評価を減らせる
  • 借入金分を相続財産から控除できる

このように、3つの効果が組み合わさるため、大きな節税効果が期待できます。

また、節税だけでなく、毎月の家賃収入という新たなキャッシュフローを生み出せる点も、大きな魅力となっています。

デメリットや注意点

この相続対策はメリットが大きい反面、以下のようなデメリットやリスクもあります。

  • 多額の借入金を抱えることになる
  • 金利上昇局面では、金融機関への返済負担が大きくなる
  • 建物の老朽化に伴い、将来多額の修繕費用が発生する可能性がある
  • 資産価値が将来下落する可能性がある
  • すぐに現金化できない

空室が続けば家賃収入が入らないだけでなく、管理費や修繕積立金・固定資産税などの持ち出しが発生し、かえって資産を減らしてしまうリスクがあります。

また、現金に比べて流動性が低いため、相続税の納税資金が必要になった際にすぐに売却して現金化することが難しいという側面もあります。

小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)については、相続開始3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等には適用できないという制限が設けられています(ただし、事業的規模を除く)。

そのため、相続直前に慌てて賃貸アパートを建築しても、特例が使えずに十分な節税効果が得られないことがあります。

また、家賃収入によって被相続人の現金(相続財産)が増加していくため、生前贈与を組み合わせて現金を減らす対策も合わせて検討するようにしましょう。

不動産活用の相続対策⑤地積規模の大きな宅地で評価を減らす

三大都市圏で500平方メートル以上、それ以外の地域では1,000平方メートル以上の広大な土地(地積規模の大きな宅地)を相続する場合、一定の要件を満たせばその土地の評価額を大幅に減らせるという制度があります。

節税効果とメリット

このような大きな宅地の場合、通常の路線価方式などで計算した評価額から、面積に応じて20~30%程度、最大で半分近くまで評価額を引き下げることができる場合があります。

広大な土地を所有している地主や農家などにとって、相続税負担を大きく軽減できる可能性がある特例といえます。また、小規模宅地等の特例と併用することも可能です。

デメリットや注意点

この制度には、「工業専用地域に所在しないこと」「指定容積率が400%未満であること(東京都の特別区は300%未満であること)」など、適用要件が厳格に定められており、自己判断は危険です。

後日税務調査で否認されると、多額の追徴課税を受けるリスクがあります。

この制度を利用する場合は、不動産評価に精通した税理士や不動産鑑定士などの専門家に依頼するようにしましょう。


生命保険を活用する2つの相続対策を紹介

相続対策では、生命保険を活用する方法もありますので紹介します。

生命保険活用の相続対策①死亡保険の非課税枠を利用する

生命保険の死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。

ただし、残された家族の生活保障という生命保険の重要な役割を考慮し、一定の金額までは相続税がかからない「非課税枠」が設けられています。

この非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で計算されます。

たとえば、法定相続人が「配偶者と子ども2人の合計3人」の場合は、非課税枠は「500万円×3人=1,500万円」となり、1,500万円までの死亡保険金には税金がかかりません。

もしも被相続人が2,000万円の生命保険を掛けていた場合は、非課税枠の1,500万円を差し引いた残りの500万円だけが、相続税の課税対象となる仕組みです。

節税効果とメリット

生命保険を利用する最大のメリットは、非課税枠を使うことで確実に相続財産の評価額を減らせる点にあります。

銀行口座にある1,500万円をそのまま相続すれば、1,500万円全額が課税対象となります。

一方、生命保険に加入して死亡保険金として1,500万円を受け取ることで、全額非課税で受け取ることが可能です。

生命保険に関しては、毎月保険料を支払う方法や、1,500万円をそのまま「一時払いの終身保険」に置き換えるという方法もあります。さまざまな商品があるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。

また、死亡保険金は遺産分割協議の対象外となるため、受取人に指定された人は単独で手続きができます。

手続き後数日で保険金を受け取れるため、葬儀費用や納税資金などに迅速に活用できます。

何らかの事情で相続放棄をした場合でも、非課税枠は使えないものの保険金を受け取ることは可能となっています。

デメリットや注意点

生命保険を活用した対策には、以下のようにいくつかデメリットも存在します。

  • 年齢や健康状態によってはそもそも生命保険に加入できない
  • 高齢になってから加入すると保険料が高額になる
  • 早期解約すると元本割れのリスクがある

生命保険は、健康状態や年齢によってはそもそも加入できない場合があります。また、高齢になってから加入すると保険料が割高になってしまうため、比較的若く、健康なうちに加入しておくことが大切です。

また、加入から一定期間内に解約した場合、解約返戻金が払込保険料を下回る「元本割れ」が起こる可能性があります。

終身保険を検討する場合は、長期契約を前提に加入するようにしましょう。

契約形態や名義などの注意点

生命保険の非課税枠を適用するためには、契約形態(契約者・被保険者・受取人の関係)に細心の注意を払う必要があります。

非課税枠が使えるのは、以下の形態となっています。

契約者(保険料負担者)

被保険者

受取人

被相続人

被相続人

相続人

例えば、契約者が妻、被保険者が夫、受取人が妻の場合は、夫が亡くなって妻が受け取る保険金は「所得税・住民税」の対象となり、非課税枠は使えません。

また、受取人が相続人ではなく、孫などの「法定相続人以外」の場合でも、非課税枠の適用はないため注意しましょう。

生命保険活用の相続対策②生命保険を利用した生前贈与を行う

生命保険を利用した生前贈与とは、親が子どもに現金を贈与し、子どもがその現金を原資として自分自身を契約者とする生命保険に加入するという方法です。

まず、親が子どもに対して毎年110万円(暦年贈与の基礎控除額)の現金を贈与します。

子どもは、自分が「契約者」および「受取人」、親を「被保険者」とする生命保険契約を結び、保険料は贈与された現金を使って支払います。

親が亡くなった際は、子どもは死亡保険金を受け取りますが、この保険金は子ども自身が保険料を負担していたことになります。

そのため、保険金から払い込み保険料を差し引いた額が「所得税(一時所得)」の対象となります。

計算式は、以下のとおりです。

  • 一時所得=受取保険金−払込保険料 − 50万円

一時所得には50万円の特別控除があり、さらにその残額の2分の1だけが課税対象となるため、税負担を大幅に抑えることが可能です。

節税効果とメリット

この手法の最大のメリットは、親の財産を確実に減らしながら子どもに多額の現金を残せるという点です。

毎年110万円以下の贈与であれば贈与税はかからず、親の相続財産を少しずつ圧縮できます。そして、親の死亡時には、子どもは払い込んだ保険料以上のまとまった保険金を受け取れます。

受け取った保険金は所得税の対象となりますが、前述のとおり一時所得の計算方法は通常よりも有利に設定されているため、富裕層にとっては大きな節税効果があります。

子どもが受け取った保険金は、相続税を支払うための貴重な納税資金としてそのまま活用できるため、不動産などの換金しにくい財産が多いケースでは、特に有効な対策となります。

デメリットや注意点

終身保険の払い込みは最短で10年が一般的です。そのため、この相続対策を行う場合は一定期間継続して贈与を行う必要があります。

途中で親の資金繰りが悪化すると、贈与を続けられなくなる場合があるため注意が必要です。

また、子どもが贈与されたお金を保険料の支払いに回さず、生活費や遊興費として使い込んでしまうリスクも考えられるため、こまめに意思疎通しながら進めるようにしましょう。

また、生前贈与をする際は、「名義預金」や「親が実質的な契約者である」とみなされないよう、厳格な手続きを踏むことが非常に重要です。

毎年必ず贈与契約書を作成し、親の口座から子どもの口座に銀行振込で資金を移動させて証拠を残す必要があります。加えて、保険料の引き落とし口座も、必ず子ども名義の口座に設定する必要があります。

もしも親の口座から直接保険料が引き落とされていたり、子どもが贈与の事実を知らなかったりした場合、親の財産(みなし相続財産)として相続税が課税されてしまう恐れがあるため、注意しましょう。


制度や仕組みを利用した相続対策6選

生前贈与や不動産・生命保険を利用した方法の他にも、相続対策に活用できる方法があります。

ここでは、制度や仕組みを利用して行う6つの相続対策を解説します。

①家族信託を利用する

家族信託とは、自分の財産(預貯金や不動産など)の管理や処分を、信頼できる家族に託す仕組みです。

この制度の最大のメリットは、事前に家族信託を設定しておけば、親が認知症などで判断能力を失った後に、資産が凍結されるのを防げる点にあります。

通常、親が認知症になると親名義の銀行口座からお金を引き出したり、親名義の不動産を売却したりすることができなくなります。

しかし、元気なうちに家族信託を組成しておけば、子どもが契約内容に従って不動産を売却して介護費用に充てたり、賃貸アパートの管理や修繕を行ったりすることが可能になります。

また、家族信託は「遺言」としての機能も持ち合わせています。

自分が亡くなった後の財産の承継先をあらかじめ指定するだけでなく、「自分が死んだら妻に、妻が死んだら長男に」というような、何代にもわたる連続した財産承継を指定することも可能です。

家族信託に直接的な節税効果はありませんが、スムーズな相続を行うためにも有効な手段といえます。

家族信託の注意点

家族信託は認知症や資産承継の対策法として活用できますが、財産を管理する人の負担や責任が重いことがデメリットです。

特に、財産の管理を一手に引き受けることになるため、家族間トラブルの原因になることがあります。

また、契約内容が複雑になり、一度作ると修正が難しいため、専門家に依頼することが大切です。

家族信託については、以下の記事も参考にしてください。
家族信託のメリット7選|デメリット・費用・成年後見との違いもわかりやすく解説

②養子縁組をして法定相続人を増やす

養子縁組とは、血縁関係の有無にかかわらず、法律上の親子関係を成立させる制度です。

相続対策として養子縁組を活用する最大の目的は、「法定相続人の数を増やす」ということにあります。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で決まるため、養子を1人迎えるごとに、基礎控除額を600万円増やすことが可能です。

また、生命保険の死亡保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で計算されるため、養子が1人増えれば生命保険の非課税枠も500万円拡大されます。

このように、法定相続人の数が増えれば増えるほど相続税を低く抑えられる仕組みになっているため、養子縁組で税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

よくある相続税対策として、孫を養子にする方法や、子の配偶者を養子にするという方法があります。

孫や子の配偶者は法定相続人ではありませんが、養子とすることで、法定相続人としてカウントできるようになります。

養子縁組の注意点

注意点として、養子縁組では、養子を無制限に増やすことはできません。

税務上、法定相続人に含められる養子の数には制限があり、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までと定められています。

また、明らかに節税目的で行われた養子縁組は、税務署に否認されるリスクがあるため注意が必要です。

加えて、養子縁組をすると他の相続人の法定相続分が減ることになるため、親族間でトラブルになる可能性もあります。

養子縁組を活用して相続対策を行う際は、家族間への影響を慎重に見極めながら行うようにしましょう。

③一代飛ばし相続をする

一代飛ばし相続とは、通常であれば「親から子へ」「子から孫へ」と順番に引き継がれる財産を、「親から孫へ」直接引き継がせる手法です。

この方法の最大のメリットは、相続税の課税回数を減らせる点にあります。

日本の相続税は、財産が移転するたびに課税されます。例えば、親から子へ相続する際に1回目の相続税がかかり、その後に子が亡くなって孫に相続する際には2回目の相続税がかかります。

しかし、遺言や生前贈与、養子縁組などの方法を用いて親の財産を直接孫に渡せば、子から孫への相続をスキップできるため、トータルでの税負担を大幅に圧縮することが可能になります。

一代飛ばし相続の注意点

相続では、一代飛ばし相続で孫が財産を相続した場合、その孫の相続税が「2割加算される」というルールがあります。

一代飛ばし相続を検討する際は、「2割加算される相続税額」と「子・孫と2回相続する際の相続税額」をシミュレーションし、慎重に検討することが重要です。

また、子や孫の感情にも配慮する必要があります。本来受け取るはずだった財産が直接孫に渡ることで、親が不満を抱く可能性があります。

また、孫が若いうちに多額の財産を手にしてしまうことで、金銭感覚が狂ってしまったり、教育上好ましくない影響が出たりするリスクもあります。

一代飛ばし相続を検討する際は、税務上のメリットだけでなく、家族全体のバランスや孫の将来を見据えて慎重に検討するようにしましょう。

④お墓や仏壇を生前に購入する

被相続人の財産は基本的にすべて相続税の課税対象となりますが、お墓や仏壇といった祭祀に関するものは非課税財産のため、相続税の対象にはなりません。

生前にお墓や仏壇を購入することで、現金という相続財産を減らすことができ、かつ購入したお墓や仏壇は税金が発生しない財産なので、節税につながると言えます。

お墓や仏壇を生前購入する際の注意点

お墓や仏壇は基本的に非課税ですが、過度な装飾や骨董品として価値がある場合には課税対象になることもあるので、注意が必要です。

また、お墓や仏壇をローンで購入し、返済が残った状態で相続が発生すると、節税効果を十分に生かすことができなくなります。

必ず現金一括で購入するか、生前に支払いを完了しておくようにしましょう。

⑤自宅のリフォームや修繕をする

生前に自宅のリフォームや修繕を行うことで、手元にある現金を減らすことができ、その結果相続財産の総額を圧縮して相続税を節税することが可能です。

一般的なリフォームや修繕を行っても固定資産税評価額はほとんど上がりません。もしも上がったとしても、支払った金額よりははるかに低く抑えられるというメリットがあります。

できるだけ現金を減らしたい場合は、屋根や外壁の補修などを生前に行っておくのがおすすめです。

また、残された家族が住む場合は、生前にリフォームを済ませておけば家族はきれいな状態で住み続けることができます。

バリアフリーにしておけば、将来子どもが安全な老後を過ごせるというメリットもありますので、さまざまなリフォーム方法を検討すると良いでしょう。

自宅のリフォームや修繕をする際の注意点

一般的なリフォームでは建物の評価額が上がることはまれですが、「床面積が増える増築」や大規模なリフォーム・修繕を行った場合は、相続税評価額が上がる可能性があるので注意が必要です。

また、リフォーム費用をローンで支払う場合は、手元の現金が減らないため、節税効果があまり得られないケースがあります。

相続財産を減らすためにも、相続までに支払いを終えられる短期ローンにするか、現金一括で支払うようにしましょう。

⑥死亡退職金の非課税枠を利用する

会社員や会社役員が在職中に亡くなった場合は、会社から遺族に対して「死亡退職金」が支払われることがあります。

この死亡退職金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、生命保険と同じように「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。

この非課税枠は、生命保険金の非課税枠とは「別枠」で設けられているため、両方を最大限に活用することで、大きな節税効果を得られます。

死亡退職金の非課税枠を利用する際の注意点

自身で会社を経営しているオーナー社長や役員の場合は、死亡時に適切な額の退職金が支払われるように、生前に「役員退職金規定」を準備して準備する必要があります。

規定がないまま高額な退職金を支給した場合、税務署から「賞与や贈与である」と見なされて非課税にならない場合があるため注意が必要です。

また、死亡退職金を受け取る権利は「被相続人の死亡後3年以内に確定したもの」とされているため、遺族が受け取る手続きが遅れると非課税枠の適用を受けられない可能性があります。

この仕組みをきちんと活用するためにも、会社の規定や死亡退職金を給付するまでのプロセスを明確にしておきましょう。

相続対策でよくある失敗例7選と対策法

相続対策は、「やらないリスク」だけでなく「やり方を間違えるリスク」も大きい分野です。

代表的な7つの失敗例は以下のとおりです。

相続対策のよくある失敗例

理由や結果

節税だけを優先してしまう

収益性が高い不動産を購入してしまう

遺言書を作成していない

うちは揉めないと思い込み放置してしまう

生前贈与のやり方を間違える

名義預金と見なされ税務調査で否認される

不動産を共有名義にしてしまう

公平に分けたつもりが、売却・活用に全員の合意が必要で身動きが取れなくなる

納税資金を準備していない

不動産を不利な条件で売却せざるを得なくなる

家族に相続対策の内容を伝えていない

相続対策の意図が伝わらず、不信感やトラブルが発生する

制度の併用ミスや理解不足

相続時精算課税制度を安易に選択したり、特例の適用条件を誤解したりする

これらの失敗例に共通しているのは「目先の節税効果にとらわれすぎている」という点です。

相続対策は、「残された家族が争わないようにすること」「必要な納税資金を確保すること」「相続税の負担を軽減すること」という3つの要素のバランスを取ることが重要です。

相続対策を成功させるためには、すべて自己判断で進めるのではなく、場合によっては税理士や弁護士などの第三者の力も借りて、自身の財産状況や家族構成に合ったプランニングを行うようにしましょう。


まとめ

本記事でご紹介してきた相続税対策は、法令の範囲内で行う適切な行為です。しかし間違った対策や過剰な節税を行えば、脱税になってしまう危険も出てきます。

たとえば法令の規則をよく理解しないまま自分勝手に判断して、納めるべき相続税よりも低く見積もってしまうかもしれません。過去には不動産を用いた過度な対策が、脱税だと指摘された例もあります。

相続税対策はあくまでも適切な範囲で、将来のトラブルが発生しないように配慮しながら進めるようにしましょう。


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伊藤久実 

伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。
大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。