老後のお金はいくら必要?
年金と支出をシミュレーションで徹底比較【夫婦・独身別】
老後のお金は実際のところいくら必要なのか、気になる人は多いのではないでしょうか。人によって必要なお金は異なりますが、何にどれくらいかかるのか目安を知ることで、自分はどれくらいのお金を準備すればいいのかイメージしやすくなります。本記事では、老後に必要な生活資金だけでなく、受け取れる年金額の目安や収支のシミュレーションを夫婦・一人暮らし別にご紹介していきます。老後のお金に不安がある人は、ぜひ参考にしてみてください。
・目次
老後のお金はいくら必要?
「老後2,000万円問題」をご存じの方も多いでしょうが、本当にこれほどの資金が必要なのか疑問に思う人も多いのではないでしょうか。実際のところはどうなのか、さまざまなデータをもとにご紹介していきます。
日々の生活資金
まず必ず必要なのが、日々の生活資金です。老後は何にどれくらいの金額を出費しているのか、平均値をまとめました。
<65歳以上の無職世帯の出費>
項目 |
夫婦 月平均額/円(構成比/%) |
単身者 月平均額/円(構成比/%) |
食費 |
72,930(29.1) |
40,103(27.6) |
住宅費 |
16,827(6.7) |
12,564(8.6) |
光熱費 |
22,422(8.9) |
14,436(9.9) |
家具・家事用品費 |
10,477(4.2) |
5,923(4.1) |
被服費 |
5,159(2.1) |
3,241(2.2) |
保健医療費 |
16,879(6.7) |
7,981(5.5) |
交通・通信費 |
30,729(12.2) |
15,086(10.4) |
教育費 |
5(0.0) |
0(0.0) |
教養・娯楽費 |
24,690(9.8) |
15,277(10.5) |
その他 |
50,839(20.3) |
30,821(21.2) |
消費支出 計 |
250,959(100) |
145,430(100) |
|
世帯年収 |
公立 |
私立 |
2025年3月まで |
910万円以上 |
なし |
なし |
910万円未満 |
11万8,800円まで |
11万8,800円まで |
|
590万円未満 |
39万6,000円まで |
||
2025年4月から |
制限なし |
11万8,800円まで |
39万6,000円まで |
2026年4月から |
45万7,000円まで |
参考: 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)結果の概要 P.19
生活するうえで欠かせない出費は、夫婦2人世帯だと月に25万円ほど、単身者だと14.5万円ほどだと考えられます。ただし、人によってかかる出費は異なります。特に経済的にゆとりがある生活を送りたいなら、さらにお金が必要です。
ゆとりある生活に必要なお金
生命保険文化センターが行った調査によると、「老後に必要な最低生活費」と「ゆとりある生活のための資金」を足した金額は、37.9万円/月でした。
参照:生命保険文化センター「2022(令和4年)年度生活保障に関する調査」p.115
では、ゆとりある生活のための資金とはどのようなものかというと、以下のデータが参考になります。
<老後のゆとりのための上乗せ額の使途>2022(令和4)年
使途 |
割合(%) |
旅行やレジャー |
60.0 |
日常生活費の充実 |
48.6 |
趣味や教養 |
48.3 |
身内とのつきあい (子供や孫、親族など) |
46.2 |
耐久消費財の買い替え (テレビや冷蔵庫、自動車など) |
31.7 |
子供や孫への資金援助 (結婚資金援助や住宅取得資金援助など) |
19.4 |
隣人や友人とのつきあい |
12.5 |
とりあえず貯蓄 |
3.9 |
その他 |
0.3 |
わからない |
0.5 |
※複数回答
参照:生命保険文化センター「2022(令和4年)年度生活保障に関する調査」p.113
旅行やレジャー、趣味のほか、食費や衣服代に子供や孫との交流といったものにお金をかけたい場合は、これくらいの資金が必要だと考えられているようです。
どの程度お金をかけるのか、個人差はとても大きい項目ではありますが、目安として参考にしてみてください。
そのほかにかかる出費
日常生活費やゆとりのための資金のほかにも、必要な資金があります。たとえば以下のようなものです。
●税金や社会保険料
老後の収入といえば代表的なものは年金ですが、年金にも税金(所得税・住民税)や社会保険料(国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料)がかかります。
また年金以外の収入があればそれに伴う税金等が発生し、不動産を所有している場合は固定資産税、自動車を所有している場合は自動車税が発生します。
税金と社会保険料を合わせた金額(非消費支出)の平均は、夫婦で31,538円、単身者で12,243円です。
参考: 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)結果の概要 P.19
●家のリフォームや修繕費
自宅が持ち家の場合、必要に応じてリフォームや修繕費が発生します。たとえば階段やお風呂の手すり設置に室内の段差の解消など、老後特有のリフォームが必要になるかもしれません。また、老朽化に伴い修繕が必要になることもあります。
マンションであれば修繕積立費として毎月支払いが発生しますし、戸建ての場合は急に高額な費用が必要になることもあるでしょう。特に戸建ての場合、予想外の出費になりやすいので、あらかじめ考慮しておくとよいかもしれません。
●入院
入院すると、治療費だけでなく食事代や差額ベッド代、入院中に必要な日用品の購入費などが発生し、思ったよりもお金がかかることがあります。生命保険文化センターの調査によると、入院時の自己負担額の平均は、19.8万円です。
入院日数が長くなるにつれ、費用は高額になります。60歳代の平均入院日数は18.8日、70歳代になると平均20.5日で、この場合の費用の平均は28.4万円(入院日数15~30日の場合)です。61日以上入院する場合は、75.9万円とさらに高額になります。
参照:生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
高額医療制度があるからそれほどかからないと思う人もいるかもしれませんが、上記の金額は高額医療制度を利用した場合も含まれています。老後の入院に備えて、ある程度の資金が必要だと言えるでしょう。
●介護
老後は、さまざまな介護が必要になるかもしれません。生命保険文化センターが行った調査によると、1カ月あたりの平均で8.3万円、合計で平均74万円の介護費用がかかるようです。
介護の程度によって必要な額は当然異なり、自宅か施設かでも必要な金額は変わってきます。たとえば最も介護度が高い要介護5の場合は、総額で平均107万円です。また自宅で介護を行う場合の費用は月額4.8万円に対し、施設だと月額12.2万円となっています。
参照:生命保険文化センター「2021(令和3年)生命保険に関する全国実態調査」p.173~174
状況により必要な金額は異なりますが、介護資金も考えておくと安心です。
●葬儀など
自分に万が一のことが起こった場合、残された家族の負担にならないよう、葬儀代やお墓を用意しておきたいと考える人もいるのではないでしょうか。
葬儀費用は地域や規模によって大きく異なりますが、全国平均費用は195.7万円です。
参照:消費者契約法専門調査会「葬儀業界の現状 平成29年4月28日」
数年前のデータではありますが、葬儀費用はここ10年ほどほぼ変わらないという調査もあるため、おおよその目安にはなるでしょう。ただし、家族葬のような小規模葬儀が増えているため、葬儀費用が下がるケースも増えています。
以上から、老後は生活資金や余裕のある生活のための資金に加え、税金、リフォームや介護などにかかる費用が必要になると考えられます。
受け取れる年金額は?
老後の重要な収入といえば年金です。将来受け取れる年金額は変わる可能性もありますが、だいたいどれくらいもらえるのか確認しておきましょう。
日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2種類で、2階建て構造と言われています。1階が基本的に全員加入している国民年金、2階部分は会社員や公務員などが加入している厚生年金です。国民年金のみ加入の場合と厚生年金も加入している場合では、大きく年金額が異なります。
厚生年金加入の場合
厚生年金は、加入期間や年収によってもらえる金額が異なります。加入期間が長く、年収が高い人ほどもらえる金額が増えます。正確な受給額は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで確認してみてください。
厚生年金加入時の、平均年金月額は以下の通りです。
<厚生年金 平均年金月額>
全体の平均 |
146,429円 |
男性の平均 |
166,606円 |
女性の平均 |
107,200円 |
参照:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」参考資料3
厚生年金の受給額は、国民年金分を含んだ金額です。このほかに国民年金を受け取れるわけではないので注意しましょう。
繰り返しになりますが、厚生年金額は加入年数や働き方によって変わります。特に女性の場合は、加入期間が短い人やパートタイムの人も含んだ数値なので、実際に受け取れる金額とは大きく異なるかもしれません。
国民年金のみの場合
国民年金は、20~60歳の全国民が対象です。自営業や専業主婦(主夫)などは、国民年金のみに加入していることになります。受給額は加入期間に応じて一律で、平均値は以下の通りです。
<国民年金 平均年金月額>
全体の平均 |
57,584円 |
男性の平均 |
59,965円 |
女性の平均 |
55,777円 |
参照:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」参考資料4
厚生年金と比べると、もらえる額が大幅に少ないことがわかります。国民年金だけでは、老後の生活を送るのは難しいため、貯蓄や私的年金などで備えておきましょう。
繰り下げ・繰り上げ受給の場合
年金は基本的に65歳から受け取れます。しかし希望すれば、66歳以降の繰り下げ受給や、60歳からの繰り上げ受給も可能です。年金の繰り下げや繰り上げを行うと、それに応じて年金額は変わります。
●繰り下げ受給の場合
年金の受け取りを66歳以降に遅らせると、繰り下げた月数に応じて受け取れる年金額を増やせます。
増額率=繰り下げ月数×0.7%
たとえば70歳から年金を受け取る場合、繰り下げ月数(60月)×0.7%で、42%増額した年金を受け取れます(本来の支給額の1.42倍)。一度増額すると、生涯増額率は変わりません。
2022年4月から最大受給開始年齢が75歳になったため、最大84%(120月×0.7%)まで増額可能です。
●繰り上げ受給
反対に、年金を60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることもできます。その場合の減額率は以下の通りです。
減額率=繰り上げ月数×0.4%
60歳から年金を受け取った場合は、繰り上げ月数(60月)×0.4%で、本来の支給額から24%減額されます。減額率も生涯変わりません。
年金の繰り下げや繰り上げは、どちらが良いとは一概には言えません。状況に応じて、選択肢のひとつとして覚えておくとよいでしょう。
老後資金を夫婦・一人暮らし別にシミュレーション
老後に必要な資金や年金額を把握したところで、65歳以上の収支はどうなるのか世帯状況別にシミュレーションしてみました。全体に共通する仮定として、収入は平均的な年金収入のみ、支出は生活費と税金・社会保険料のみとしています。
夫婦の場合
まずは夫婦2人世帯で、ともに共働きで厚生年金に加入していたケース、夫と妻のどちらかが厚生年金加入のケース、夫婦二人とも国民年金のケースでシミュレーションします。基本的な生活を送る場合と、余裕がある生活を送る場合の2パターンご紹介していきます。
夫婦ともに厚生年金加入
夫婦ともに、平均程度の厚生年金を受給している場合です。
【月々の収入】
夫の厚生年金 |
166,606円 |
妻の厚生年金 |
107,200円 |
合計 |
273,806円 |
【月々の収支】
基本の生活 |
余裕がある生活 |
||
収入 |
273,806円 |
||
支出 |
生活費 |
250,959円 |
379,000円 |
税金 |
31,538円 |
||
計 |
▲8,691円 |
▲136,732円 |
基本的な生活を送った場合は、月に8,691円、年間にすると約10万円の赤字です。仮に90歳まで余命があるとしたら、250万円ほどの蓄えが必要でしょう。
余裕がある生活を希望する場合は、月々の赤字は136,732円、年間だと約164万円です。同じく90歳まで余命がある場合は、4,100万円ほど必要になります。
どちらかのみ厚生年金加入
ここでは夫が厚生年金、妻が専業主婦だった場合を想定しています。
【月々の収入】
夫の厚生年金 |
166,606円 |
妻の国民年金 |
55,777円 |
合計 |
222,383円 |
【月々の収支】
基本の生活 |
余裕がある生活 |
||
収入 |
222,383円 |
||
支出 |
生活費 |
250,959円 |
379,000円 |
税金 |
31,538円 |
||
計 |
▲60,114円 |
▲188,155円 |
※税金や社会保険料は共働きのケースよりも下がる可能性がありますが、ここでは暫定値として同じ金額にしています。
このケースの場合、基本的な生活だと月に60,114円、年間にすると約72万円の赤字となりました。余命が90歳までの場合、1,800万円ほど足りません。
余裕がある生活を希望するなら、月々188,155円・年間約225万円の資金が必要です。同じく90歳まで余命がある場合は、5,625万円ほど必要になります。
国民年金のみ
続いて、夫婦ともに国民年金だった場合もご紹介します。
【月々の収入】
夫の国民年金 |
59,965円 |
妻の国民年金 |
55,777円 |
合計 |
115,742円 |
【月々の収支】
基本の生活 |
余裕がある生活 |
||
収入 |
115,742円 |
||
支出 |
生活費 |
250,959円 |
379,000円 |
税金 |
31,538円 |
||
計 |
▲166,755円 |
▲294,796円 |
※税金や社会保険料は厚生年金加入のケースよりも下がる可能性がありますが、ここでは暫定値として同じ金額にしています。
上記を見ると、国民年金だけで老後を送るのは、非常に厳しいと言えるでしょう。基本的な生活でも、月に166,755円、年間にすると約200万円の赤字です。90歳まで生きるとしたら、5,000万円ほどの蓄えを用意しなければなりません。
さらに余裕がある生活を希望するなら、月々の赤字は294,796円、年間だと約353万円です。同じく90歳まで余命があるとしたら、実に8,825万円ものお金が必要になります。
一人暮らし・独身の場合
次に、単身者の場合はどのような収支になるのか、男女別にシミュレーションしてみました。こちらも収入は年金(平均額)のみ、支出は生活費と税金・社会保険料を対象としています。
厚生年金加入
まずは厚生年金に加入していた場合です。
【月々の収入】
男性 |
166,606円 |
女性 |
107,200円 |
【月々の収支】
男性 |
女性 |
||
収入 |
166,606円 |
107,200円 |
|
支出 |
生活費 |
145,430円 |
|
税金 |
12,243円 |
||
計 |
8,933円 |
▲50,473円 |
男性の場合、基本的な生活を送る分には年金で賄えそうです。ただし余裕がある生活を送る場合はもちろん、突発的な入院費や介護費を考えると、ある程度の備えは必要です。
女性の場合、受給できる厚生年金額が低くなりがちなので、月々の生活で赤字が発生するかもしれません。月に50,473円、年間にすると約60万円の赤字です。余命が90歳まであるとしたら、1,500万円ほど準備しなければなりません。
ただしずっとフルタイムで働いていた場合は、厚生年金額は男性の平均と同じくらいになると予想できます。まずはご自身の年金額がどれくらいになるのか、確認してみてはいかがでしょうか。
国民年金のみ
続いて、国民年金のみの場合はどうなのか確認してみましょう。
【月々の収入】
男性 |
59,965円 |
女性 |
55,777円 |
【月々の収支】
男性 |
女性 |
||
収入 |
59,965円 |
55,777円 |
|
支出 |
生活費 |
145,430円 |
|
税金 |
12,243円 |
||
計 |
▲97,708円 |
▲101,896円 |
※税金や社会保険料は厚生年金加入のケースよりも下がる可能性がありますが、ここでは暫定値として同じ金額にしています。
国民年金のみの場合は、やはり厳しい結果になりました。男性は年間約117万円の赤字、女性は年間約122万円の赤字です。
90歳までに必要な資金は、男性2,925万円、女性3,050万円なので、しっかり準備しておかなければなりません。
これらのシミュレーションには、リフォームや入院、介護などの金額は含まれていません。これらの出費を考えると、さらに資金が必要になるでしょう。ただし、個々人の出費額は異なりますし、老後の支出は年々減る傾向にあります。ご自身の状況に合わせてシミュレーションできるサイト等もあるので、詳しく知りたい場合は活用してみてください。
老後のお金はどう準備する?
シミュレーションしてみると、多くのケースで年金だけでは老後の生活が難しい結果になりました。老後に備えて、貯蓄でコツコツ資金を積み立てておくのも一つの方法ですが、ここでは貯蓄以外の老後資金の準備方法についてご紹介していきます。
退職金を確認する
退職金は、老後における重要な資金です。すべての企業で退職金があるわけではなく、また支給される金額も企業によってまちまちなので、まずはご自身が務めている会社の退職金制度を確認してみましょう。
参考までに、退職金がある場合の平均値をご紹介します。
<高校や大学を卒業してから同じ会社で働き続けた場合の定年退職金>
|
中小企業 |
大企業 |
高校卒 |
9,741,000円 |
20,199,000円 |
大学卒 |
11,495,000円 |
21,396,000円 |
参照:東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
場合によっては退職金で老後の資金を賄える場合もあるかもしれませんが、不測の事態に備えてほかの方法でも備えておくと安心です。
保険を活用する
貯蓄型の保険を活用すると、資金を貯めながら万が一のときにも備えられます。金利はあまり高くないため、資金を大きく増やすことは難しいですが、残された家族にお金を遺したい場合はおすすめです。
また生命保険金は相続税の課税対象ではありますが、一人の相続人につき500万円までは非課税になります。遺産分割協議の対象にはならず、受取人を指定できるので、相続対策としても有効です。
<主な貯蓄型保険>
終身保険
|
死亡時や高度障害時に保険を受け取れるほか、解約返戻金を受け取れる。 |
低解約返戻金型終身保険 |
低解約返礼期間中に解約すると返戻金が通常よりも低くなる代わりに、低解約返礼期間後に解約すると返戻金が増える終身保険。 |
養老保険 |
満期になると「満期保険金」を、死亡時には「死亡保険金」を受け取れる。 |
個人年金保険 |
老後の生活資金のため、積み立てた掛金を年金のように月ごともしくは年ごとに受け取れる。 |
個人年金保険はその名の通り、決められた額を年金のように定期的に受け取れる保険です。年金額に不安がある場合は、活用してみてはいかがでしょうか。
資産運用で増やす
老後資金を準備するなら、早いうちから資産運用に挑戦してみるのもよいでしょう。ただし、投資は資産を増やせる可能性がある一方、損失を被ることもあります。必ず事前に理解を深めたうえで挑戦してみてください。
ここでは、資産運用を行うにあたって、知っておきたい制度や金融商品を簡単にご紹介していきます。
iDeCo
iDeCoは私的年金の一種です。自分で決めた金融商品に掛金を拠出して、運用していきます。老後の資産形成を目的として国が定めた制度で、税制上の優遇があります。
<主なメリットとデメリット>
メリット |
デメリット |
・運用益が原則非課税 ・掛金が全額所得控除される ・受け取り時にも「退職所得控除」や「公的年金等控除」の対象になる |
・60歳まで引き出せない ・元本や運用益の保障はない
|
通常、資産運用で得た利益には20.315%の税金が発生しますが、iDeCoでは非課税です。また掛金が所得控除されるため、所得税や住民税が低くなるなどのメリットがあります。
しかし60歳まで引き出せないといったデメリットもあります。また掛金の上限は働き方などによって異なるため、自分がどれくらいまで拠出できるのかは事前に調べなければなりません。
iDeCoは自分で年金を積み立てられる制度なので、公的年金だけでは不安だという場合は、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
NISA
NISAはiDeCoと同じように、運用益が非課税になる制度です。毎月一定額を積み立てるつみたて投資枠と、一度に投資が可能な成長投資枠があります。
<成長投資枠とつみたて投資枠の違い>
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成長投資枠 |
つみたて投資枠 |
年間投資可能額 |
240万円 |
120万円(10万円/月) |
保有可能限度額 |
1,200万円 |
成長投資枠と合わせて1,800万 |
投資対象商品 |
上場株式、投資信託など |
長期の積み立てに適した投資信託 |
購入方法 |
都度、積み立てなど自由 |
積み立て |
iDeCoのように引き出し制限はありません。どのような目的でも活用できるので、資産運用をするなら、運用益が非課税になるNISAを活用してみてはいかがでしょうか。
NISAについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
投資信託
投資信託(ファンド)とは、投資のプロが選んだ複数の金融商品に投資することです。自分で個別銘柄を選ぶ必要がなく、少額の資金から始められるので、初心者にもおすすめの投資方法と言われています。
投資信託には、リスクが低めのものから比較的高リスクのものまでさまざまな種類があります。投資先も、株式や債券、不動産など種類豊富です。投資信託を行う際には、運用成績はもちろん、どのような特徴を持つファンドなのか必ず確認しましょう。
貯蓄や保険と比べると利回りが高いため、資金を増やせる可能性がありますが、元本保証はありません。メリットだけでなく、リスクも事前に理解したうえで挑戦してみてください。
株式投資
企業の株式を購入して、譲渡益や配当益を得るのが株式投資です。銘柄によっては株主優待特典が付いているものもあります。
株式投資は自分で銘柄を選んで投資する必要があるので、ある程度の知識が必要です。また利回りが高いものが多い代わりに、リスクは高くなる傾向にあります。当然元本保証はないため、株式投資を行う場合は必ず事前に知識をつけましょう。
国債
国債は、国が発行する債券です。債券とは借用書のようなものなので、債券を購入するということは、国にお金を貸しているということになります。
国債を保有している間は配当を得られ、あらかじめ決められた償還日には額面通りの金額が戻ってくる仕組みです。債券の中でも国債は国が発行しているため、とても安全性が高く、リスクの低い金融商品といえます。
株式投資や投資信託などと比べると利回りは低くなりますが、安全に資産運用したい場合におすすめです。
このほか、投資についてもっと知りたい場合はこちらの記事も参考にしてみてください。
老後資金が足りない場合の対処法
できるだけ老後資金を準備したくても、どうしても足りないという場合もあるでしょう。そこで、老後の資金難を避けるための対処法もご紹介していきます。
節約を心掛ける
節約するとなると、食費や日用品を見直す人が多いかもしれません。しかし、これらの流動日と呼ばれる出費は、生活するうえで必須なうえになかなか節約が難しいものでもあります。
そこでおすすめなのが、固定費を見直すことです。固定費とは、住宅ローンや水道光熱費の基本料金、スマホやインターネットの基本料金、保険料などです。これらは比較的金額が大きく、一度見直すとその効果が持続します。また、見直しても生活の質にはさほど影響しないことも多いです。
できるだけストレスがかからないよう節約を心掛け、貯蓄や投資に回せる資金を増やしましょう。
副業やダブルワークで収入を増やす
積極的に収入を増やしていく、という方法もあります。副業やダブルワークによる収入アップや、場合によっては転職を視野に入れてもいいかもしれません。専業主婦(主夫)がいるご家庭では、パートを始めるだけでも世帯収入は大幅に改善されます。
このままだと老後は厳しいと感じるなら、体が元気なうちに労働収入で資金を増やしておくことも考えてみてはいかがでしょうか。
退職後も働く
多くの企業では60~65歳頃が定年退職だと思いますが、退職後も働くことで、老後の経済状況はかなり改善されます。年金収入だけでは生活が難しい場合は、体が動くうちは働くというのも一つの手段です。
無理せず働ければ、労働収入を得られるだけでなく、社会とのつながりを感じながら充実した生活を送れるというメリットもあります。
年金を繰り下げ受給する
上述した通り、年金を繰り下げて受け取ることで、月々の年金額がアップします。65歳時点である程度の余裕がある場合は、繰り下げ受給を検討してもよいかもしれません。
反対にどうしても生活が苦しい場合は、繰り上げ受給を検討してみてはいかがでしょうか。年金の繰り下げと繰り上げは、どちらが良いというわけではありません。ご自身の状況に合わせて、そのような方法もあるということを覚えておきましょう。
まとめ
老後の生活資金は、夫婦の場合だと約25万円、独身の場合は約14.5万円が必要と言われています。余裕のある生活を送るなら、夫婦で37.9万円必要です。このほか、入院や介護などにも資金が必要となり、すべてを年金収入だけで賄うのは難しいかもしれません。
老後の資金は、貯蓄だけでなく保険や投資なども利用しながら長期的に準備するのがおすすめです。どうしても資金が足りないと感じる場合は、「副業や転職で収入アップを目指す」「退職後も働く」「年金の繰り下げ受給」なども検討してみてはいかがでしょうか。