円安時は何に投資すべき?日本株から外貨商品まで徹底解説

円安が進むと、人々の生活はもちろんのこと、投資にも大きな影響を与えます。資産運用を考えている人の中には「円安の時にどのような投資をすれば良いのか?」と疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。

円安局面では外貨建て商品や外国株が注目されますが、日本株にもチャンスがある分野があり、必ずしも「海外投資一択」とは限りません。円安の時は、メリットやリスクの両方を理解しながら、自分に合った投資の種類をしっかりと選ぶことが大切です。

この記事では、円安になった際の投資戦略について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

・目次


円安とは?投資にはチャンス?

投資と為替変動には密接な関係があり、円安が進むとさまざまな投資に影響を及ぼします。

近年は円安傾向が続いており、今後も様々な状況から円安が進む可能性があるため「円安になった場合、自分が投資している商品はどのような値動きをするのか」をしっかり理解しておくことが大切です。

円高・円安とはどういうこと?

円高・円安とは、日本円の価値が他国の通貨に対して上がる(円高)こと、もしくは下がる(円安)ことを指します。

例えば、1ドル100円から1ドル130円になった場合、「1ドルを手にいれるのに、30円多く日本円が必要になった=円の価値が下がった」ことになるため、「30円円安になった」と表現します。

一方、1ドル100円だったものが1ドル80円になった場合「20円少ない日本円で1ドルを手に入れられる=円の価値が上がった」ことになるため、「20円円高になった」という言い方をします。

「円安」とは、円の価値が低い状態、「円高」は円の価値が高い状態と覚えておくと良いでしょう。

円安は投資にどう関係する?

円安でプラスの影響があるのか、マイナスの影響が出るのかは、投資の種類によって異なります。

円安が投資に有利に働く例は、以下のとおりです。

  • 輸出関連企業の株価が上がる
  • 米国株や外貨建て保険、海外不動産など、ドル建て資産の円換算評価額が上がる

例えば、輸出関連企業では円安によって製品価格が相対的に下がり、海外での競争力が高まって業績の向上が見込まれるため、株価が上昇する傾向があります。

また、米国株や外貨建て保険など、米ドル建ての資産は、円安によって以下のように円換算評価額が上がるというメリットがあります。

ドル円のレート

10,000ドルの円換算評価額

1ドル130円

130万円

1ドル150円

150万円

一方で、円安は輸入企業にとってはマイナスの影響があります。

食品や小売、外食、エネルギー関連など、原材料や製品を海外から輸入する企業は、仕入れコストが上昇して利益が圧迫される可能性が高まるため、株価が下落する傾向があります。

また、円安によって物価が上昇すると、家計を圧迫するため消費が減少します。

これにより、小売やサービス業などの売上が下がって業績が落ち込む可能性が高まるため、やはり株価が下がるケースも多くなっています。

また、過度な円安が長期化すると、輸入コスト増・物価上昇・消費の低迷といった悪循環により、景気が後退して株式市場全体に悪い影響を与える要因ともなります。

円安の進み具合や期間にもよりますが、

  • 円安は輸出企業にはプラス・輸入企業にはマイナス
  • 長期的な円安は景気後退につながる可能性がある

という2点を覚えておきましょう。


円安が投資に与える影響は?投資商品ごとに紹介

円安は、投資の種類によって良い影響を与えることもあれば、悪影響を与えることもあります。ここでは、円安の影響を投資商品ごとに詳しく説明します。

円安が日本株に与える影響

円安は、輸出がメインの企業にはプラス、輸入がメインの企業にとってはマイナスの影響があります。

円安になると、以下のような企業は収益が増えるため、株価が上昇する可能性が高くなります。

  • 海外売上比率が高い
  • 輸出を主力事業にしている
  • ドル建ての収益が多い

具体的には、以下のような企業カテゴリーが挙げられます。

また、日経平均株価の構成銘柄の中で、海外売上比率の高い銘柄を集めた指数「日経平均外需株50指数」というものがあります。

この指数の構成銘柄を見ることで、円安でメリットがある企業を把握することも可能です。

この指数に組み入れられている企業の一部を紹介します。

業種

企業名

食品

日本たばこ産業

化学

クラレ

信越化学工業

日東電工

医薬品

武田薬品工業

アステラス製薬

ゴム

ブリジストン

窯業

日本電気硝子

東海カーボン

日本硝子

非鉄・金属

SUMCO

機械

SMC

小松製作所

日立建機

クボタ

電気機器

ミネベアミツミ

安川電機

ニデック(旧日本電産)

セイコーエプソン

ソニーグループ

自動車

日産自動車

トヨタ自動車

三菱自動車工業

精密機器

テルモ

コニカミノルタ

ディスコ

ニコン

その他製造

ヤマハ

商社

豊田通商

サービス

ネクソン

任天堂

一方で、円安がマイナスに働く企業の特徴は、以下のとおりです。

  • 輸入原材料や資材への依存度が高い企業
  • 売上が国内中心の企業
  • 海外展開しておらず、円安メリットを受けにくい企業

このように、売上が国内中心の企業の株式は、内需株(国内向けのビジネスが中心の企業)と呼ばれます。

具体的には、小売りや外食産業、電力・ガス会社、原料を輸入に依存するジェネリック医療メーカー、アパレルメーカー、資材を輸入する建設業などが挙げられます。

日経平均株価の225の構成銘柄の中から、内需ビジネスを中心とする銘柄を選び出した指数「日経平均内需株50指数 」の構成銘柄を確認することで、国内売上比率が高い企業を把握できます。

この指数に組み入れられている一部の企業を紹介します。

業種

社名

建築

コムシスHD

大成建設

清水建設

食品

明治ホールディングス

日本ハム

小売業

J.フロントリテイリング

ZOZO

三越伊勢丹ホールディングス

高島屋

銀行

しずおかフィナンシャルグループ

コンコルディア・フィナンシャルグループ

りそなホールディングス

その他金融

クレディセゾン

日本取引所グループ

証券

大和証券グループ本社

保険

T&Dホールディングス

不動産

東急不動産ホールディングス

三井不動産

三菱地所

鉄道・バス

東武鉄道

東急

小田急電鉄

陸運

ヤマトホールディングス

通信

KDDI

ソフトバンク

電力

東京電力ホールディングス

中部電力

ガス

東京瓦斯

大阪瓦斯

サービス

オリエンタルランド

LINEヤフー

サイバーエージェント

引用:日経平均内需株50指数一覧 をもとにまねのびが作成

円安が続くと、内需株にとってはマイナス要因になります。

将来も引き続き円安が進むと考えられる場合は、円安メリットがある外需株の中から投資先を選ぶようにしましょう。

円安が外国株に与える影響

円安が進んだ場合、外国株式の円換算での評価額が増えるため、すでに外国株式に投資している人にとっては、円安はプラスに働きます。

以下のように、株価は同じでも円安になると円換算の資産額は増加します。

 

1ドル140円

1ドル160円

1株500ドルの株価の円換算評価額

70,000円

80,000円

また、円安が進み、なおかつドル建ての株価が上がった場合「株の値上がり益」と「為替差益」の両方が得られるため、より多くの利益を得られます。

一方で、円安局面で新たに外国株式に投資を始める場合は、割高な価格からスタートすることになるため、投資するかどうかを慎重に検討する必要があります。

例えば、1ドル150円の時に外国株式に投資をし、その後に円高に反転し、株価も変動した場合のことを考えてみましょう。

最初の株価

1ドル160円

1ドル140円

1株500ドルの
円換算評価額

80,000円

70,000円

1株400ドルの
円換算評価額

64,000円

56,000円

1ドル160円で500ドルの株を買い、円高で1ドル140円になった場合は、株の円換算評価額は80,000円から70,000円となるため、10,000円の為替損が発生します。

また、円高と同時に株価も400ドルに下がった場合は、為替と株の両方の損失が発生するため、株の円換算評価額は56,000円になり、24,000円の損失が出てしまうことになります。

このように、円安の状態で新たに外国株式に投資すると、場合によっては「株価の下落」と「為替損」の両方により、多くの損失が出ることがあるため注意が必要です。

引き続き円安が続くと予想する場合は、新たに外国株式に投資しても良いでしょう。

逆に、円高に振れる可能性がある場合は、新たな投資は慎重に検討しましょう。

円安が日本株投資信託に与える影響

日本株投資信託には、

  • 日経平均株価やTOPIXなどの指数に連動する「インデックスファンド」
  • ファンドマネージャーが将来性の高い企業を選んで投資する「アクティブファンド」

の2種類があります。

円安が日本株インデックスファンドに与える影響

インデックスファンドとは、日経平均株価やS$P500といった「市場の平均(インデックス)」に連動する運用成果を目指す投資信託のことをいいます。

インデックスファンドは機械的に指数に連動させて運用するため、手数料が安く、長期投資に向いているという特徴があります。

日経平均225の組入銘柄には、円安になると株価が上昇する「海外比率が高い企業」が多く含まれています。

そのため、日経平均株価との連動を目指すインデックスファンドは、円安による基準価額の上昇が期待できます。

日経平均株価との連動を目指すファンドは、以下のように様々な種類があります。

  • ニッセイ日経225インデックスファンド
  • eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
  • 三井住友・日経225インデックスファンド

指数に連動するインデックスファンドは、どれも運用内容が同じであるため、信託報酬が低いものを選ぶと良いでしょう。

また、日本株の代表的な指数として「TOPIX」もありますが、TOPIXは東証プライム市場に上場しているすべての国内株式を対象としており、内需株・外需株がバランスよく含まれています。

そのため、輸出企業の割合が多い日経平均連動型のファンドのほうが、円安によるメリットがより大きいと言えます。

円安によるメリットをより多く得たい場合は、日経平均株価に連動するインデックスファンドに投資すると良いでしょう。

円安が日本株アクティブファンドに与える影響

次に、日本株アクティブファンドにおける、円安の影響をみてみましょう。

アクティブファンドとは、運用のプロが市場平均を上回るリターンを目指し、独自の判断で銘柄を選んで運用する投資信託のことをいいます。

リサーチや分析をもとに投資先を選ぶため、インデックスファンドに比べて運用コスト(信託報酬)が高いものの、うまくいけば高い利益を期待できます。

アクティブファンドには様々な種類がありますが、

  • 円安で業績が向上しやすい輸出関連企業
  • 海外売上比率が高い企業
  • グローバルに展開している成長企業

を中心に投資しているファンドは、投資先の企業株価が円安で上昇する傾向があるため、それに伴って基準価額も上がる可能性があります。

また、円安で恩恵を受けやすい業種は以下となっています。

  • 輸送用機器(自動車)
  • 電気機器・電子部品
  • 機械(産業用機械やロボット)
  • 化学
  • 精密機器

これらの業種に特化して投資している投資信託も、円安によるメリットを得やすいと言えます。

このように、日本株投資信託には様々な種類がありますが、円安でメリットを得やすいファンドは

  • 日経平均に連動するインデックスファンド
  • 円安で業績が向上する業種に特化して投資しているアクティブファンド

と覚えておきましょう。

外国株投資信託

外国株投資信託とは、日本国外の株式(米国や欧州、新興国など)を主な投資対象とする投資信託のことをいいます。

外国株式型投資信託には、為替変動の影響を受ける「為替ヘッジなし」と、為替の変動を受けない「為替ヘッジあり」の2種類があります。

外国株投資信託(為替ヘッジなし)における円安の影響

外国株投資信託は、米ドルやユーロなど外貨建ての株式に投資します。

「為替ヘッジなし」では、円安になると投資先の株式の円換算評価額が増えます。そして、その結果として外国株投資信託の基準価額も上昇しやすくなります。

例えば、1ドル140円の時にファンドを購入し、1ドル160円になった場合、投資した株価の値動きがなくても、為替差益のみで約14%の利益を得られる計算です。

このように、「為替ヘッジなし」の外国株式型投資信託では、円安が進むと大きなメリットを得られます。

しかし、円高になると逆に基準価額が低くなるというデメリットもあります。

外国株投資信託を選ぶ際は、今後の為替の見通しを踏まえて、為替ヘッジの有無を慎重に検討することが大切です。

外国株投資信託(為替ヘッジあり)における円安の影響

「為替ヘッジあり」の外国株投資信託は、為替変動の影響を受けないように設計されています。

そのため、円安時に為替差益を得られないものの、円高に振れたときにも損失が出ないという利点があります。

為替リスクを減らし、安定的な運用をしたいという人は「為替ヘッジあり」のファンドがおすすめです。

将来円安が進むと考える場合は、円安による為替差益を得られるように、「為替ヘッジなし」のファンドを選ぶようにしましょう。

円安が外貨建て保険に与える影響

外貨建て保険とは、払い込む保険料や保険金が外貨建て(主に米ドルや豪ドル)の保険商品のことをいいます。

例えば、一般的な米ドル建て終身保険は、以下のように「保険料」「保険金」「解約返戻金」すべてがドル建てです。

保険料

保険金

解約返戻金

100ドル

30,000ドル

15,000ドル

そのため、円安になると以下のように保険金や解約返戻金の円換算の受取額が増えるというメリットがあります。

 

1ドル140円

1ドル160円

保険金(30,000ドル)

4,200,000円

4,800,000円

解約返戻金(15,000ドル)

2,100,000円

2,400,000円

保険料(100ドル)

14,000円

16,000円

一方で、契約時よりも円安が進んだ場合は、100ドル分の払い込みに必要な円の金額も増えるため、保険料の支払い負担は重くなります。

逆に、円高になった場合は、保険料は安くなるものの、保険金や解約返戻金の円換算の受取額は少なくなります。

将来的にも円安が続くと考えられる場合は、円安が進んでも無理なく支払えるような保険料を設定・契約するようにしましょう。

円安が外貨預金に与える影響

外貨預金とは、米ドルやユーロなど、外貨で預け入れる預金のことをいいます。

円安になると、外貨預金の円換算評価額が増えるというメリットがあります。

例えば、1ドル140円の時に10,000ドル預金をして、1ドル160円になった場合は、円換算での預金残高は140万円から160万円に増加する計算です。

また、利息も外貨建てのため、円安が進行すると受け取る利息の金額も増えます。

一方で、為替が円高に振れた場合は、外貨預金の元本や利息の円換算評価額が減ります。

大きく円高に振れた場合は、預金にも関わらず損失が出る場合もあるため、注意が必要です。

また、外貨預金は預金保形制度の対象外のため、万が一金融機関が破綻した場合であっても、外貨預金は保護されないというデメリットもあります。

このように、外貨預金は円安時に有利に働きやすいものの、「円高に振れると資産が減るリスク」と「万が一の際に預金が保護されないリスク」があります。

外貨預金を検討する際は、メリットデメリットを十分に理解した上で行うようにしましょう。

円安が金(ゴールド)投資に与える影響

円安は、金(ゴールド)投資においては、一般的にはプラスの影響を与えます。

金は、国際的にドル建てで取引されており、日本国内での価格は「ドル建ての金価格×為替レート(円/ドル)で計算されるためです。

例えば以下のように金価格が同じでも、円安が進むと円換算における価格が上昇します。(1オンスは約28グラム)

 

1ドル140円

1ドル160円

金1オンス3,000ドルの場合

420,000円

480,000円

ただし、逆に円高になると円換算評価額が下がるリスクもあるため、円安のタイミングで新たに金に投資するかどうかは、慎重に考える必要があります。

金は、紙幣のように中央銀行が自由に増やすことができない実物資産であり、価値が下がりにくいという特徴があります。

また、株式や債券と一緒に金を保有する「分散投資」を行うことで、ポートフォリオ全体のリスクを下げる効果もあることから、近年は金投資が注目されています。

金投資については、以下の記事も参考にしてください。
金投資の魅力とは?メリットやデメリット、銀・プラチナとの違いも解説

円安が日本の不動産に与える影響

円安が進むと、日本の不動産価格は上昇する傾向があります。

円安が日本の不動産に与える影響は、大きく分けて以下の3つです。

  • 外国人投資家による不動産購入の増加
  • インバウンド需要の高まりによる収益不動産の価値向上
  • 建築コスト上昇による新築物件の価格上昇

円安が進むと、外国人投資家にとって日本の不動産が割安な価格になるため、海外の資金が流入しやすくなります。

その結果、不動産価格の上昇や不動産取引の活性化などが見込まれます。

また、円安になると訪日外国人旅行者が増え、ホテルや民泊、商業施設などの利用が活発になって収益性が向上するため、収益不動産の価格も上がる傾向があります。

加えて、円安になると輸入資材が割高になるため、建設コストが増加し、新築物件の価格が上昇するという影響もあります。

円安が進むと、全体的に不動産価格が上昇する可能性が高まるため、投資を検討する際は為替の状況をこまめに把握し、投資タイミングを図るようにしましょう。

円安が海外の不動産に与える影響

海外不動産投資において、円安が与える影響は、以下のとおりです。

  • 購入コストが増加する
  • 運用中の維持費や税金も高くなる
  • 円換算の売却益が大きくなる

海外不動産は外貨建てのため、円安になると不動産の購入価格が上昇します。

例えば、50万ドルの物件を購入する場合、1ドル140円の場合は7,000万円必要です。

しかし、1ドル160円の場合は8,000万円必要となるため、円安になると初期の購入コストが大きくなります。

また、不動産を購入後に円高に振れた場合は、大きな損失が出ることがあります。

例えば1ドル160円で購入し、そのあと1ドル140円の円高に振れた場合、為替の変動だけで1,000万円の円換算評価損が出てしまうことになります。

このように、海外不動産投資では、為替の変動が資産価値に大きなマイナスの影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

また、不動産の現地の管理費や税金もすべて外貨で支払うため、円安になると日々の運営コストが上昇してキャッシュフローに悪影響を及ぼすというデメリットもあります。

一方で、海外不動産を購入した後に円安が進んだ場合は、円換算の資産額が大きく増えるというメリットもあります。

すでに海外不動産を保有している場合は、円安が進んだときは売却を検討しても良いでしょう。

逆に、円安の状態から新たに海外不動産投資を始める場合は、円高に振れた場合は大きな損失が出る可能性を踏まえて慎重に検討するようにしましょう。

海外不動産投資については、以下の記事も参考にしてください。
海外不動産投資とは?メリットデメリットやおすすめの国・成功のコツまで解説


円安で資産が増える投資商品まとめ

円安時に資産が増えやすい投資商品をまとめると、以下のとおりです。

  • 日本株(輸出企業中心)
  • 外国株
  • 日本株投資信託(日経平均連動のインデックスファンド・輸出企業中心のアクティブファンド)
  • 外国株投資信託
  • 外貨預金
  • 金(ゴールド)投資
  • 日本国内の不動産投資
  • 海外不動産投資(すでに保有している場合)

ただし、円安でメリットが得られる投資商品は、円高に転じた場合は資産価値が下がるリスクも伴います。

円安のタイミングで新たに投資を検討する場合は、今後の為替相場の動向やリスクを十分に理解したうえで、行うようにしましょう。


長引く円安に備える!おすすめの投資戦略とは

円安が今後も続くと見込まれる場合は、為替差益を得られる投資の種類を選ぶことで、より効率的に資産を増やせます。

ここでは、円安が続くと予想される場合におすすめの投資法について解説します。

外貨建て資産に投資する

外国株式や外貨建て債券、外貨預金、外貨建て保険などは、円安時に円換算での資産価値が上昇します。

特に米ドル建ての資産は流動性が高く、為替差益と運用益の両方を狙えるため人気があります。

今後円高に振れる可能性がある場合、新たに外貨建て資産に投資するのはリスクが大きくなりますが、円安が今後も続くと予想される場合は、新たに外貨建て資産に投資することを検討しましょう。

金(ゴールド)などのインフレ対策資産に投資する

金(ゴールド)は米ドル建てで取引されるため、円安になればなるほど円換算の価値が上がりやすいという特徴があります。

将来的に円安が続くと予想される場合は、為替の変動による円換算の評価損が出にくいと考えられるため、新たに金投資を始めることも一つの方法です。

金投資は、インフレや経済不安がある際のリスクヘッジとしても有効です。

分散投資という意味でも、ポートフォリオの一部に金を組み入れることを検討しましょう。

円安メリットがある輸出企業に投資する

今後も円安が続くと考えられる場合、円安で大きな利益を得られる企業への投資を検討しましょう。

輸出がメインの企業や、海外事業の比率が高い企業、ドル建て収益が多い企業を選んで投資することで、円安による為替差益を狙えます。

投資信託に投資する場合は、自動車や半導体など、円安メリットを享受できる業種に特化したファンドを選ぶようにしましょう。

海外不動産に投資する

米国や東南アジアなど、海外不動産を保有すれば、現地の賃料収入や物件の売却益が、円安によってより増えることが見込まれます。

ただし、海外不動産は初期投資コストが高いこと、円高に振れた場合の損失が大きくなるとうデメリットもあります。

海外不動産に投資する際は、為替リスクや現地の不動産市場の動向をよく理解し、慎重に検討するようにしましょう。


円安が一時的ならどうする?短期的な為替変動に対応する投資戦略

 円安が一時的で、いずれ円高になる可能性がある場合は、為替変動のリスクを抑えつつ、安定した収益を目指す投資戦略が適しています。ここでは、一時的な円安の際におすすめできる投資法を紹介します。

為替差益を狙った短期トレードをする

一時的な円安局面では、FX(外国為替証拠金取引)などを活用して、短期の為替差益を狙うこともひとつの方法です。

ただし、FXは値動きが大きくリスクも大きいため、損切りルールや資金管理をしっかりと行いながら、慎重に投資するようにしましょう。

為替ヘッジありの外国株投資信託に投資する

将来性がある外国の株式に投資したいけれど、将来円高に振れたときのリスクを抑えたいという場合は、「為替ヘッジあり」の外国株投資信託がおすすめです。

「為替ヘッジあり」であれば、為替の変動による影響を受けないため、将来円高になった場合に資産が減るリスクを抑えられます。

ただし、「為替ヘッジあり」の場合は、円安になった際の為替益も得られません。

円安が進む場合は「為替ヘッジなし」のほうが有利になるため、長期的な為替の見通しをしっかりと考えて選ぶようにしましょう。

高配当の国内株式に投資する

為替の影響をほとんど受けない投資先として、内需型の高配当株が挙げられます。

特に、インフラや通信、医薬品、小売りなど、日本の国内市場で安定した収益を上げている会社は堅実な事業基盤があり、なおかつ高い配当利回りで人気があります。

これらの企業は為替変動の影響も比較的小さいため、円高の懸念があるときでも比較的安心して保有できます。

円高に振れた際のリスクを抑えつつ投資したい場合は、内需型の高配当株も検討するようにしましょう。

NISAやiDeCoで国内インデックス投資をする

円高・円安に左右されずに長期的な資産形成をしたい場合は、NISAやiDeCoを活用した、TOPIX連動型インデックスファンドへの投資がおすすめです。

「TOPIX」は輸出企業に偏らず、幅広い企業で構成されているため、為替変動による個別銘柄のリスクを分散しつつ、市場全体の成長を取り込めます。

また、ナスダックやダウ平均株価に連動するインデックスファンドに投資することで、ドルコスト平均法で為替の変動リスクを抑えつつ、米国市場に投資することが可能です。

NISAは一定額まで運用益が非課税となります。また、iDeCoでは掛金が所得控除対象になるため、税制上のメリットを生かしながら長期的な投資をすると良いでしょう。

今後も円安は続く?為替に影響を与える要素や投資戦略

円安が進んだ場合、その円安は長期的なものなのか、一時的なものかを見通して戦略を立てる必要があります。

円高・円安といった為替の変動に影響を与える要素は、以下のとおりです。

  • 日米の金利差
  • 日本銀行の金融政策
  • 日本の投資マネーの動き
  • 日本円の信頼性

日米の金利差

円安の主な要因のひとつが、日米間の金利差です。

米国はコロナ禍以降に加速したインフレを抑制するため、積極的な利上げを行い、高い水準の金利が維持されてきました。

一方、日本では長期に渡って低金利政策が続けられていたため、日米の金利差は2023年には5%以上に拡大して円安が進み、一時1ドル160円台という水準にまで達しました。

現在の日本は超低金利政策を見直しているため、物価が上昇している等の指標が出れば、それに合わせて利上げが行われる可能性も高まっています。

例えば、米国の金利が据え置かれた状態で日本の金利が上昇した場合は、日米間の金利差が縮まるため、円高になる可能性があります。

このように、日本や米国の金利が上下して、結果的に日米の金利差が縮まった場合は、円高に振れる可能性があることを覚えておきましょう。

日本銀行の金融政策

日本銀行(日銀)が政策金利を低く設定し、海外との金利差が広がると、円安が進みやすくなります。

逆に、日銀が金利を引き上げて海外との金利差が縮まると、円高になる可能性が高まります。

日銀は物価上昇率の目標を2%としています。そのため、物価上昇率が2%を超えるようなデータが発表された場合は、今後の利上げや、それに伴う円高を想定する必要があります。

日銀が重視する物価関連の指標は

  • 全国消費者物価指数(CPI)
  • 生鮮食品を除くCPI(コアCPI)

があります。これらは毎月発表されるため、今後の為替の動きを予想するためにも注目すべきと指標と言えます。

一方で、日銀が政策金利を据え置いていた場合でも、米国や欧州が金利を引き下げた場合は、相対的に金利差が縮まるため、円高になる可能性があります。

米国の政策金利(FF金利)はFRB(連邦準備制度理事会)によって年8回、6週間ごとに決定・発表されます。

FRBが参考にする指標としては、「CPI(消費者物価指数)」や「雇用統計」「賃金上昇率」などがありますので、為替の動きを見通すためにも、米国の指標に注目するようにしましょう。

日本の投資マネーの動き

日本の国内の機関投資家や個人投資家の資金がどこに向かうのかも、為替に影響を及ぼす要素のひとつです。

近年は米国株人気が高まっており、2024年にNISAを通じて海外の投資に向けられた資金は12.7兆円に達しています。

外国株投資信託に投資する際は、まず日本円でドルを買うため、円安ドル高の流れを後押しすることになります。

為替の動きを予測する際は、NISAにおける投資資金の動きも確認するようにしましょう。

地政学リスク

地政学リスクは、戦争や政情不安、国際的な対立が金融市場に与えるリスクのことをいいます。

中でも近年注目されているのが「台湾有事」です。

中国と台湾の緊張関係が高まり、もしも武力衝突などが起きればアジア全体の安全保障リスクが急上昇するため、アジアの一員である日本円も売られて、円安が進行する可能性があります。

以前は地政学リスクが高まると「有事の円買い」が起き、円高になるケースが多くなっていました。

しかし、台湾有事では日本が地理的にも近く、政治的にも巻き込まれる可能性が高いことから、仮に台湾有事が起きた場合は「円売り」が進む可能性が高いと考えられます。

こうした情勢を踏まえると、為替リスクを考慮した分散投資や、有事の備えとして金や外貨建て資産への投資も検討する価値があります。


まとめ

円安局面では、円安によって業績が向上する企業の株式や投資信託をはじめ、外国株投資信託や金、外貨預金などの外貨建て資産への投資が効果的です。

ただし、為替変動リスクや投資商品の特性を理解せずに投資すると、大きな損失につながる可能性があります。

投資リスクを抑えつつ円安メリットを享受するためにも、自分の資産状況や投資スタイルに合った商品を見極めるようにしましょう。


伊藤久実 

伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。
大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。