【初心者向け】指値と成行どっちを選ぶ?
メリット・デメリットや注文方法・使い分け方を解説
投資を始める時、必ず耳にするのが「指値(さしね)注文」と「成行(なりゆき)注文」です。どちらも売買の方法ですが、メリット・デメリットや使い方には大きな違いがあります。
正しい注文方法を知ることで、市場環境に合わせた柔軟な取引が可能になるため、「指値」と「成行」についてきちんと理解しておくことが大切です。
この記事では、初心者でも迷わず取引できるよう、それぞれの特徴やメリット・デメリット、活用方法を詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
・目次
指値注文と成行注文の基礎知識
株式投資をはじめとした「投資」では、「指値注文」と「成行注文」という2つの注文方法があります。
投資する際はそれぞれの注文方法の特徴を理解し、場面によって注文方法を使い分けることが大切です。
指値注文とは?
指値注文とは、投資家が「この価格で売りたい」「この価格になったら買いたい」というように、あらかじめ価格を指定して注文を出す方法のことを言います。
例えば、現在100円の銘柄に対して「98円になったら500株買いたい」と考える場合、「98円:500株:指値買い」で注文を出します。
価格が98円に下がらなければ取引は成立しませんが、98円まで価格が下落してきた(98円で売りたいという人が出てきた)場合、注文が成立します。
指値注文では、注文のタイミングが早い人から順番に約定します。
上記の場合は、「98円:700株:指値買い注文」が先に約定し、その後に自分の500株の注文が約定する流れです。
このように、指値注文には、自分が指定した希望価格で売買できるというメリットがあります。
成行注文とは?
成行注文とは、価格を指定せずに「今すぐ買いたい」「今すぐ売りたい」というときに使う注文方法です。
成行注文は指値注文よりも優先されるため、市場で提示されている最も有利な価格で、すぐに取引が成立することが特徴です。
例えば、以下のような板で「500株:成行買い」の注文を出した場合、101円ですぐに注文が成立します。
また、成行注文では、最も有利な価格から順番に約定するという仕組みがあります。
上記のような板情報において、「1,000株:成行買い」の注文を出した場合は、以下のように有利な価格から順番に約定します。
- 101円 500株
- 102円 300株
- 103円 200株
成行注文はすぐに成立するため、急激な値動きがある局面や、重要なニュースが出た直後などにすぐポジションを取りたいときに適しています。
ただし、思っていたよりも高値で買ってしまうことや、安値で売ってしまうことがあるため注意しましょう。
指値注文と成行注文の違い
指値注文と成行注文では、今まで説明してきたように「約定価格」と「約定スピード」で違いがあります。
項目 |
指値 |
成行 |
約定価格 |
指定した価格で約定する |
市場で提示されている価格による |
約定スピード |
状況によっては約定しないことがある |
すぐに約定する |
指値注文は、希望する価格をあらかじめ指定するため、自分で指定した価格もしくはそれよりも有利な価格でしか約定しません。
一方、成行注文はある程度の予想はできるものの、正確な売買価格は約定後しかわからないという特徴があります。
また、約定スピードが早いのは「成行注文」です。
指値注文は、約定までに時間がかかる可能性がありますが、成行注文は即座に売買が成立するため、スピーディな取引をしたい人に適しています。
このように、指値注文と成行注文では特徴が異なるため、相場の動きや投資スタイルによって使い分けることが大切です。
投資初心者の場合は、まず指値注文でリスクを抑えながら取引に慣れると良いでしょう。
取引に慣れて相場感がついてきたら、成行注文も交えることで状況に合わせた柔軟な取引が可能になります。
指値注文のメリット・デメリット
指値注文のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット |
デメリット |
希望する価格で売買できる |
機会損失のリスクがある |
冷静な投資判断がしやすい |
注文情報を管理する必要がある |
高値掴み・安値売りを防げる |
短期的な値動きに対応しづらい |
指値注文は、あらかじめ指値をいくらにするか自分で考えて注文を出すため、冷静な判断を元にした投資ができるというメリットがあります。
また、希望の価格、もしくはそれより有利な価格でしか約定しないため、高値掴みや安値売りを避けられます。
一方、指値注文は指値価格に到達しないと約定しないため、「買いたいのに買えなかった」「売りたいのに売れなかった」というように、チャンスを逃すことがあります。
また、注文を放置しておくと古い条件のまま注文が残り、忘れた頃に約定してしまうことがあります。
指値注文を出した際は、定期的に古い注文が残っていないかを確認することが大切です。
成行注文のメリット・デメリット
成行注文のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット |
デメリット |
スピーディな取引ができる |
予想外の価格で約定するリスクがある |
相場急変時にもすぐ対応できる |
価格管理が難しい |
必ず取引が成立する |
相場の急変時はリスクが大きくなる |
成行注文は、注文が出された際の最も有利な価格ですぐに約定するため、スピーディな取引ができます。
また、急落時・急騰時に素早くポジションを取れる点も大きなメリットと言えます。
一方、価格を指定しない注文方法のため、予想外の不利な価格で約定してしまうリスクがあります。
特に、市場参加者が少ない銘柄では、高値掴みや安値売りになってしまうことがあるため注意が必要です。
成行注文はスピード重視ですぐ売買したいときに有効ですが、予想外の価格で約定するリスクを避けたい人や、売買価格を管理したいという人には不向きと言えます。
指値注文の出し方と注意点
指値注文の出し方はとてもシンプルですが、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
指値注文の出し方
注文の流れは以下のとおりです。
- 取引画面で「指値注文」を選ぶ
- 購入または売却したい株数と価格を入力
例えば、株価が1,000円の銘柄を950円で500株買いたい場合は、注文画面で「買い」「500株」「指値950円」と入力します。
株価が1,000円の銘柄を1,050円で500株売りたい場合は、「売り」「500株」「指値1,050円」と入力します。
このような指値注文では、自分が設定した価格(もしくはそれより有利な価格)になった場合のみ注文が成立するため、計画的な取引ができます。
指値注文を出す際の注意点
指値注文を出す際の注意点は、以下のとおりです。
- 注文が約定しない可能性があることを理解する
- 注文の有効期限を確認する
- 板の厚みや流動性を確認する
指値注文は、自分が指定した価格に市場価格が到達しない場合は、成立しません。そのため、売買するチャンスを逃してしまう可能性があります。
必ず売買したい場合は、成行注文を選びましょう。
また、多くの証券会社では指値注文の有効期間を「当日限り」「期間指定」などを選択できます。
「期間指定」をしたままだと、忘れた頃にその価格に到達して約定してしまうことがあるため、定期的に指値価格や市場の状況を確認することが大切です。
加えて、出来高の少ない銘柄では指値を出してもなかなか約定しない場合があります。
特に、大きな数量を売買する場合は、板情報を確認してから注文を出す必要があります。注文が少なく流動性が低い銘柄では、指値を細かく調整することをおすすめします。
成行注文の出し方と注意点
成行注文はスピーディに取引できるというメリットがありますが、価格を指定できないため、注文の出し方や注意点をよく理解しておくことが大切です。
成行注文の出し方
成行注文の出し方は以下のとおりです。
- 取引画面で「成行」を選ぶ
- 購入または売却したい株数を入力する
成行注文は価格を指定しないため、注文時には「成行」と「株数」の2項目のみを入力します。
注文後はすぐに約定するため、約定価格を確認するようにしましょう。
成行注文を出す際の注意点
成行注文の注意点は、以下のとおりです。
- 板に出ている注文状況を確認してから注文する
- 出来高が少ない銘柄は注意する
- 取引時間外の注文は即時に約定しない
成行注文では、相場が急騰・急落しているときは、予想外の価格で約定することがあります。
あらかじめ板の情報を見て、どれくらいの価格の注文が出ているかを確認しながら成行注文を出すことが大切です。
また、板に出ている注文が少ない状態で成行注文を出すと、希望に近い価格で約定せず、離れた価格で取引されてしまうことがあります。
例えば、以下のような板の状態で5,000株の成行注文を出した場合、「102円」「103円」「104円」の注文だけでは足りないため、105円以上の価格でも約定することになります。
このように、板が薄い状態(注文が少ない状態)で大きな成り行き注文を出すと、現在の価格から大きく離れた価格でも約定することになるため注意が必要です。
現在の価格から大きく離れた高値掴み・安値売りを避けるためにも、板情報を確認してから注文を出すようにしましょう。
逆指値注文とは?
指値注文・成行注文とは別に「逆指値注文(ぎゃくさしねちゅうもん)」という方法もあります。
これは、信用取引でよく使われている注文方法で、株価や為替がある価格に到達したときに、成行注文が発動する仕組みのことをいいます。
通常の指値注文は「指定した価格で買う・売る」という方法ですが、逆指値注文は「特定の価格に達したら成行注文を出す」という条件付きの注文方法となっています。
例えば、「保有している株が900円まで下がったら損切りしたい」という場合は、「900円を下回ったら売る」という逆指値注文を設定しておきます。
900円になった段階で自動的に注文が実行されるため、市場急落時にも損失を最小限に抑えられるというメリットがあります。
一方で、「1,050円以上になったら買いたい」という逆指値注文を出しておけば、1,050円になったら買い注文が発動します。
株価が上向いてきたタイミングで株を買いたい場合は、このような逆指値注文を活用するのもひとつの方法です。
逆指値注文に関するメリット・デメリットをまとめたものは以下のとおりです。
メリット |
デメリット |
自動的に損切りできる |
相場の一時的な変動で約定してしまうことがある |
相場を監視する必要がない |
設定価格を頻繁に見直す必要がある |
トレンドの転換点を狙った売買ができる |
出来高が少ない銘柄は注意が必要 |
ただし、証券会社によっては逆指値注文ができない場合もあるため、事前に確認するようにしましょう。
指値注文と成行注文に関するQ&A
指値注文と成行注文に関して、よくあるQ&Aを紹介します。
指値注文と成行注文で手数料の違いはありますか?
指値注文と成行注文で手数料が別に設定されているかどうかは、利用する業者によって異なります。
自分が利用する証券会社などのルールを事前に確認するようにしましょう。
初心者は指値注文と成行注文のどちらを選ぶべきですか?
初心者の場合は、まずは指値注文を利用するほうが安心です。
指値注文を使った取引に慣れてきたら、成行注文を組み合わせるようにしましょう。
まとめ
「指値注文」と「成行注文」は最も基本的な注文方法で、売買する価格を指定して注文を出すかどうかという違いがあります。
成行注文は、注文を出すとすぐに約定するため、スピード重視の投資スタイルの人に向いています。
一方、指値注文は、指定した価格に到達しないと約定しないため、落ち着いて取引したい人や、売買価格を重視する投資家に向いています。
どちらもメリット・デメリットがあるため、投資スタイルや相場状況に合わせて指値注文・成行注文を選ぶようにしましょう。
伊藤久実
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。
大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。
