こどもNISAはいつから?
ジュニアNISAとの違いや賢い利用方法を解説
子育て世代にとって、教育費など子供に関するお金をどう準備するのかは大きな問題です。子ども名義でNISA口座を利用できる「ジュニアNISA」というものがありましたが、この制度は2023年で終了しています。しかしこの度政府は、2025年6月に発表した骨太方針でジュニアNISAに代わる、新たな子ども向けNISAの方針を発表しました。それが「こども支援NISA(仮)」です。そこでこの記事では、こども支援NISAとはどのような内容なのか、いつから施行される予定なのかなどを詳しく解説していきます。
・目次
こどもNISAとは何?施行はいつから?
こどもNISAとは、正確には「こども支援NISA(仮)」という名称で、政府の骨太方針に盛り込まれたNISA制度の拡充施策案の一つです。まだ施行されているわけではありませんが、2025年12月に発表された税制改正大綱の内容も踏まえて、現在予想されている大まかな内容についてご紹介していきます。
こども支援NISA創設の背景
こども支援NISAの背景には、深刻化する少子化の問題や、増大する教育費の問題などがあります。子どもの大学進学までの教育費は、幼稚園からすべて公立の場合でも800万円以上、すべて私立の場合なら2,300万円ほどだと言われています。
参考:教育資金はいくら必要?かかる目安額をご紹介|日本政策金融公庫
このような教育費の負担を軽減すべく、政府は「貯蓄から投資へ」という方針を掲げており、家庭での早期資産形成を支援する仕組みとして「こどもNISA」を活用する考えです。
そもそも子ども向けのNISAとしては「ジュニアNISA」がありましたが、2023年末に終了しています。使い勝手が悪く思うように利用者が伸びなかったのが要因ですが、利用者からは残念に思う声が多かったのも事実です。
そのような背景がある中、今回は前回のジュニアNISAの失敗を踏まえ、新たに「こども支援NISA」が導入されようとしています。
なお今回の方針では、子ども向けだけでなく高齢層も含めたあらゆる世代に向けて、長期的な資産形成の支援策が盛り込まれました。高齢層向けの施策としては、「プラチナNISA」の構想が進められています。
プラチナNISAとは?
プラチナNISAは、主に65歳以上の高齢者や退職世代向けに考えられた、資産形成の新しい仕組みです。こどもNISAと同じように、まだ施行はされていません。
現行のNISAは長期保有を目的としているため、元本を取り崩す恐れのある「毎月分配型」の投資信託は投資対象にはなっていません。しかしプラチナNISAでは、この毎月分配型の投資信託が対象となります。
毎月分配型の投資信託は、基本的に運用益が毎月一定額、支払われます。ただし、運用益で賄えない場合は元本を取り崩す可能性もあるので、注意が必要です。
しかし、将来を見据えて資産を形成していく世代とは違い、高齢者世代の場合、年金にプラスして毎月分配金を受け取れるのはメリットと言えるでしょう。資産を育てるだけでなく、「使う」ことに重きを置いている投資信託です。「年金だけでは不安」「資産の上手な取り崩し方法がわからない」という高齢者に向けては、選択肢の一つとなる運用方法ではないでしょうか。
施行は2026年以降
こども支援NISAは現在制度設計の議論が進められており、正式な法案化や施行時期に関してはまだ公的に発表されていません。
ただし2025年12月に発表された2026年度の税制改正大綱によると、現在の開始時期は2027年1月1日からのようです。今後の進行次第で施行時期はずれる可能性もありますが、おおむねこれぐらいの時期に施行されるでしょう。
こどもNISA制度の概要
こどもNISAは、以前あったジュニアNISAと同じように、18歳未満でも非課税で資産運用ができる制度です。制度の詳細はまだ正式決定されているわけではありませんが、現段階で検討されている内容をお伝えしていきます。
新NISAのつみたて投資枠を拡充か
こどもNISAは、現行制度である新NISAの「つみたて投資枠」を18歳未満にも開放する方向で議論が進められています。
<つみたて投資枠とは>
- 購入方法:積み立て
- 年間投資可能額:120万円(10万円/月)
※こどもNISAの場合、年間投資可能額は60万円の予定。 - 保有可能限度額:成長投資枠と合わせて1,800万円
※こどもNISAの場合は、上限が600万円になる予定。 - 投資対象商品:長期の積み立てに適した投資信託
※そのほかこどもNISAの場合、払い出しできるのが12歳以上になる予定。
現行のNISA制度では、口座を開設できるのは18歳以上です。それを、つみたて投資枠に限り、18歳未満でも利用できるようにする方向で議論が進められています。
ただしこどもNISAの場合、親の収入によって投資金額に大きな差ができ、将来的な経済格差につながる恐れがあります。そのため、上限額は600万円(年間上限は60万円)になる予定です。
また、払い出しは12歳以降であれば可能なものの、18歳になるまでは引き出しの理由や子どもの同意が必要になると言われています。最終的な内容については、今後の発表をしっかり確認しましょう。
NISAについてもっと詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。
ジュニアNISAとの違いや改善点
こどもNISAは、未成年でも非課税で資産形成が可能になる制度です。同じような制度として「ジュニアNISA」がありましたが、2023年に廃止されました。このジュニアNISAとこどもNISAの違いは以下の通りです。
|
ジュニアNISA |
こどもNISA(見込み) |
対象年齢 |
0歳~17歳 |
0歳~17歳 |
年間投資上限 |
80万円 |
60万円 |
非課税期間 |
最長5年間 |
制限なし |
払い出し制限 |
原則18歳まで不可 |
12歳(仮) |
※こどもNISAに関しては、あくまでも現在予想されている内容が前提です。今後変更になる可能性もあります。
ジュニアNISAが思うように広まらず、制度が廃止になった大きな理由が「非課税期間」と「払い出し制限」です。非課税期間は最長でも5年間と短く、年間投資額も80万円までと現行NISAに比べ少ない金額です。また、18歳まで払い出しできないため、急に資金が必要になったときに引き出せないというデメリットがありました。
たとえば、高校の授業料にジュニアNISAで積み立てたお金を当てたいと思っても、それは不可能だったということです。また非課税期間が5年と短く、使い勝手が悪いという意見も多く、結果的にあまり利用者が伸びなかったことから、制度は廃止されてしまいました。
それが「こどもNISA」では、進学や教育資金、生活費といった理由と子どもの同意があれば、12歳以降の払い出しが可能になる予定です。また18歳以上の成人に達すると自動的に通常のNISAに統合されるため、非課税期間の制限もありません。
※この時点で、非課税枠も通常の1,800万円に統合される予定です。
このようにジュニアNISAの失敗を参考に、現行のつみたて投資枠が拡充される形になるため、使い勝手はかなり改善されるでしょう。
こどもNISAの概要はまだ確定しているわけではありませんが、2026年度の税制改正大綱が発表されたことにより、大筋はだいたい決まってきたと考えられます。しかし念のため、今後正式に発表される内容もしっかり確認しましょう。
2024年以降のジュニアNISA口座はどうなっている?
ジュニアNISAは2023年末に廃止されているため、新規の取り扱いはできなくなっています。しかし2024年以降もジュニアNISA口座での運用は可能です。
現在のジュニアNISAのポイントは以下の通りです。
- 18歳になるまでor非課税期間(5年間)が終わるまで非課税で運用可能
- 2024年以降は18歳未満でも払い出し可能
- 新NISAには移管不可
現在ジュニアNISA口座を持っている場合は、非課税期間の5年間を超えても18歳になるまでは、「継続管理勘定」として非課税のまま保有できます。また、非課税期間の5年間内に18歳になった場合、5年間が過ぎるまでは18歳を超えていても非課税のまま保有可能です。保有している商品は、ジュニアNISAが終了する際、一般口座もしくは特定口座に払い出しされます。
また2024年以降は、18歳未満であっても口座内の商品の払い出しが非課税でできるようになりました。ただし一部の商品だけを払い出しすることはできず、ジュニアNISAの商品すべてを払い出しし、口座自体を解約しなければなりません。
ジュニアNISA口座を持っていた場合、新NISAの口座は自動的に開設されます。ただしジュニアNISAで保有していた商品が、そのまま新NISAに移管されるわけではないので注意が必要です。新NISAで引き続き保有したい場合は、新たに金融商品を買い入れる必要があります。
こどもNISAを活用するメリット
つみたて投資枠を未成年にも開放する「こどもNISA」には、どのようなメリットがあるのか、わかりやすくご紹介していきます。
教育資金を非課税で準備できる
こどもNISAが新設されれば、親名義のNISAのほかに子ども名義でも非課税で資産形成できるようになります。たとえば大学進学費といった高額な教育資金を、早い段階から非課税で準備することも可能です。
たとえば、児童手当や出産祝い金、誕生日祝い、お年玉といったお金を計画的にこどもNISA口座で積み立てておくことで、教育費という大きな金額の費用を用意できます。
仮に児童手当を0~18歳まで預金していた場合、約230~240万円になります。しかしこれをこどもNISA口座で積み立てた場合、さらに高額になる可能性があります。
<例>月1万円を18年間積み立てた場合
- 年利3% → 約260万円
- 年利5% → 約350万円
- 年利7% → 約450万円
3歳までの手当額は1万5千円なので、その期間は積立額を増やすことも可能でしょう。そうすると、資産はさらに増える可能性があります。児童手当を積み立てておくだけで、大学の資金が賄える可能性もあるのです。
親のNISA口座で準備することももちろんできますが、子ども名義にしておけば仮に教育費に使わなかった場合、そのまま子の資産として利用し続けることが可能です。さらに積み立てを継続した場合、若いうちからまとまった額の資産を保有できる可能性も高くなります。
0歳から長期的に資産形成が可能になる
教育費を貯められるメリットでも触れましたが、0歳からこどもNISAを利用可能ということは、長期間で資産形成ができるということです。
投資である以上、損失が発生することもありますが、たとえば18年以上という長期の運用であれば、そのリスクを限りなく抑えることが可能です。
またつみたて投資の複利効果は、長期間でこそ最大限に力を発揮します。18歳の時点で、ある程度の資産を保有していることは、人生設計を考えるうえで大きなメリットになることでしょう。
子どもの金融教育に活用できる
こどもNISAは、金融教育にも活用できると期待されています。たとえば、「毎月1万円を何に投資するか?」「その結果、資産がどのように変化したか?」を親子で話すだけでも、「お金」や「投資」「社会の仕組み」などを考えるきっかけになるでしょう。
お金に関する知識や判断力のことを「金融リテラシー」と呼びますが、この金融リテラシーを身に付けることは、今後さらに重要です。こどもNISAを始めることは、学校教育では身に付けにくい金融リテラシーを学ぶ良いきっかけになります。親子でお金について考える機会にしてみてはいかがでしょうか。
こどもNISAの注意点
こどもNISAは今後の期待ができる商品ですが、覚えておきたい注意点も存在します。
制度の詳細は未定
「こども支援NISA(仮)」の制度の詳細は、まだ正式に発表されていません。2026年度の税制改正大綱が発表されたことにより大筋はわかってきましたが、今後の動向によっては変更になる可能性はゼロではありません。
実際に、保有限度額が600万円(年間60万円まで)になるといった内容は、あとから追加された内容です。
ご紹介した内容から大幅に変更される可能性は少ないと思われますが、正式にどのような制度になるか、最終的にしっかり確認しましょう。
元本割れのリスクがある
投資である以上、元本割れのリスクはあります。そもそもNISAは長期間投資を前提としており、元本割れのリスクをできるだけ下げられるよう設計されていますが、投資期間が短ければ、リスクは高くなってしまいます。
こどもNISAを教育費の積み立てとして利用しようとする場合、利用開始の年齢によっては、投資期間が十分でないことも考えられます。
結果的に投資期間が短くなり、元本割れしてしまうリスクもあるので、注意が必要です。
積立期間が短い場合は預金の方がよいことも
上記でもご説明した通り、投資期間が短い場合はリスクが高くなります。そのため、投資期間をあまり長くとれない場合は、ローリスク・ローリターンの商品を選ぶことも考えてみてください。
身近なローリスク・ローリターンの金融商品は、やはり預金です。すぐに使う予定があるお金は、預金で着実に貯めるほうが有利な場合もあります。
こどもNISAを利用する場合は、「どんな目的」で「いつ使うか」を考え、できるだけリスクを下げて運用できるように意識してみてください。
こどもNISAに関するQ&A
そのほか、こどもNISAに関して気になるQ&Aをまとめてみました。
ジュニアNISAから乗り換えた方がいい?
ジュニアNISAの口座をすでに持っている人は、乗り換えるべきかどうか悩むこともあるかもしれません。
ジュニアNISAの新規受け付けはすでに終了していますが、保持し続けるメリットもあります。
ジュニアNISAは18歳になるまで、もしくは5年の非課税期間を終了するまではそのまま保持が可能です。つまり、非課税枠をそのまま保持しつつ、新たに始まるこどもNISAでさらに非課税枠を利用することができます。十分な資金がある場合は、非課税枠を最大に利用できるよう、ジュニアNISAを保持していてもよいかもしれません。
そうでない場合は、ジュニアNISAを解約し、新たにこどもNISAで積み立てを始めるのもよいでしょう。こどもNISAはジュニアNISAのように非課税期間が「5年」という短い期間にはならないと予想されているので、より長期での投資が可能です。
贈与税はかかる?
こどもNISAの資金は、親や祖父母が出資することが多いでしょう。そうすると、気になるのが贈与税です。
贈与税は、通常年間110万円までなら発生しません。こどもNISAの場合、年間の積み立て上限が60万円になる予定なので、贈与税の年間非課税内に収まる予定です。
しかし「定期贈与と判断されてしまうと、贈与税が発生するのでは?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。この疑問に対して明確な回答はないようですが、ジュニアNISAのときの状況を踏まえると、110万円の枠を超えなければ問題ないように思われます。
<補足:定期贈与とは?>
あらかじめ決めた金額を定期的に特定の人に贈与することです。たとえば600万円を10年間に渡って贈与した場合、年間60万円ずつ贈与したのではなく、総額600万円を贈与したとみなされ、贈与税が発生する場合があります。
また、たとえば大学の費用を親が支払っても贈与として課税されないように、教育費や生活費など、子どもを扶養するのに通常必要な費用に対して税金は発生しません。この点を踏まえても、こどもNISAを利用しても110万円の枠を越えなければ課税されるリスクは少ないのではないでしょうか。
万全を期すのであれば、将来の教育費や生活費のための費用であること等を明確にした書面を用意する、税理士にあらかじめ相談するといった対策を検討してみてください。
今のうちに準備しておくべきことは?
こども支援NISAをぜひ利用したいと考えるのであれば、まずはNISAについて理解を深めておくとよいでしょう。
まだNISA口座を持っていない場合は、親名義の口座を開くことをおすすめします。実際に利用してみることで、NISAの理解が進み、また投資運用のイメージもつかめるでしょう。いざ「こども支援NISA」が始まったとき、より円滑に利用できるはずです。
さらに、できればこども支援NISAに投資できる「余剰資金」を準備しておくとよいでしょう。この機会に、資産運用全体について考えてみるのもおすすめです。
まとめ
こども支援NISAは、2026年以降に施行が予定されている新しいNISA制度です。現在のつみたてNISAの年齢を引き下げ、0歳から利用が可能になると言われています。
現在のつみたてNISAに準じた内容になると予想されていますが、上限は600万円まで・引き出しは12歳以上という制限が付く可能性が高いです。それでも、18歳まで引き出しが不可だったジュニアNISAよりも使い勝手は良くなると考えられます。
子どもの名義でNISA口座を開設することで、早いうちから資産形成が可能になり、教育費や子育て費を準備するのに有効な手段となるでしょう。また子供の金融リテラシーを育てることにも役立ちます。
ファイナンシャルプランナーなどお金のプロの間では、「こどもNISAは、少額でもいいからなるべく早くから積み立てることが最大のメリット」と言われています。ただし、子どもの年齢や必要になる教育費の時期なども考慮し、預金や学資保険などとのバランスも考慮して利用するのがおすすめです。
また、まだ制度の詳細が確定されていないため、今後の情報もぜひチェックしてみてください。こどもNISAが施行されるまでの間は、余剰資金を集めておくなど準備を整えておくとよいでしょう。
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2026年1月16日(金)~18日(日)10:00 - 18:00(最終日のみ17:00終了) |
