IR情報とは?企業の目的・種類・活用法を投資家目線で解説
投資を行っていると、企業の「IR情報」を目にすることもあるでしょう。このIR情報とはどのようなものなのか、よくわからないという人も少なくないかもしれません。しかし株式取引を行うのであれば、IR情報の見方は覚えておいた方がよいでしょう。そこでこの記事では、IR情報の目的や種類、見方、投資家が知っておきたいチェックポイントなどをご紹介していきます。
・目次
IR情報とは|Investor Relations(投資家向け広報)の基本
IRとは、「Investor Relations(インベスター リレーションズ)」の略で、企業が投資家に発信する情報のことです。企業が業績や財務状況、安定性、今後の方向性など、投資を考える上で重要な、さまざまな情報を提供する活動全般を指しています。「投資家向け広報」と呼ばれることもあります。
PR(広報)との違い
PR(広報)も企業が情報を発信する活動ですが、IRとは対象者や目的が異なります。
|
IR |
PR |
対象者 |
投資家や株主など |
消費者、メディア、従業員、地域住民など |
目的 |
投資判断材料の提供、資金調達、企業価値の向上など |
企業や製品の認知度向上、企業イメージの向上など |
情報の中身 |
財務状況や業績、経営戦略など |
事業活動や製品情報、社会貢献など |
活動内容 |
ホームページ上の情報開示、決算説明会など |
プレスリリース、イベント開催、SNSなど |
PRは「Public Relations(パブリック リレーションズ)」の略なので、対象者は「Public」つまり、一般消費者や地域住民、メディアなどです。企業や製品の認知度向上やイメージアップのために、情報を発信します。一般向けの情報のため、プレスリリースやイベント、SNSなどを通じて発表します。ニュースやSNSなどで、皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。
一方でIRは、投資家向けの情報です。投資を促して資金調達するのが大きな目的のため、業績や財務状況、経営戦略などを開示し、投資家や株主との関係構築を目指しています。
簡単に言うと、PRはより一般向け、IRは投資家向けの情報だということです。
IR情報の主な種類
IR情報には、大きく分けて2つのタイプがあります。金融商品取引法や会社法など法律で開示しなければならないと義務付けられている「法的開示資料」と、企業が自主的に発表している「任意開示資料」です。
<法的開示資料> |
<任意開示資料> |
法律で提出が義務付けられている。 |
企業が自主的に発信している。 |
・有価証券報告書 ・四半期報告書 ・臨時報告書(適時開示資料) ・内部者取引報告書 (役員や主要株主の株取引を報告) |
・決算短信 ・決算説明資料 ・中期経営計画 ・株主通信(事業報告書) ・統合報告書 ・プレスリリース (新製品や業務提携などの発表) など |
それぞれの資料について、どのような内容なのかご紹介していきます。まずは法的開示資料からです。
有価証券報告書
企業の全体像がわかるような、最も基本的な報告書です。売上や利益といった財務情報はもちろん、事業内容や経営方針、事業に関するリスク要因、大株主の情報、役員の状況など、多岐に渡る情報を確認できます。
年に1度、事業年度の終わりに発表されており、金融庁のEDINET(開示資料を閲覧するサイト)で誰でも閲覧可能です。内容が法的にチェックされているため、信頼性が高く、投資判断のベースになる資料と言えるでしょう。
全ての情報をチェックするのが難しい場合、特に以下のポイントを確認してみてください。
- 経営方針や、経営者による経営成績の分析
- 事業におけるリスク
- 財務状況(賃借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)
- コーポレート・ガバナンス(企業の経営を監視・監督する仕組み)
四半期報告書
四半期報告書とは、3カ月ごとに最新の業績を報告する資料です。有価証券報告書の簡易版のようなもので、企業の基本情報や事業概要、財務状況(利益等)、事業の実績(売上高等)のほか、市場の情勢や将来の戦略などを確認できます。
企業の経営状況は1年の間でも変化があるため、3カ月ごとの業績を確認することで、企業の状況をより細かく把握できます。業績が上昇傾向なのか、それとも注意が必要な状況なのか、詳しく知りたい場合はチェックしてみてはいかがでしょうか。
臨時報告書
臨時報告書とは、投資判断に大きな影響を及ぼすような重要な企業情報が発生したときに発表される報告書です。適時開示資料とも呼ばれ、証券取引所のルールに基づき、直ちに公表されます。
たとえば以下のような事態が発生した場合に開示されます。
- M&A
- 新株発行
- 代表取締役の異動
- 大規模災害や不祥事など
ポイントは、「経営や財務に大きな影響を与える重大な事案である」ということです。不定期に公表される報告書ですが、経営の変化をいち早く把握できるため、できるだけ逃さずに確認しましょう。
続いて、任意開示の資料についてもご紹介していきます。
決算短信
決算短信は企業の業績の速報をまとめた資料で、通常は四半期ごとに公表されます。売上や営業利益などの基本的な財務情報や経営状況などを確認できます。
財務状況や経営状況などの概要を把握でき、最も速報性が高いため、株価にも大きな影響を与えます。
見るべきポイントは以下の通りです。
- 経営成績等のサマリー(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、前年同期比など)
- 業績予想
- 財政状態(企業の資産、負債、純資産など)
決算説明資料
決算説明資料とは、四半期や通期の決算発表時に使用される資料です。決算の内容を図やグラフでわかりやすく解説しています。事業ごとの状況や今後の方針も理解できます。
有価証券報告書や決算短信などの資料よりもわかりやすいため、初心者の人はまずこの資料を確認するとよいかもしれません。経営者の発言やメッセージが含まれていることも多いため、企業の雰囲気を掴みやすいでしょう。
中期経営計画
中期経営計画とは、企業が3~5年程の中期で掲げる売上目標、利益目標、ROEなどの数値目標や成長戦略を示した資料です。多くの企業が投資家へのアピールとして、中期経営計画を公表しています。
投資家にとっては、企業がどのようなビジョンや戦略で業績を上げていくかをチェックできる重要な資料です。
掲げている数値目標だけでなく、どのような戦略でその目標を達成しようとしているのか、具体的な根拠を元に示されているかもしっかり確認してみてください。
株主通信(事業報告書)
主に個人株主向けに、事業の概況や業績、将来の展望などをまとめた資料です。有価証券報告書などは資料も膨大で、投資初心者が理解するのは難しい部分も少なくありませんが、株主通信は図やグラフなどを用いてわかりやすく作られています。
専門知識がなくても、業績や事業内容、企業からのメッセージを理解しやすいため、投資初心者にもおすすめです。株主総会の案内や配当情報なども掲載されているため、株主としての理解を深めるきっかけにもなります。
統合報告書
財務情報だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)やサステナビリティへの取り組みなど「お金以外の情報」を統合し、企業の長期的なビジョンを提示する資料です。経営理念や社会貢献、人材戦略なども掲載されているため、企業の雰囲気を掴むのにも適しています。
長期的な投資を考えるなら、特にチェックしておきたい資料です。有価証券報告書と近い時期に公表されます。
プレスリリース(新製品や業務提携などの発表)
プレスリリースは投資家だけでなく社会全般に向けたもので、新製品や新サービスの発表や、業務提携などの情報がニュース形式で発表されます。
企業の最新の動きともいえる内容ですが、重要度はまちまちです。たとえば、企業の業績に大きく関わるような業務提携の場合は、臨時報告書として公表されるかもしれませんが、コラボ商品の発表など比較的ライトな内容であれば、プレスリリースとして発表されるかもしれません。
投資家目線としては、企業の動向を手軽に確認する手段として、チェックしてみてはいかがでしょうか。
IRの目的は?情報開示の理由や役割
IR情報は投資家に向けた情報提供ですが、公開することは企業にとってどのような意味を持つのでしょうか。IRの目的や役割についても理解しておきましょう。
投資家への透明性ある情報提供と信頼構築
大きな理由の一つは、投資家と円満な信頼関係を築くためです。株主や投資家は自分の資金を投資することになるため、できるだけリスクを最小限に抑えたいと考えます。それには、正確な情報が必要です。
そこで企業が経営状況や財務情報、リスク要因なども含めた透明性のある情報を提供することで、投資家が適切な判断をでき、信頼性を高められます。
資金調達や株価の安定化を図る
IR情報は自社の信頼性を高めるだけでなく、投資家へのPRにもつながります。自社の戦略や利点をアピールすることで、新たな投資を促すこともIRの目的です。
また、正確な情報は株価を安定させるのにも役立ちます。株価はさまざまな要因で変動し、ときに投資家の憶測などで大きく動くこともあります。市場から適正な評価を得られなければ、株価が下がる恐れがありますし、過剰な期待が急激な値上がりやその後の暴落を招くリスクもあるかもしれません。
企業が正確な情報をしっかり開示することで、憶測に基づく株価の変動を抑えやすくなります。情報開示は、資金調達だけでなく株価の安定にも重要だということです。
法令に基づく開示義務への対応
上場企業には、法律に基づき開示が義務付けられている資料があります。IR情報の開示は、法令遵守の概念からも非常に重要です。
IR情報を適切に公開していれば、開示義務にも問題なく対応できます。上場廃止といった罰則や行政処分のリスクも下げられるでしょう。
企業価値やブランドイメージの向上
IR情報には「CSR(企業の社会的責任)活動」や「ESG(環境・社会・ガバナンス)情報」など、非財務情報なども含まれます。このような情報を積極的に開示することで、社会的な信頼を高める効果を期待できるでしょう。
透明性のある資料を積極的に開示することは、投資家のみならず社会全般からの信頼を得ることにつながります。そうして企業価値やブランドイメージが向上することで、消費者にも良いイメージが伝わり、利益の向上も期待できるというわけです。
経営へのフィードバックとして活用
IR情報を開示すると、自社の経営方針や戦略などが市場によって判断されることになります。市場から好意的に捉えられれば、株価の上昇といった好反応を期待でき、そうでなければマイナスの反応があるかもしれません。こうした市場からの反応は、客観的な評価だと言えるでしょう。
そのほか、IR活動を通して投資家から直接意見や質問を受ける機会もあります。企業側にとっては、投資家や消費者からの意見は貴重な情報です。有能な経営者ほど、重要な意見を踏まえて戦略を考えるでしょう。
このようにIR活動は単に一方的に情報提供をする場ではなく、市場から経営へのフィードバックを得られる機会にもなります。
インサイダー取引の防止
IR活動は、インサイダー取引の防止にも役立ちます。インサイダー取引とは、上場企業の関係者が未公開の重要な情報を利用して、不当な利益を得ることです。
たとえば、株価が上昇しそうな情報を公開する前に株式を購入するなどの行為を指します。このようなインサイダー取引は法律でも禁じられています。
インサイダー取引を防止するには、できるだけ迅速にかつ公平に情報を開示することが有効です。そのため、IR情報を積極的に公開することは、このようなリスクを抑えることにもつながります。
IR情報はどんなときに役立つ
続いて、IR情報は投資家や消費者にとってどのようなメリットがあるのか、どのようなときに活用するのがおすすめなのかをご紹介していきます。
投資判断・企業分析の基礎資料として活用
まずはもちろん、投資の判断をするときにIR情報を確認しましょう。投資判断とは、「購入」か「保持」か「売却」などの行動のことです。
そのためには、IR情報から業績や財務状況、収益性などを確認し、企業の成長性や収益性、安全性などを総合的に判断しなければなりません。なんとなく市場の雰囲気に惑わされるのではなく、企業が発表した正確なデータに基づいた判断をすることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。最速で企業の最新情報を手に入れられることも大きいでしょう。
また、現在の状況だけでなく企業の将来性を予測することにも役立ちます。長期的な保有をすべきか否かを判断する、重要な情報が多く揃っています。応援したいと思える企業かどうかを見極めることもできそうです。
そのほか、投資活動をする上でチェックしたいポイントは後で詳しくご紹介していきます。
就活・転職時の企業研究にも応用可能
IR情報は、就職活動にも役立ちます。新卒で入社するときだけでなく、転職する際の企業研究にも利用できるということです。
株主への情報がどうして転職活動に利用できるのか、疑問に思う人もいるかもしれません。しかしIR情報には、経営状況や財務情報など企業の一次情報があふれており、業績や今後の将来性などを予測することができるため、企業研究にもとても向いています。
また、株主に向けた丁寧な非財務情報をチェックすることで、社長の人となりや企業風土などを掴みやすくなります。自分に合う雰囲気なのか、企業が目指すべき未来の姿に賛同できるのかといった点も確認することが可能です。
転職を考えているなら、IR情報で企業の姿をチェックしてみてはいかがでしょうか。
投資家がチェックするべきポイントは?
IR情報は膨大なので、すべてをチェックすることは難しいかもしれません。そこで、投資家が特にチェックしておきたいポイントについてまとめておきます。
経営方針や経営者の発信
特に初心者におすすめなのが、決算説明資料や株主通信に記載されている内容を確認することです。特に経営者のメッセージなど、ここでしか触れられていない内容もあるので、確認しておきましょう。
企業の経営方針やビジネスモデルを知ることは、投資をする価値がある企業なのかどうかを判断する材料になります。特に経営者の資質を確認しておくことは重要です。業績悪化の際に適切な対応を取れるか、トラブルがあっても真摯に対応するのかなど、業績がトップの力量に左右されることも少なくありません。
数値的な情報を確認することも重要ですが、このような非財務情報から将来の予測ができることもあります。将来性がありそうな企業に投資をすることは重要なので、必ず確認しておきましょう。
特に戦略については、決算説明資料でわかりやすく説明をされているほか、中期経営計画や統合報告書などからも確認できます。
業績動向(売上高・営業利益・純利益など)
企業の業績を確認することも大切です。たとえば、売上高や営業利益、純利益など基本的な内容は抑えておきましょう。
確認するときは、必ず「推移」で見てください。現在の業績だけで好調が不調かを判断することは難しいです。業績の推移をみることで、安定性や将来性などを把握できます。
有価証券報告書や決算短信などでも確認できますが、難しいと感じる場合は決算説明資料や株主通信でわかりやすくまとめられているので、まずはそちらで確認してみてはいかがでしょうか。
財務状況(自己資本比率・流動比率・ROEなど)
たとえ業績が好調でも、企業の基盤である財務状況に問題があれば、少し業績が悪化すれば倒産してしまうリスクもあります。成長力だけでなく、企業の「体力」ともいえる財務状況も確認しておきたいポイントです。
・自己資本比率 → 自己資本 ÷ 総資本 × 100
企業の安全性を図る指標です。比率が高いほど自己資本が高く借入への依存が低いと判断できるため、安定している企業だと言えます。一般的に、40%以上あれば健全だと言われており、10%を下回る場合は注意が必要です。
・流動比率 → 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
1年以内に現金化が可能な資産(流動資産)が、1年以内に返済すべき負債(流動負債)を上回っているかを示す指標です。一般的に150~200%あれば、短期的な支払い能力に問題がないと判断されます。
・ROE(自己資本利益率) → 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
株主が出資したお金(自己資本)を使って、どれだけ効率的に利益を上げたかを示す指標です。一般的におおよそ10%以上あれば優良企業と判断されますが、業種や企業規模によっても異なります。
そのほか、投資家が注目したい指標として「PER」や「PBR」などがあります。詳しく知りたい場合は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
PER・PBR・ROEの違いとは? 投資初心者でもわかる企業評価の基本指標
業績動向や財務指標は、IR情報としてわかりやすく掲載されていることが多いですが、賃借対照表や損益計算書、キャッシュフローなどからでも確認できます。このような資料も読み解けると、より理解が深まるでしょう。
業績変動の要因(好調・不調の要因)
業績を確認して大きな変動があった場合、その要因についてもぜひ確認してみてください。決算短信や決算説明資料などでは、業績が好調もしくは不調になった要因について触れられていることが多いです。
たとえば、不調の要因がすでに解消されているのか、それとも今後まだしばらく続く予想なのかといった情報を知っているかどうかで、リスク回避につながるかもしれません。反対に業績が好調な要因がしばらく続くと考えられれば、新規買い付けや追加投資などの判断もしやすくなるでしょう。
今後の戦略や将来性
企業の戦略はもちろん、業界を含めた将来性についても確認しておきましょう。特に企業の成長戦略は、投資を行ううえで大きな判断材料の一つです。決算説明資料や中期経営計画書などで説明された戦略には、具体的な裏付けがあるかといった点も確認してみてください。
実現可能な目標を掲げているか、どのようなプランで進めていくのかなど、具体的に計画されているかしっかり確認しておきましょう。精神論で「頑張る」だけだったり、目指すだけだったりする計画では、本当に達成されるか疑問が残ります。将来性を期待できない企業や業界に投資をするのはリスクになるため、必ず確認が必要です。
特に注目すべき重要書類について
投資家が特にチェックしたいポイントについてはわかったものの、どの資料を見たらよいのかわからないという人もいるのではないでしょうか。悩んだときは以下の資料を確認してみてください。
資料の種類 |
特徴 |
公開される時期 |
決算説明資料 |
・わかりやすい |
決算発表後 |
株主通信 |
・わかりやすい |
企業による |
決算短信 |
・速報性が高い |
企業の決算発表日 |
有価証券報告書 |
・詳細な情報を確認できる |
事業年度終了後3カ月以内 |
中期経営計画 |
・企業の中期ビジョンや目標がわかる |
一般的に既存の計画期間が終了する際 |
IR情報を確認する方法
IR情報を入手するにはいくつか方法があります。それぞれの特徴や確認できる情報などをご紹介していきます。
企業の公式サイト
基本的に、IR情報は企業の公式サイトで確認できます。「IR情報」や「株主・投資家情報」といったページで公開されており、オンライン上で気軽にアクセス可能です。
有価証券報告書、決算短信、決算説明資料、中期計画、株主通信など、ほぼすべての重要なIR情報を確認できます。企業が発信している一次情報のため、信頼性も高いです。過去の情報がアーカイブされていることも多く、時系列で情報を確認することもできます。
プレスリリースやよくある質問(FAQ)、視覚的にわかりやすい資料など企業独自の情報も多く公開されているため、IR情報を確認したい場合は、まずは公式サイトをチェックしてみるとよいでしょう。
証券会社のサイト
証券会社のWebサイトにも、IR情報が掲載されています。株式の個別銘柄の情報ページから、その企業のIR情報を確認できることが多いです。
分析ツールによっては、IR情報と株価を連動して確認することもできます。ROEやPER、PBRなどの財務指標で企業を絞り込む「スクリーニング機能」も便利です。アナリストによる分析レポートなどを見られるのもメリットでしょう。
多くの場合、証券会社の口座を開設すると無料で利用できます。複数の企業を比較したい場合は特におすすめです。
金融庁「EDINET」
EDINET(エディネット)とは、金融庁が運営する「金融商品取引法に基づく開示書類の電子開示システム」のことです。金融商品取引法で提出が義務付けられている書類(有価証券報告書や四半期報告書など)を確認できます。
すべての上場企業の報告書や過去の報告書も確認可能なので、複数の企業を確認したいときや、過去のデータを知りたい場合は特に便利です。簡素化されたまとめられた情報ではなく、企業の細かいデータを知りたい場合に利用するとよいでしょう。
公的なシステムで、公認会計士や監査法人の監査を受けた書類なので、信頼性も高いです。ただしやや専門的なWebサイトなので、初心者には少しハードルが高いかもしれません。
TDnet(適時開示情報閲覧サービス)
TDnet(ティディーネット)は、東京証券取引所が運営する「適時開示情報伝達システム」のことです。企業の業績に大きな影響を及ぼす可能性がある臨時報告書(適時開示資料)や決算短信などを確認できます。
速報性が高く、すべての投資家が同時に重要な情報を入手可能です。インサイダー取引防止にも大きな役割を担っています。
最新の企業情報を入手したいなら、まずはTDnetを確認してみるとよいかもしれません。ただしTDnetで公開されている情報は速報性が重視されているため、詳細な情報を知りたい場合はそのほかの情報も併せて確認しましょう。
企業説明会や決算説明会
企業説明会や決算説明会などの対面式IR活動でも、情報を入手できます。決算後に行われる説明会のほか、「スモールミーティング」と呼ばれる少人数のアナリスト向けに行われる説明会もあります。
対面式のメリットは、直接企業の担当者に話を聞くことができることです。企業からの話が中心ではありますが、質問をすることもできます。
また、複数の企業が集まる説明会もあります。投資家向けに開催される株式投資フェスのようなイベントでもIR情報を入手できることがあるので、参加してみるとよいかもしれません。
※株式投資フェスに興味がある人はぜひこちらもチェックしてみてください。
→ 株フェス -IR・株式投資フェス-
株主総会
株主を対象とした株主総会でも、当然IR情報が公開されます。企業からの説明があるだけでなく、株主側からの意見や質問も活発です。
一方通行ではなく、双方向でのコミュニケーションを取ることができます。企業側の対応を見ることで、信頼できる企業かどうかを判断する材料にもなるでしょう。株主通信に加えて、株主総会に参加することで、より理解が深まります。
施設見学
工場や店舗見学などの施設見学も、IR活動の一環に含まれます。実際に商品やサービスを提供する現場を見ることで、安全性や信頼性、品質などを確認できます。投資をする価値があるかどうか、実際に見て判断したいという人には特におすすめです。
通常の一般客向けにある工場見学ではなく、株主向けに開催されることもあります。詳細は公式サイトで案内されていることが多いので、気になる場合はぜひチェックしてみてください。
IR情報を見るときの注意点
最後に、IR情報をチェックするうえで、特に意識しておきたいポイントについてご紹介していきます。
成長ストーリーや経営者の言葉もチェックする
IR情報を確認すると、どうしても財務情報といった数値に目が向きがちかもしれません。それも確かに大事なポイントではありますが、「どのように企業を成長させていくか」といった成長ストーリーはとても重要な要素です。企業の長期的な成長に、具体的な施策があるのか、その施策は持続可能なものなのかなどもしっかりチェックしましょう。
また、企業を導く経営者の手腕も当然重要な要素です。経営者が企業の状況を正確に把握しているか、ビジョンだけでなくリスクも理解しているか、責任感があるかなど、言葉から伝わるメッセージにも注目してみてください。
そのほか、今ではESG(環境・社会・ガバナンス)の側面も長期的な成長に大きな影響を及ぼすと言われています。たとえ現在利益を上げていても、労働者の環境が悪かったり環境規制に適応できていなかったりする企業はリスクが大きいです。
このように、IR情報を確認するときは財務情報だけでなく非財務情報にも注目しましょう。
複数の資料や同業他社の情報と比較する
企業分析を行う場合、何か一つの情報源だけでなく複数の資料を確認するとより正確な理解につながります。たとえば、ある年の業績が良かったからといって、その翌年も順調とは限りません。業績が上がった理由が偶発的なものであれば、その状態が継続される保証はないからです。財務情報だけではわからないことも少なくないため、必ず複数の資料を確認して、状況を理解しましょう。
<比較の仕方>
- 財務情報と非財務情報を確認する
- 過去データからの推移をみる
- 第三者のアナリストの分析をチェックする
- 同業他社のデータと比較する
業績動向を掴むには、過去データからの推移や同業他社の数値を確認することも大切です。
業績が好調なのか不調なのかは、過去のデータと見比べなければわかりません。少なくとも3~5年程度の業績や財務状況などを見比べ、上昇傾向なのか下降傾向なのかを判断する必要があります。前年同月比との比較なども重要です。
また、ライバル企業のデータとも比較してみましょう。たとえば利益率に一見問題がないように見えても、業界内で比較すると低めの数値であれば、将来的に不安があるかもしれません。業界内でのポジションや強みなども、他社と比較するとわかりやすいです。
専門用語を理解する
IR資料には、普段あまり耳にしない会計や金融の専門用語も多く出てきます。特に初心者は、専門用語がわからず苦労することもあるでしょう。一度にすべてを理解することは難しいかもしれませんが、少しずつでも覚えてみてください。
特に、財務情報の基本項目(売上高、営業利益、資産、負債、自己資本など)や、代表的な財務指標(ROE、PER、PBRなど)の意味はしっかり押さえておきましょう。そのほか、わからない用語が出てきた場合は、その都度調べることをおすすめします。
最初は苦労するかもしれませんが、専門用語を理解しているかどうかで、理解が深まります。
まとめ
IR情報とは、企業が投資家や株主に向けて発信する情報です。投資家との関係性を築いたり、投資を促したりする目的で公開されるもので、投資家にとっても重要な情報と言えます。
IR情報には、業績や財務状況だけでなく、経営者の考えやESG活動などの非財務情報も含まれます。企業分析を行う上で、財務情報はとても重要ですが、将来性などを考えるときに非財務情報も重要な要素です。どちらもバランスよくチェックしましょう。
IR情報は企業の公式サイトやEDINET、TDnetなどで確認できます。過去のデータや同業他社のデータなどと比較しながら企業について理解を深め、投資活動に活かしてみてください。
